2021年12月14日(火)、北浜・東横堀川の本屋「FOLK old book store(以下、FOLK)」隣に、絵本専門店「子どもの本屋ぽてと」がオープンした。FOLK同様、店主は吉村祥氏。ロゴデザインは、ミュージシャン・デザイナーのBIOMANが手がけている。
店内には、定番のロングセラーものはもちろん、近年発刊された新しい作家のものまで、吉村氏のおすすめの絵本、関連雑貨が並ぶ。絵本の系譜が辿れるようなラインナップは、子どもも大人も楽しめる。なかでも人気絵本から生まれた雑貨は好評で、オリジナル雑貨は売り切れることも。絵本専門店をはじめたのは、ごく自然な流れだったと吉村氏は話す。
「漫画やイラストレーションが好きだったこともあり、絵本には注目していました。それこそ漫画家が手がけた絵本から、出版社や同年代の作家を数珠つなぎのように調べていくと面白くて。また、FOLKをはじめて今年で12年で、これまでの企画でお世話になった作家さんたちが、絵本を手がける機会が増えてきたこともきっかけになりました」
「子どもの本屋 ぽてと」は、2021年春に谷町六丁目のギャラリーPOLで開催したポップアップイベントから生まれた企画だ。「ぽてと」という名前の由来は、至ってシンプル。お子さんが好きな食べ物だったからという。筆者にとっては、ちょうど家で過ごす時間が増え、娘と楽しめるものを探していた時期の開催だったこともあり(インパクトのある名前にも惹かれ!)、店内にずらりと並ぶ絵本を娘と食い入るように選んだことを覚えている。
考えすぎかもしれないが、子どもが生まれて以来、実は筆者にとって「絵本」は悩みの種のひとつだった。子どもに絵本や本を好きになってほしい一方で、そもそも選び方がわからない。また、どのように本と付き合っていけばよいのかと頭を抱えていたのだ。そんなときに出会った「子どもの本屋ぽてと」は、まるで救世主のようだった。
「そんなに難しく考えなくていいと思いますよ。ただ、改めて考えると、絵本と出会える場所って、意外と少ないかもしれない。ぽてとが、そんな場所になってくれたら嬉しいです。絵本選びについても、定番ものは、まず間違いない(笑)。なにより、まずは親が楽しむことが大事だと思います。まだ本が読めないお子さんには、“書いていること”だけではなく、“読み方”を工夫してあげるのもおすすめです。よい絵本って、描かれている絵の細部にまで、たくさん仕掛けが隠れているんですよ」と吉村氏。
吉村氏の話に、「年齢に合わせて本を選ばないと……」「話が長い絵本は、まだ無理かも」と絵本選びを楽しめず、億劫になっていた筆者の心はほっとほぐれた。子どもの本屋ぽてとでは、読み聞かせのイベントや絵本の原画展、さらには絵本の出版など、絵本の楽しみを伝える活動も予定しているそうだ。
「生きていくなかで、なぜか“こうしないといけない”という謎の概念に囚われて、窮屈さを感じることがあります。もっと柔軟でいいはずなのに。絵本の世界は、自由な発想に溢れているので、小さい頃から摂取して、“どう生きてもいいよ”って伝えられるといいなと思います」
絵本の可能性、読み手となる子どもたちの未来を思い描く吉村氏の話を聞き、改めて彼が選書した本棚を眺めてみると、少し見え方が変わったような気がした。
この日、いくつか紹介してもらった絵本から、『おしいれのぼうけん』(作・ふるたたるひ、たばたせいいち、童心社)を購入した。すでに家にある絵本のなかで最もボリュームのある80ページの絵本。はたして幼い娘の集中力はもつかしら……という筆者の心配をよそに、しっかりと聞き入ってくれた。数日に分けて読み進めていったが、前日に読んだ物語もしっかりと覚えていて、娘と一緒に絵本を楽しむことができた。この「楽しい!」という気持ちを忘れずに、絵本とのコミュニケーションを積み重ねていきたいと思う。
営業時間:火曜日〜金曜日 13:00〜19:00、土曜日・日曜日 13:00〜18:00
定休日:月曜日
問合:info@folkbookstore.com
大阪市中央区平野町1-2-1