「鬱の人が出てくるような音を出さなきゃ」
ちんどん通信社創始者・林幸治郎さんのこの言葉の意味を、渋谷のスクランブル交差点を歩いているとき突然理解したと、著者・阿部万里江さんは綴っています。
「ちんどん屋の実践者がどのように社会関係やその断絶を『聞いているのか』、私はそのとき理解した。この知覚の変化によって、私は孤独感から引っ張り出された」と。
本書は、民族音楽学者の阿部さんがアメリカで出版した学術書を、音楽学者・輪島裕介さんが日本語訳した、史上初のちんどん屋研究本です。
林さんは、1980年代末からのちんどん屋の再起に大きな役割を果たしてきました。本書は、その林さん及びちんどん通信社を主人公に据え、「響き」「場違い」「賑やかさ」に代表されるちんどん屋の実践と哲学をインタビューから明らかにし、鮮やかに解釈して見せたものです。
著者・阿部さん、そして自身も通信社の活動に鼓舞されたという訳者の輪島さんが、2018年の原書刊行後、コロナ禍を経た今、あらためてちんどん屋の音の商売、音の哲学について、メンバーに伺います。
トークショー開演前には、ちんどん通信社が会場周辺を廻ります。ちんどん屋に関心のある方はもちろん、「聞こえてくる音」に関心のある方や公共空間と社会的つながりに興味のある方にも、必見です!
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阿部万里江
1979年生まれ。エスノミュージコロジスト(民族音楽学者)。ボストン大学音楽学科教授。専門はサウンド・スタディーズ、人文地理学、音の政治学、ポピュラー音楽研究など。カリフォルニア州立大学バークレー校大学院(エスノミュージコロジー)修士・博士課程修了。ハーバード大学ライシャワーセンター博士研究員(2010年)、国際日本文化研究センター客員研究員(2018年)。研究のかたわらアコーディオン奏者として様々なジャンルのバンドとレコーディング・ツアー活動。主な共演者や所属バンドはDebo Band、Japanese Elephants、Fred Frith、Carla Kihlstedt、Jinta-la-Mvta、地中池、エチオピアジアなど。輪島裕介
1974年石川県金沢市生まれ。音楽学者。大阪大学文学部・大学院人文学研究科教授。専門はポピュラー音楽研究、近現代音曲史、アフロ・ブラジル音楽研究。東京大学文学部、同大学院人文社会系研究科(美学芸術学)博士課程修了。博士(文学)。2010年に刊行した『創られた「日本の心」神話』(光文社新書)で、2011年度の国際ポピュラー音楽学会賞、サントリー学芸賞を受賞。著書に『踊る昭和歌謡』(NHK出版新書)など。林幸治郎
1956年、福岡市生まれ。大学卒業後、ちんどん屋の本職の道に進む。1984年、独立して「ちんどん通信社」を発足。97年、有限会社「東西屋」設立。様々な時代の要請にも応え、温故知新の精神で、海外公演も多数こなし、40余年を経て、熟成の境地を迎えている。その経験を認められ、現在、京都市立芸術大学音楽学部の特別講師も務めている。ちんどん通信社
リーダーの林幸治郎が立命館大学の頃に結成したニューオリンズジャズ研究会を前身とする。この研究会は、その後「ちんどん研究会」に発展。1984年、林が独立し「ちんどん通信社」発足。しばらくして、学生時代の仲間、小林信之介、ジャージ川口も加入。主なCD作品は「パレード」「ロマンス」「大阪スタイル!!!」「I’ll take that CHING-DONG Jazz Music」等。2020年7月より現在、あべのハルカス近鉄本店内「スペース9」にて、毎週水曜日にレギュラーで公演中。
阿部万里江 × 輪島裕介 × ちんどん通信社(林幸治郎・小林信之介・川口雅明・仮屋崎郁子)
『ちんどん屋の響き』刊行記念イベント
「音の商売、音の哲学――日本最大のちんどん屋・ちんどん通信社と、音を出し、音を語る」日時:2023年6月23日(金)町廻り 17:30~/開演 19:00~
※開演前、CHOVE CHUVA・靭公園周辺をちんどん通信社が廻ります会場:CHOVE CHUVA
参加費:2,500 円(ミニライブ付、税込)
※参加予約はこちらから
大阪市西区京町堀1-13-2
藤原ビル2F