⼤阪中之島美術館が2022年2月2日(水)に開館し、併設のミュージアムショップ「dot to dot today」も同日にオープンした。美術館や展示に関連するセレクトに加えて、食器や書籍、玩具、グローサリー、家具など多様な品々が並ぶ店内からは、これまでのミュージアムショップとは違う新しい視点が感じられる。空間・什器の設計デザインは吉行良平が手がけ、家具什器をiei studio、鉄什器をbowlpondが製作。また所蔵コレクション10作品と現代作家10名がコラボして制作されたポストカードは、デザイン・ディレクションをしんごが担当するなど、大阪・関西を拠点とするクリエイターが多数参加している。
店名にある「dot to dot」とは、点つなぎを意味する言葉だ。店舗はものが主役ではあるが、そこを起点としてアーティスト・デザイナーなどのつくり手と、お店へ訪れる人々とのつながりを育みたいという想いを表している。また、続く「today」について、dot to dot todayディレクターの高橋イロ氏はこう話す。「ものと人との出会いは毎日異なります。その1日1日を大切にし、丁寧につなげていきたいという私たちの思想を『today』という言葉に込めました。ロゴマークにもその想いが感じられる仕掛けがあるんですよ」
ロゴマークを手がけたのはOUWNのアートディレクター・石黒篤史だ。ショップカードを見てみると、下部の「MUSEUM SHOP」はスタンダードな文字の並び。店名を為すアルファベットは言葉の通り点(丸)と線に分解され、その集合体そのものがシンボルをかたちづくる。実はこの組み合わせに決まった型はない。つまり、ロゴマークもそれが印字されたショップカードのデザインも、毎日変わるということだ。
「新しい出会いや発見を楽しんでいただけるよう、ロゴの文字構造をなくし、365日分違う型をデザインしていただきました。お店の商品だけでなく、ロゴとの出会いにも縁を感じてもらい、訪れたときの楽しみのひとつとしてとらえてもらいたいと思っています」と高橋氏。
美術館の附帯施設として印象づけられるミュージアムショップだが、遊び心と統一性の両方が備わったヴィジュアルによって、dot to dot todayならではの世界観が伝わってくる。
一方、空間デザインを手がけた吉行は、チャールズ・イームズと妻・レイの映像作品『Powers of Ten™』からインスピレーションを得たという。dot to dot todayのコンセプトにある点つなぎのように、互いに関わり合いながら、徐々に形を変えていく姿を什器のデザインに落とし込んだ。
「店舗の中心にある円形のカウンターや平台は、同形状の縮小サイズが段々に収納された仕様。コンパクトに単体で使うことも、引き出して長い面として使うことも可能です。また、シンボリックな円柱と立方体のステンレスフレームは、ディスプレイの幅を広げ、店内に面白いリズムをつくっています」と高橋氏は話す。
空間を仕切る棚以外の什器は、すべて収納式の構造になっており、企画やシーズンでレイアウトが入れ替わる際には、ガラッと印象の変わった店内を楽しめるだろう。
新しい出会いや発見を生み出す場として、商品のセレクトにもいくつか基準を設けているという。使う人の工夫や想像力を掻き立てるもの、一時的にではなく長く愛してもらえるもの。そしてもうひとつが、ここでしか買うことのできないオリジナルアイテムだ。
「ミュージアムショップですが、目指しているのはもっと開けた場所。地域の人にもふらっと立ち寄ってもらいたいと思い、地元に根ざしたものづくりを展開しています。しんごさんとつくったポストカードをはじめ、大阪を拠点とするKAIRI EGUCHI STUDIOによる大阪中之島美術館限定カラーのペンや、美術館のロゴを施した20/80のAZUMA BUKUROなどは、今回のオープンに合わせて制作しました。アーティストやメーカーとのものづくりに触れられる、ここに来れば新しい楽しみがあると感じてもらえる場所にしたいですね」と高橋氏。
筆者が訪れたのは、オープン初日の2月2日(水)と3月17日(木)の2回。その間にも多くの商品が入れ替わっている印象を受けた。また、4月9日(土)から開催中の展覧会「モディリアーニ ─愛と創作に捧げた35年─」にあわせて、新たにセレクトした書籍やグッズの販売のほか、新作のポストカードの企画も進行している。今後もさらに、地元クリエイターとの協業を予定しているという。
新しい創造に取り組み続けることから、人と物、人と人の関係を育むミュージアムショップ。さらなる変化を楽しみに、足繁く通うことになりそうだ。
営業時間:10:00〜18:00
定休日:月曜
問合:080-4701-5219