1920年代から映画製作がはじまった香港。現在に至るまでさまざまなジャンルで優れた作品を輩出し、映画史に名を刻んできた。近年では民主化運動に対し中央政府によって香港国家安全維持法が制定され、政治的自由への懸念が強まる状況にあるが、そんななかでも映画界では新しい才能が芽生え続けている。2023年7月8日（土）から21日（金）までシネ・ヌーヴォXで開催される「新世代香港映画特集2023」では、香港で話題の映画監督による作品のうち、映画祭などで高い評価を受け、興行面でも年間ベスト10入りのヒットをした2作品が上映される。

ひとつは『私のプリンス・エドワード』。ノリス・ウォン監督の初長編映画で、香港のプリンス・エドワード地区を舞台に、ウェディングショップで働くアラサー香港女性の「偽装結婚」を題材にした作品だ。偽装結婚の離婚手続きと結婚式の準備を同時に進める過程で、自分の心を見つめ直す主人公の姿が描かれる。中国の批評家が選ぶ中華圏映画の年間1位に選出され、香港電影金像奬でも新鋭監督賞と音楽賞の2冠に輝いた。

もうひとつのアモス・ウィー監督『縁路はるばる』は、タイプの異なる5人の女性に出会った青年が主人公。その女性たちはなぜかみな都会から離れた僻地に住んでいるため、香港中を旅することとなる、という設定のラブコメディだ。美しい香港各地の風景を堪能できるので、観光気分も味わえる一作となっている。エンタメ性と批評性を兼ね備えた、香港新世代映画監督の傑作をお見逃しなく。