
音をテーマとした展覧会を企画するにあたって、ヒューヒューという隙間風のような音を使いたいという思いからまずタイトルを考えました。英語の「Hew Hue」は音からの連想で割り当てた言葉です。「hew」は「切り出す」、「hue」は「色」「見え方、印象」のことを意味しています。直訳すると「切り出す/色・印象」というような意味になりますが、これを解釈しなおせば、「ある文脈から、色や印象だけを切り出す、切り離す」と読み替えることもできると考えています。
この展覧会を構成する4人の作品は、それぞれ取り扱っている素材は異なりますが、作品を鑑賞するとき、ある状況の印象だけが置き去りにされた感覚があると同時に、「作品」と「鑑賞者」の間に、まるで風が通り抜けるようなある種の間が重要な要素であるように思われます。4人の作品がささやかに関係するように並ぶことで、まるで風の通り抜ける音が聞こえるような鑑賞体験の場となれば幸いです。 (谷内春子)

谷内春子 TANIUCHI Haruko
1986年京都市生まれ。2015年京都市立芸術大学大学院博士(後期)課程修了(美術博士)。京都市立芸術大学専任講師。近年の個展「Möbius loop」(+1art/大阪 2021)、 「Longing for a prism」(ギャラリー恵風/京都 2022)、 「四角形の空想」(ギャラリー恵風/京都 2024)。岩絵具といった伝統的な画材の色彩や材質感と、平面上にもたらされる形象の配置がもたらすイマジネーションをいかに扱い得るのかを作品制作を通じて探究している。

武田紗也加 TAKEDA Sayaka
1995年大阪府生まれ。2021年 京都市立芸術大学 大学院 美術研究科 絵画専攻(油画)修士課程修了。近年の主な展覧会に「広がりの灯し」(KOBE STUDIO Y3)、「発掘 draw a line / beyond the line」(個展、アートスペース氵 、2023)、「古い夢、壁には輝く蝶」(スタジオニューホープ、2023)、「かべ / 線」(個展、ギャラリー16、2021)など。絵画の構築される過程を解体し、それを表現するための画材として用いることで作品を制作している。

川口洋子 KAWAGUCHI Yoko
1990年 大阪生まれ。2013年 京都嵯峨芸術大学 附属芸術文化研究所 研究科修了。近年の展覧会に、「小さくて大きい 一つずつ」茨木市市民総合センターほか(個展2023、大阪)、「広がりの灯し」KOBE STUDIO Y3(2024、神戸)など。続く生活の中で、不意に心を動かされカメラを向ける時、それは隙間風に気づきそれを感じることに似ていると思いました。その風は、自分のいる場所を知らせてくれる大切なもののように感じます。その風に、出来るだけ素直にいられたらと願っています。

橋本きおな HASHIMOTO Kiona
1999年 愛知県名古屋市生まれ。2024年 京都市立芸術大学 陶磁器領域 修士課程 修了。現在 愛知県在住。岐阜県多治見市にあるシェアアトリエにて作陶中。
有機的な器物の形態と焼き物のもつ絵画的性質を用いて、感覚やイメージという曖昧なものを感じられるような表現を模索しています。 釉薬の現象や手びねりでできる土のゆらぎを見ると、普段気に留めていなかった感覚や昔の記憶、ふと浮かぶ想像上の風景が引き起こされます。その取り留めのない情景には鑑賞者の感覚や記憶を呼び起こす余地があると考え、再度焼き物で絵を描くように置き換えています。
ヒュー・ヒュー Hew・Hue
谷内春子、武田紗也加、川口洋子、橋本きおな会期:2025年3月26日(水)〜4月12日(土)
会場:+1art
時間:12:00~19:00(最終日は~17:00)
休廊:日〜火曜
アーティスト・トーク
日時:4月12日(土)16:00〜同時期開催
北村侑紀佳「見えない を見るために」
会期:3月19日(水)~29日(土)
会場:+2 (+1artから徒歩5分)
時間:13:00~19:00
休廊:日〜火曜
大阪市中央区谷町6-4-40