
泉茂(1922–1995)は、戦後日本の現代版画を切り拓いた重要な作家の一人です。1951年に結成されたデモクラート美術家協会の中心メンバーとして活動し、自由で実験的な表現を追求するなかで版画制作にも積極的に取り組みました。
1953年よりエッチングを手がけ、1955年にリトグラフの研究・制作をはじめ、1957年には第1回東京国際版画ビエンナーレ展において新人奨励賞を受賞、これを機にその名が広く知られることとなります。鳥や人物、動物などをモチーフとした抒情的なイメージと軽やかな線描によって、ユーモアと詩情を併せ持つその表現は高く評価されました。
1959年より活動の拠点をニューヨークに移し、1963年からはパリへ渡った泉は、抽象表現主義やアンフォルメル、ポップアートなどの国際的な美術動向に触れながら作風を大きく変化させます。1968年に帰国した後は、幾何学的で明快な造形へと展開し、油彩画と並行してリトグラフやシルクスクリーンによる版画制作を続けました。1960年代後半以降の版画には、簡潔なフォルムと鮮烈な色面による独自の抽象表現が展開され、泉芸術の新たな到達点を示しています。
本展では、夫人・泉照子氏より収蔵した弊廊コレクションの中から、ニューヨークおよびパリ滞在時代の作品各1点と帰国後の作品をあわせて、1960~1970年代の版画を約10点ご紹介いたします。
泉茂が版画というメディアを通して切り開いた豊かな表現を、この機会にぜひご高覧ください。(Yoshimi Arts)
略歴
泉茂(いずみしげる)
1922年大阪府生まれ。大阪市立工芸学校図案科卒業。瑛久らと1951 年に結成した「デモクラート美術家協会」で活動し、叙情的な作風の版画が国内外で高い評価を得る。同会解散後、1959 年から10 年間にわたり滞在したニューヨークとパリで、当時の現地の美術の動向に触れ、抽象的な平面表現へと大きく転換する。帰国後は、主観を排除し、描くことの本質を追究した作品を、晩年まで精力的に制作・発表した。また、1970 年から92 年まで大阪芸術大学の教授に就き、後進の作家を多く輩出した。1995 年没。
和歌山県立近代美術館、国立国際美術館、パリ市立近代美術館、ニューヨーク近代美術館など、国内外の美術館に多数作品が収蔵されている。
会期:2026年7月11日(土)〜8月2日(日)
会場:Yoshimi Arts
時間:12:00〜19:00(日曜は〜17:00)
休廊:月・火曜
大阪市西区江戸堀1-8-24
若狭ビル3F


