京都市京セラ美術館の開館1周年記念展のひとつとして、大阪在住の美術家・森村泰昌の個展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」が開催される。京都では1998年以来の大規模な個展となる。
森村は、さまざまな名画や歴史上の人物に自ら扮し、セルフポートレート作品として発表を続けてきた。国内外で個展を開催するほか、舞台作品にも取り組むなど、精力的に活動している。最近では、森村自身が文楽人形となり、人形浄瑠璃文楽の人形遣い・桐竹勘十郎に遣われた「人間浄瑠璃」の公演(2022年2月、大阪中之島美術館にて)が記憶に新しい。
本展では、森村が1984年から撮りためている秘蔵のインスタント写真約800枚を初公開。これらの写真は森村にとって、アトリエなどの私的空間で行われる儀式の痕跡のようなものであり、それらを総覧することにより森村作品のバックグラウンドをうかがい知ることができる。
また本展のもう1つの見どころは、 特設の音響空間で上演される無人朗読劇《影の顔の声》。1994年に自作の小説を自ら朗読して制作したCD《顔》を発展させ再制作した作品だ。演出はあごうさとし、音楽は中川裕貴、サウンドデザインは荒木優光が担当するなど、共に制作を手がける布陣も興味深い。彼らとともに、森村がどのような「声」の空間を立ち上げるのかが注目される。
会場構成は、青木淳とともに京都市京セラ美術館の大規模リニューアルプロジェクトを手がけた建築家・西澤徹夫と森村のコラボレーションによるもの。「迷宮劇場」へと変貌した特別な展示空間で、35年余り継続されてきた森村の私的世界の全貌を堪能したい。
森村泰昌から本展に寄せて 「ワタシ X 迷宮 X 劇場=?」
こうありたいと私が思うワタシ。私ってこういうひとなんだと決めつけているワタシ。私自身ですら思いもよらなかった未知のワタシ。私のなかにはたくさんのワタシがいて、まるでそれは迷宮のように入り組み、あるいは様々なワタシが登場する舞台のようでもあって、ともかく一筋縄にはいきません。
世界を解釈するのも、歴史を紐解くのも結局はこのワタシなのだとしたら、まずはワタシというこの複雑怪奇なスタートラインに今一度立ち戻り、最初からやり直してみたい。
本展は、コロナの時代の閉塞した環境だからこそ見えてきた、なにが大切なのかという問いがテーマです。私にとって、そしてあなたにとって大切な宝物は何? 展覧会を通して捜しあてられたらいいなと思っています。
京都市京セラ美術館開館1周年記念展「森村泰昌:ワタシの迷宮劇場」
会期:2022年3月12日(土)~6月5日(日)
会場:京都市京セラ美術館 新館 東山キューブ
時間:10:00~18:00(最終入場は17:30)
休館:月曜 ※3月21日(月・祝)および5月2日(月)は開館
料金:一般2,000円、大学・専門学校生1,600円、高校生1,200円、小中学生800円、未就学児無料
※京都市内に在住・通学の小中学生は無料
※障害者手帳等提示の場合は本人及び介護者1名無料問合:075-771-4334
京都市左京区岡崎円勝寺町124