本特集では、ドキュメンタリーとフィクションの関係やその境界について向き合いました。それは、「事実」「作為」「理解」というような言葉の定義や、それらに付随する葛藤の輪郭をなぞっていくような作業であり、あらためてドキュメンタリーとフィクションの境界というものがいかに流動的で、相互的関係にあるかを感じています。 人が食べるという行為をインタビューを通して観察・分析してきた独立人類学者の磯野真穂さんとの対談では、他者を理解することについて言葉を交わしました。また、現代フランス哲学、芸術学、映像論をフィールドに文筆業を行う福尾匠さん、同じく、映画や文芸を中心とした評論・文筆活動を行う五所純子さん、そして、劇団「ゆうめい」を主宰し、自身の体験を二次創作的に作品化する脚本&演出家・池田亮さんの寄稿では、立場の異なる三者の視点からドキュメンタリーとフィクションの地平の先になにを見るのかを言葉にしていただきました。 対岸の風景を可視化していくこと、まだ見ぬ世界を知覚すること、その先に結ばれた像が唯一絶対の真実から開放してくれることを信じて。そして、今日もわたしは石をなぞる。 小田香 Kaori Oda ー 1987年大阪生まれ。フィルムメーカー。2016年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryを修了。第一長編作『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞受賞。2019年、『セノーテ』がロッテルダム国際映画祭などを巡回。2020年、第1回大島渚賞受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
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2022.06.16
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REPORT|「casual kappou iida//02」オープン

文: 田原 奈央子[プレス・企画]
REPORT|「casual kappou iida//02」オープン

谷町六丁目の酒場「casual KAPPOU iida//01」(以下、iida)の新店舗「casual KAPPOU iida//02」が、2022年4月1日(金)、iidaと同じビルの東区画にオープンした。内装デザイン・施工は三好工務店、スタッフのオリジナルエプロンのプロデュースをlajiの海野康志氏、ロゴデザインをアーティストの村上周氏、器のデザイン・制作をNOTA&designが担当するなど多様なクリエイターが関わり、オーナーの飯田恭央氏のセンスが光る店となっている。

空間の軸を回転させて配置された客席は、テーブルとカウンターを合わせて16席。どの席も壁と向き合うことがなく、ゆとりのある落ち着いた雰囲気をもつ。

REPORT|「casual kappou iida//02」オープン

店の中心にある調理場を囲むカウンター席からは、美しい所作で次々と調理する飯田氏の姿を楽しむことができる。もともとお店の顧客だった三好工務店の三好利洋氏は、この光景を最大限楽しんでもらえるよう、カウンターの高さを検討したという。

REPORT|「casual kappou iida//02」オープン
調理する飯田氏

iidaで提供される料理には、信頼する生産者から仕入れた食材が使用され、メニューは毎日変わる。野菜、肉、魚、お米と締めの4つに構成されており、訪れるたびに新しい料理や旬な食材を堪能できるのもiidaの楽しみのひとつ。素材を生かすために味付けはシンプルだが、手間ひまをかけた丁寧な調理を大切にしている。一口目からじんわりと広がるおいしさは、身体も心もほぐしてくれるようだ。リズミカルに進む調理、出来上がった料理をスタッフたちがさらりと届け、心地よいタイミングでお酒を案内してくれる。てきぱきと働く姿は、まるでひとつのステージのように軽快で、見ていると元気が湧く。

REPORT|「casual kappou iida//02」オープン
毎日変わるメニュー表は飯田氏の手書き
REPORT|「casual kappou iida//02」オープン
NOTA&designが制作した白を貴重とした器は、iidaのシンプルな料理を飾らずとも引き立ててくれる
REPORT|「casual kappou iida//02」オープン
魚の造り。身の弾力に新鮮さを感じる
REPORT|「casual kappou iida//02」オープン

飯田氏がはじめて手がけた店舗「casual kappou iida//01」は、およそ5年前の2017年3月3日にオープンした。SNSに流れてくるおいしそうな料理はもちろんだが、筆者がiidaの活動で一番印象的だったのは、2020年に行ったコロナ禍での食材販売だった。飲食店が休業しているなか、仕入れ先を応援したいという想いから、店頭にて下ごしらえをした野菜や肉・魚などを販売。簡単な調理法を合わせて伝え、つくる楽しさとともに家庭の食卓に素材のおいしさが生きた料理が並ぶ。「酒場」や「飲食店」という枠に収まらず、柔軟で心意気のあるその活動にとても興味を惹かれた。

筆者が初めてiidaを訪れたのは、去年の11月のこと。長く続くコロナ禍のため外食のできない日が続き、夫と娘のために毎日料理をすることは嫌いじゃなかったが、だれかがつくったおいしい食事も食べてみたいという気持ちが日に日に増していた。夫が出張でいなかったある日、仕事終わりに子どもを迎えに行ったのだがほとほと疲れて、ダメ元でiidaへ電話をしてみた。カウンター席のみのお店だったこともあり、子連れで行くことを懸念したのだが「子どももお腹が減りますよ。ぜひ来てください」と快く受け入れていただき、その言葉には涙が出そうだった。

いつも賑わうiidaの店内には、老若男女問わず、さまざまな客が訪れる。さきほど記した個人的なエピソードも含め、きっとそれぞれがiidaの料理に惹かれ、そしてiidaで過ごす時間の心地よさに癒されているのだろう。

兵庫県豊岡市で生まれ育った飯田氏は、学生時代は共働きの両親に代わり同居する祖父のごはんを用意したり、母親の働く旅館の調理場の手伝いをしたりと、当時から料理をすることが好きだったという。高校卒業後、大阪へ出て飲食店でのバイトを始めたことから飲食の世界へ。その後、もつ鍋屋や野菜のセレクトショップ、和食屋での経験を得て独立に至った。

「『ちょうどいい』はひとつのテーマですね。ちょうどいい味付け、ちょうどいい料理。ぶっきらぼうなんだけど、繊細で。そのバランスが心地よさをつくって、気を使わない空気をつくっているんだと思います。そうすることで互いに固執せず、お客さんの場も大切にできるんです」と飯田氏は話す。

「casual kappou iida//02」のプロジェクトがスタートしたのは、飯田氏が30歳(現在31歳)を迎えたときだ。その節目に、iidaとしての飲食店の在り方や存在価値を考えたという。

「30歳というのは、僕のなかで大きなタイミングでした。カウンター10席だけの小さな店で、この先どうしていこうかと。26歳でお店を開いたというのは、僕にとってアドバンテージだったので、その4年の間で飲食店のあり方や自分の存在価値を考える時間になりました。そのとき考えたのは、まず下の世代の子たちのこと。一緒に働いてくれる子たちと組織として動ける状況にしたいと、iidaを法人にして、新店舗をつくることを決めました。もうひとつが、体のどこかが不自由な人でも気持ちや機会があれば飲食店で働ける環境づくりを考えること。ヨーロッパでは普通にあるけれど、日本はまだまだないので、そういうことももっと特化していきたいと考えてます」

REPORT|「casual kappou iida//02」オープン

まだ短い期間だが、筆者が飯田氏とコミュニケーションをとるなかで感じたのは、ぶれない意思と義理人情の厚さだ。iidaらしさを大切にしながら、カッコ悪いこと、筋の通らないことは絶対にしない。優しく周りに気遣い、何かあったときにはさっと声をかけるジェントルマンな振る舞いは一体どこからくるのだろう。
「僕の芯の部分は、おじいちゃんからの教えが大きいかもしれないですね。ちゃんと仕事する・先輩へ敬意を払う・感謝の気持ちを常にもって共存していく。漢としてあるべき姿が自分に染み込んでますね。あと、iidaとして大切にしている社訓があるんですよ。『人に感謝。弱い人に優しく。人に元気を与える』の3つ。僕はスタッフとともにそれを体現する行動を心がけています」

この社訓を見ながら、iidaでの経験を思い出すとすべて腑に落ちる。しかし、言うことは簡単だがそれを言葉に出さずに行動で示すことは簡単なことではないと思う。飯田氏とスタッフのチームワークの賜物だ。

「しっかりこのお店を運営しながら、スタッフとともに成長していきたいと思います。次の展開はまだ考えていませんが、手広くするのではなく、お客さんが喜んで食べる状況を目の届く範囲で考えていきたいですね」

「casual kappou iida//02」のオープンにあわせて一時閉店していた「casual kappou iida//01」は6月からスタッフの石田翔大氏によって営業を再開する。簡単な料理とドリンクの提供とのことだが、組織として動き始めたiidaの次の一歩が早速動き出した。

iidaらしさを一言でいうと「媚びない・ブレない」と笑いながら答えてくれた飯田氏。今後もその意思を貫きながら、躍進していく姿が楽しみでしかたがない。

REPORT|「casual kappou iida//02」オープン

casual kappou iida//02
営業時間:18:00〜24:00
定休日:水曜・日曜・祝日
問合:080-2423-4590

casual kappou iida//02

大阪市中央区上町1-1-1

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