「芸術文化を、大阪から考える」といった際に、まずは大阪、ひいては都市について改めて考えたいと思いました。これはコロナ禍で、わたしたちの暮らしを成り立たせている社会の仕組みや経済について再考するときが来ていると実感したからです。プラネタリー・アーバニゼーション(地球の都市化)という言葉もありますが、わたしたちはロジスティクスというスムーズな流れによって、常に有形無形の商品を消費し続けることで、あるいはリモートを加速させるコミュニケーション技術によって、物理的な出会いがもたらす関係性や、使ったり食べたりしているものの連関への想像力が奪われているようにも思えます。その異様とも言えるスムーズさのなかに、どのように亀裂やひっかかりを見つけ出していくのか。そこから、文化や芸術が醸造されるのだと思います。  今回の特集では、猪瀬浩平さんとの対談では、私たちの生き方や、コロナ禍において顕在化した感染させる/させないの二元論に回収される違和感と、リモートによるコミュニケーションによってこぼれ落ちる「巷」的なひっかかりについての大切な視座と経験を、有家俊之さんにはロジスティクスと反対側にあるものの調達とその楽しみとおいしさを教えていただきました。また、北川眞也さんとの対談で都市のパースペクティブとそのなかで行われている実践をお聞きしながら、いかに私たちは行動できるのかというヒントを与えていただき、合わせて、櫻田和也さんとともに大阪という都市を成り立たせている住之江の物流拠点、港湾地帯をフィールドワークすることで改めて私たちの暮らす都市を実感することができました。一見、つながらないようなこれらの経験や知見は、どこでもすぐにつながれる現在において、私たちに物事を編み直す想像力を与えてくれます。今回、対談やフィールドワークをともにした4者は、みなアーティストだと思います。 家成俊勝 Toshikatsu Ienari ー 建築家。1974年兵庫県生まれ。2004年、赤代武志とdot architectsを共同設立。京都芸術大学教授。アート、オルタナティブメディア、建築、地域研究、NPOなどが集まるコーポ北加賀屋を拠点に活動。
Editors Memo
2020.04.27

創造活動に寄り添うメディアとして考えること

文: 北村智子[paperC運営事務局]

『paperC』は、おおさか創造千島財団の機関紙として、財団の設立年である2012年に創刊しました。財団自体の活動だけでなく、大阪・関西の創造活動を内外に向けて発信したいという想いを持って、当初から全国各地の関係者や文化施設などに配布。以後、Webへと切り替わる2019年までの間に17号+特別号を発行してきました(機関紙『paperC』はこちらからご覧いただけます)。

創造活動に寄り添うメディアとして考えること
2012年より発行のno.001〜016、Special Issue、paperCの宴(忘年会)のグッズとフライヤー。写真にはないno.017発行(2019年)後、2019年10月にWebサイトへと移行。 photo: Natsumi Kinugasa

大阪府下の創造活動支援を行っているうちに見えてきたのは、多くのアーティストや芸術文化の担い手が、自身の活動の広報に苦心している状況でした。いくらよい活動をしていても、その情報が行き渡らなければ見てもらうことができず、結果として金銭的にも苦しい状況に陥り、最悪の場合、活動が続けられなくなってしまいます。一方で、大阪の芸術文化シーンを伝える媒体は減少しており、外からは現状を知る手立てがほとんどなく(首都圏のある関係者から、「大阪ってアーティストいないですよね」と言われたときは本当にショックでした……)、また府内でも、関与している/興味があるジャンル以外の活動を知る機会が少ないという実態もあり、次第にこの状況を改善すべきではないかと考えるようになりました。

そこで、「創造活動のインフラ整備をミッションとしている我々がやらねば!」と決意。編集担当のMUESUMさん、デザイン担当のUMA/design farmさんと一緒に、paperCをWebへと移行することで、よりタイムリーに情報を発信し、大阪の創造活動の創客への貢献→活性化をはかろうと立ち上がったのです。紙媒体時代のコンセプトや方向性はそのまま引き継ぎ、大阪・関西を拠点に活動する人々の取り組みを、インタビューや寄稿などを通じて丁寧に伝えていくとともに、新たな機能として、府内で行われているアート・カルチャーにまつわるイベントやニュースをオールジャンルで収集・発信。目標は、大阪の芸術文化シーンのいまを俯瞰できるメディアをつくることです。

創造活動に寄り添うメディアとして考えること
紙媒体の『paperC』では、毎号CO-DIALOGUEと題した巻頭対談企画を展開。「寛容な場のあり方」「メディアと人の関わり、そこから生まれるもの」といったテーマを設け、アーティストやクリエイター、研究者など芸術文化に携わる人々による対話を収録した。 photo: Natsumi Kinugasa

いざ展示や公演、イベントなどの情報を収集しはじめると、予想以上にたくさんの多様な活動が行われていることを実感しました(2019年11月だけでも60件近い催しを記事にしました)。大阪は大きな公立文化施設が少ないですが、そのぶん、個人や小さなグループで運営している場の活動が際立ち、そうした個々の情報が一堂に会することで、大阪の躍動のようなものが感じられるのです。それをいろんな方に届けたい。paperCは広告掲載などの営利活動は行っていないので予算の制約もあり、集められる情報は限られていますが、全国的なメディアでは取り上げられない小規模なものでも、ピリッと刺激的で面白い活動は積極的に発信していきたいと思っています。

創造活動に寄り添うメディアとして考えること
2019年12月に行われた山本製菓でのプロジェクト「STUMP OF PROMETHEUS ー姿を聴くためのー」も、小規模ながら企画の豊かさが際立った。フィンランドの写真家と音楽家によるコラボレーション展示で、世界の稀少な木々の写真とその木が発する音像からなるインスタレーションが日替わりで繰り広げられた。元おかき工場の建物内に入ると、木の中にいるような不思議な感覚に。 photo:Tomoko Kitamura

Webメディアへ移行して約半年。うれしいことに、これまでご縁のなかった方からも、情報掲載依頼をいただくようになってきました。「paperCに載せておけば大丈夫(=情報が行き渡る)」と、大阪で芸術文化に携わる方々から思ってもらえるようなメディアになるためには、より多くの読者を獲得することが必須。魅力的な情報に出合えるサイトとして、また読み応えのある、大阪にいる私たちだからこそ書ける記事を届けるサイトとして信頼を得るべく、オフラインの活動(イベントなど)も含めて展開していく予定です。

現在(この記事を執筆したのは2020年4月上旬)はCOVID-19の影響によるイベント自粛で、大阪のライブハウスはもとより、劇場、イベントスペース、ギャラリーなどの施設や、アーティストやクリエイター、テクニカルや制作のスタッフなど、多くの関係者が大変な状況に置かれています。目の前の、そしてこれからやってくる危機を少しでも回避するために、有益な情報を提供するなど臨機応変に動いていきたい。今後も民間団体ならではの柔軟さを生かして、大阪で活動されている方々に寄り添うメディアを目指します。

創造活動に寄り添うメディアとして考えること
コロナ禍で活動自粛が求められる文化・芸術施設への助成を求める署名集めから始まった活動「#SaveOurSpace」のWebサイト。財政支援情報やさまざまな支援プロジェクトをまとめて紹介するなど、情報のハブとしても機能している。

(#SaveOurSpace公式サイトはこちら

北村智子 / Tomoko Kitamura

神奈川県出身。大学で音楽学を学んだ後、就職を経て大学院にてアートマネジメントを専攻。企業の芸術支援に興味を持ち、企業メセナ協議会に入社。その後、大阪で不動産賃貸業の強みを生かしたメセナを展開する千島土地株式会社に勤務。地域創生・社会貢献事業部に所属し、「アヒルプロジェクト」「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」の推進、おおさか創造千島財団の設立などを担当。現在はフリーランスとしてpaperCの運営業務に携わる。芸術文化の表舞台を支えるインフラを整えることがライフワーク。

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おおさか創造千島財団
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