
南堀江のTEZUKAYAMA GALLERYにて、2025年7月12日(土)より、展覧会「Intervals: Extraction」が開催される。出展作家は、アン・サンフン、松本奈央子、和田直祐の3名。
本展は、TEZUKAYAMA GALLERYと東京のKOKI ARTS、ソウルのGallery Chosunの3つのギャラリーによる合同企画で、各ギャラリーの拠点都市を巡回する展覧会シリーズの一環。2024年末に東京のKOKI ARTSにて1回目の展覧会「Intervals: Distance」が開催され、本展はその2回目となる。
本シリーズでは、各ギャラリーが所属作家の中から「抽象絵画」を実践するアーティストを1名ずつ選出し、3回の展覧会でそれぞれ別の作品を紹介。巡回展でありながら、各会場のギャラリーディレクターがテーマ設定から展示構成に至るまでを手がけ、開催地ごとに異なる展示コンセプトと作品が展開される点がユニークだ。
第2回目となる大阪展「Intervals: Extraction」では、目の前にある対象や内省的な感覚の中から本質を掬い上げようとする「抽出(extraction)」の思考プロセスに焦点を当てます。ここで言う「抽出」とは、単に対象から具象性を排した状態を意味するのではなく、視覚的・感覚的・思想的な要素を丁寧に濾過し、選び取り、再編集していく連続的な選択の営みを指します。
出展作家であるアン・サンフン、松本奈央子、和田直祐は、それぞれ異なる技法や関心を持ちながら、「抽出」というキーワードに各々の立場から応答し、絵画という表現形式の枠組みを再考します。三者の異なる絵画表現を横断しながら見ていくことで、選び取られた形や色、構造の背後に潜む、目には見えない思考や時間の層に触れることができるでしょう。
そして、そこに立ち現れるのは、単に削ぎ落とされた形や色といった視覚情報だけではなく、選び取られた痕跡としての集積̶感覚、記憶、知覚、身体性、あるいは存在への問いそのものです。また、本シリーズでは、抽象絵画を「静止した造形物」として捉えるのではなく、常に流動し、変容し続ける”認識”と”感受”の受皿として提示することを試みます。参加アーティストたちが、それぞれの視座から世界を捉え直し、抽出(あるいは削ぎ落とす)ことで、どのような沈黙や距離を作品の中に宿らせているのか。展覧会タイトルにある「Intervals=間(あわい)」は、物と物のあいだの空間を指すのではありません。制作行為とその背後にある思考、あるいは作品と鑑賞者のあいだに生まれる関係性や緊張感といった余白そのものを意味しています。
本展を通して、抽象絵画という実践がいかにして私たちと世界の関係を紡ぎ直し、刷新していくのか―その静かで深い問いかけに触れる場となることを期待しています。
(プレスリリースより)
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出展作家プロフィール
アン・サンフン | Sanghoon Ahn
1975年、韓国(ソウル)生まれ。2014年にクンストアカデミー・ミュンスター・マイスターシューラーを修了。
アン・サンフンの絵画制作における方法論は、彼の絵画に対する姿勢と深く結びついており、それは伝統的な絵画の意味に対する抵抗として表れている。彼は絵画を単なる再現の手段とは捉えておらず、そのため作品には引用や参照の痕跡が排除されているか、あるいは機能しない状態で残されている。作品タイトルですら、イメージとの直接的な関係を断ち、言語的な痕跡としてキャンバスの中に意味づけられないまま留められている。このような態度は、絵画のもう一つの可能性を探る試みである。現代絵画において一般的な傾向が意味を付与する方向にあるのに対し、彼は表象や意味のネットワークを解体することで、絵画そのものが本来備えている潜在的な力を明らかにしようとしている。常に変化し続ける状況の中で、混乱や揺らぎを受け入れつつ、絵画の新たな可能性を模索している。彼にとって不確かさは脅威ではなく、新たな可能性や実験の契機である。未完で不安定な状態に身を置きながら、失敗の可能性を繰り返し引き受けることで、自らの絵画に絶えず問いを投げかけているのである。
これまでの主な出展歴に「HANDS AND STAINS」(Gallery Chosun/ソウル/2025)「FRIEZE Seoul 2024」(COEX/ソウル/2024)、「ART OSAKA - EXPANDED」(名村造船所跡地/大阪/2024)、「私が生涯愛した顔」(青年芸術庁SAPY/ソウル/2023)、「HERBARIUM」(スペースロジック/ソウル/2023)、「Wrinkles in repeated sentences」(Gallery Chosun/ソウル/2022)など。松本奈央子|Naoko Matsumoto
1987年栃木県生まれ、埼玉県在住。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業(2012年)、文化庁新進芸術家海外研修員1年派遣、ドイツ、ミュンスター芸術大学(2017〜2018年)。
近年の制作で松本は、何かを描こうとせず絵を描き進めるなかでモチーフを見つけることを試みている。モチーフは筆致の動きや色面の位置であったり、言葉で指し示すことができる具体的なものであったりする。『Violet』に見られる麻布・白色・花弁の図という組み合わせは、画面上でかたちが生まれ位置していくことへの松本の関心と、相互に先導し合う関係にあり、連作のなかで続けられている。
主な個展に『“Memoria! Fantasia.”』(KOKI ARTS/2022)、『petal/stair/day』(クンストフェラインシャルシュタット[ドイツ バーデン=ヴュルテンベルク州]/2021)。主なグループ展に『ドローイング・ショウ』(あをば荘/2023)、『しかくのなかのリアリティ あざみ野コンテンポラリーVol.10』(横浜市民ギャラリーあざみ野/2019)など。和田直祐|Naosuke Wada
1983年兵庫県生まれ。2013年に京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)大学院芸術研究科を修了。
薄く溶いた絵の具を幾層にも塗り重ねる古典絵画の技法「グレージング」を参照し、光と空間をテーマに制作しています。高透明のメディウムを用いてレイヤーを構築し、透過効果による流動性を伴った絵画は、光が当たる場所や時間によって色やかたちが微量に変化し、「見る」という行為への再考を促します。
主な個展に「Whole set of No.2 to 8」(GALLERY 麟/2023)、「Pathway」(TEZUKAYAMA GALLERY/2022)。主なグループ展、アートフェアに「切磋-絵画の証IV」(TEZUKAYAMA GALLERY/2023)、「Sydney Contemporary 2023」(Carriageworks/2023)、「間 そうぞうのよはく」(graf porch/2023)、「ART FAIR ASIA FUKUOKA 2022」(福岡国際会議場/2022)、「ART OSAKA 2022」(大阪市中央公会堂/2022)、「can (not) reach」(EUKARYOTE/2022)、「和田直祐・小川万莉子:full-size room」(GALLERY 麟/2021)、「類比の鏡 / The Analogical Mirrors」(山中suplex/2020)など。
Intervals: Extraction
出展作家:アン・サンフン、松本奈央子、和田直祐会期:2025年7月12日(土)〜8月9日(土)
会場:TEZUKAYAMA GALLERY Viewing Room
時間:12:00~19:00
休廊:日・月曜、祝日
協力:KOKI ARTS(東京)、Gallery Chosun(韓国)
同時開催
築山有城「Exhibition 2025」
会場:TEZUKAYAMA GALLERY Main Gallery
彫刻家・築山有城の個展。4年前に築山が知人の会社から譲り受けた大きなクスノキとの出会いがきっかけとなり、じっくりと乾燥させたその木材をもとに構想された作品を展示。
大阪市西区南堀江1-19-27
山崎ビル2F