大阪に生まれ、現在は奈良県生駒市を拠点に制作を行う美術家・黒瀬正剛の個展「Sign」が、2023年10月7日(土)から22日(日)までEMMA COFFEEにて開催される。
植物が風に揺れる様子や虫が飛翔する動き、地面などに残った染みや風化の過程——そうした、世界に存在する無作為のありようを、幼い頃から馴染んできた「書」の手法により体現する黒瀬。2022年には、滲んで浮かび上がったような無数の点を描く「Dots」、線が繊細かつ大胆に縦横を行き交い、時に蠕動の痕跡のように形を成した「Lines」といったシリーズを展開している。
今回は、古典的な写真技法であるサイアノタイプ(鉄塩を使用し、日光で露光する印画法)を用いて、自身の描画行為を被写体にした作品を、新たなシリーズ「Sign」として発表。太陽の光に晒されることで、絵具の積み重ねとなる線や染みの実体は消え去り、画面には残像のような気配が、まだ世界に表出していない現象の訪れを告げる“兆し”として現れる。あわせて、同シリーズのもととなるアクリル絵具の作品群も展示されるため、相互を比較することで、奥行きある鑑賞体験となりそうだ。
なお、会期中には、会場の近辺を巡りながら自然の造形を見つけ、それらを筆で紙へなぞるように記録するワークショップを実施。また、黒瀬がアートワークを手がけたことのある、大阪を拠点とするアンビエントカセットレーベル「Muzan Editions」から、同レーベル共同主宰のJoshua StefaneによるEndurance、オーストラリアのミュージシャン・Marcus MillerによるOVRSCNが登場するクロージングライブも行われる。周囲の風景と音楽、黒瀬の表現が呼応し合う時間をぜひ体感してほしい。
それは たしかに描かれたはずなのに
実体のないもの。その行為は
陽の光に照らされて 消え去る。どこまでもひろがる 青い空間に
立ちあらわれた空白はこれからこの世界にうまれるだろう
あるいは かつて存在した
線や染みの気配。空っぽだと思っていたところには
無数の兆しが
満ちあふれていた。(「Sign」展フライヤーより引用)
黒瀬正剛展「Sign」
会期:2023年10月7日(土)〜22日(日)
会場:EMMA COFFEE
時間:10:00〜18:00
定休:水・木曜
問合:info@emmacoffee.com
関連イベント
ワークショップ「みる なぞる」
日時:2023年10月14日(土)14:00〜(約2時間を予定)
対象:子どもから大人まで(お子さまは保護者同伴)
定員:10名程度
参加費:3,000円(画材代込み、冊子・コーヒー付)クロージングライブ
日時:2023年10月22日(日)18:00〜
出演:Endurance(Muzan Editions)、OVRSCN(Muzan Editions)
入場料:前売・当日1,500円(1ドリンク別途)※両イベントとも予約はinfo@emmacoffee.com、またはEMMA COFFEEのInstagram、作家の各DMにて受付。代表者氏名・人数・電話番号・車での来場有無を明記の上、要連絡
大阪府豊能郡豊能町余野172-5