アーティストステートメント
この作品は普段ならすぐに片付けてしまい、形に残ることのない子供の遊びを「子供の世界」の一端として形に残すことを試みたプロジェクトです。
箱庭療法は20世紀初頭から子どものための心理療法のひとつとしてヨーロッパで発展したもので、その後ユング心理学や日本では河合隼雄氏が取り入れ、これまで長く子どもの内的世界を引き出す表現として認知されてきました。
今作では、箱庭療法で使用される箱庭をそれぞれの子どもたちの家に持ち込み、砂と自分のおもちゃを使って心ゆくまで遊んでもらいました。
驚いたことに同じ年代の子供達でもその遊び方や完成形には大きな違いがありました。
そして側で見守る母親の姿勢は、育児と子供の成長の関係性について私に深く問いかけるものでもありました。
まさに母親のこれまでの育児の結果が表出されたとも言える箱庭は、子供の世界だけでなく母と子の世界とも呼べるのかもしれません。
私はこの箱庭が出来る過程を映像で撮影すると共に、完成された箱庭を様々な角度から撮影し、そこから3Dデータを生み出し、さらにそのデータを3D印刷することで形にしました。
多面的に撮影された写真から造形された立体物は、膨大な情報量を含みながらも写真でも映像でもない曖昧さを持ちながらも台座に陳列され、あたかも彫刻のような佇まいとなり作品として存在します。
それは正解のない育児の曖昧さと、それでも健やかに育つ子供の存在そのものの様にも感じています。
キリコ
会期:2023年4月14日(金)〜24日(月)
会場:NANEI ART PROJECT GALLERY 04街区
時間:13:00〜19:00(最終日は17:00まで)
休廊:火〜木曜
問合:06-6459-7545
NANEI ART PROJECT GALLERY 04街区
大阪市北区中崎西4-3-4
Collection Nakazaki1 – 1F