大阪を拠点とするアートハブ「TRA-TRAVEL」が、北加賀屋の音ビル内にあるTRA-TRAVELギャラリーにて、Yukawa-Nakayasuと葭村太一による展覧会「アノ ヒダマリニテ」を開催する。アーツサポート関西の「上町台地現代アート創造支援寄金助成」の成果展。
人々の営みの痕跡を探究する両作家が約2年にわたり上町台地にてリサーチやフィールドワークを重ね、「厄災を乗り越えることに寄与した信仰」かつ「信仰を可視化する視覚芸術」を考察、異なる表現方法で結実させる。
厄災に関わる芸術表現は、仏教美術に限らず、厄除け信仰の護符としても民衆に流通した『疱瘡絵(ほうそうえ)』や、安政江戸大地震の翌日に発行し、人々の傷心に笑いをもたらした「戯画/なまず絵」など幅広く知られています。疫病や祟り(たたり)を『擬人化』して描く表現は、目に見えない不穏なモノを具象化し、人々の想像に拠り所をもたらしました。
近くに断層がとおる大阪の上町台地では天災が起こり、人の移動が行われることによって疫病が伝播してきました。その足跡は、厄災の原因を「死者の祟り」とみなしていた時代に建立された、鎮魂を目的とする寺社の多さからも伺えます。
また、平安時代から四天王寺に残る、彼岸の日に沈みゆく夕日を見ながら極楽浄土を観想する「日想観」など、厄災が遠因となる信仰や習俗が現在にも受け継がれ、その一端は、能の『弱法師』や下寺町の地蔵群など、芸術分野においても垣間見ることができます。本展では、Yukawa-Nakayasuがエッチング及び映像作品を通して、四天王寺の西門信仰にまつわる人々の営みや死生観の輪郭をえがき、葭村太一が上町台地の崖面にある首が落ちた無縁仏を、一木で”彫刻する事で”離ればなれになった首と胴体を接続させ再生をはかる彫刻を発表します。過去の厄災の痕跡とコロナ禍の状況を重ねることで、「上町台地における祈願の歴史」を現代に引き継ぐことから、現在進行形の厄災がもたらす閉塞感に、芸術表現を通じた精神的拠り所を探ることが本展の試みとなります。
「日想観」や「西日のあたる地蔵」など日のあたる場所で行われてきた過去の営為、コロナ禍において人が日光に抱く現在の情動、そのようなヒダマリに心情をゆだねる人々の普遍的な営みに想いを巡らすことから、まず始めてみてもよいかもしれません。
–TRA-TRAVEL–
Yukawa-Nakayasu(ユカワナカヤス)
1981 年大阪生まれ。歴史や習俗や習慣をもとに、社会や身体、日常に内在している営為や現象を視覚化する作品を制作。 近年では「生命の循環」まで視野を広げ、人々の営みから発生する現象やエネルギーの循環に着目している。2018 年に The 12th Arte Laguna Prize 大賞受賞(Arsenale, ヴェネツィア)など。葭村太一(ヨシムラタイチ)
1986年兵庫県生まれ。日常に溶け込んでしまった“痕跡”に焦点を当て、その奥に存在するであろう目には見えない不確かな部分から作品を制作。主な展覧会に、2021 年個展「Imitation or mimic」(千鳥文化ホール、大阪)、2020 年個展「REACTION」(VOU、京都)、2019年「六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2019」(記念碑台、兵庫)など。
アノ ヒダマリニテ
アーティスト:Yukawa-Nakayasu、葭村太一会期:2022年3月12日(土)~19日(土)※会期中無休
会場:音ビル2階 TRA-TRAVELギャラリー
時間:12:00~18:00
料金:入場無料
問合:info.tratravel@gmail.com(TRA-TRAVEL事務局)
関連イベント
トーク&ツアー
日時:3月13日(日)15:00~17:00(淨國寺15:00~16:00トーク、16:00~17:00心光寺ツアー)
会場:淨國寺(大阪市天王寺区下寺町1-2-36)
登壇者:Yukawa-Nakayasu、葭村太一
モデレーター:大島賛都(アーツサポート関西チーフプロデューサー)
料金:無料主催:TRA-TRAVEL
助成:アーツサポート関西「上町台地現代アート創造支援寄金助成」 、一般財団法人おおさか創造千島財団
協力:淨國寺、真光院、心光寺、大覚寺、超心寺、イチノジュウニのヨン、柳本京子(敬称略、順不同)
音ビル
大阪市住之江区北加賀屋5-5-1