現代美術作家・田中朝子の3年ぶりの個展が、深江橋のギャラリーノマルにて開催される。
田中は1972年大阪生まれ。日常的な視点から捉えたごく些細なズレや錯覚を、写真・版画・映像など多様なメディアを介して表現する作家だ。
2007年に開催した同ギャラリーでの個展で、日常の中で目にするさまざまなオブジェを水中に沈めて撮影した写真作品「pool」シリーズを発表した。
「light in a pool」と題された今展では、「pool」シリーズに再度脚光をあてた新作を発表。“水”をテーマに考察を深めた結果導き出された“光”の性質に着目し、水を使って光を捉え、その光と視覚によって認識される色やカタチを、田中独自の手法で作品へと昇華させる。
[Artsit Statement]
light in a pool
「light in a pool」とは、2007年にギャラリーノマルで開催した「pool」展の続編の様なものです。
「pool」展では紅茶(“tea in a pool”)やホース(“hose in a pool”)などの日用品を水に沈め、写真作品にして展示しました。ある日のまだ明るい時間、お風呂に入っていてフト、お湯に浸かった自分の手が普段より白けて見えたのがきっかけでした。感覚的には「白けて」だったのですが、回想すれば、水の中では水の外より、発色が大人しく儚げで物理的だけでない浮遊感が感じられたのです。どうやら水のフィルターによって、実在感を失い抜け殻の様になるのです。そんな気づきから、嬉々としてあれこれトプンと水に沈めては写真にしました。
当然ながら、展覧会が終わったからと言って興味が無くなる訳ではなく、その後も相変わらずお風呂の中では手を眺め、ラッキョウの瓶詰めに見入り、時に水が残ったグラスの底から空を見上げたりする日々が日常として淡々と続きました。
そしてそんなまたある日の陽の昇る頃、「虹を沈めてみたい」と唱えながら目覚めてしまい、「pool」モードの日々が再び始まりました。
寝ぼけた思いをどこまで形にできるかは別として、再び始めて気づいたのには、水の現象として思って追究していたものが、それは光の現象でもあること、私が無性に惹かれる透明感や浮遊感、揺らぎなどは光あってのものなんだと、今更ながら認識し、光に敬意を込めて今回は「light in a pool」と掲げることにしました。
光に満ちたpoolの空間を、ご一緒に楽しんでいただけたら幸いです。田中朝子
(Webサイトより)
会期:2022年5月28日(土)~6月25日(土)*初日は作家在廊
会場:ギャラリーノマル
時間:13:00~19:00
休廊:日曜日
問合:06-6964-2323
大阪市城東区永田3-5-22