Silence
平田剛志(美術批評)
光や雲を見るようだ。石橋志郎の白と灰色の絵画は、画面に吸い込まれるような広がりと奥行きある静かな画面が特徴だ。
その理由は、画材である天然の鉱物や貝殻を砕いた岩絵具や胡粉のもつ「自然」の性質にある。顔料は、種類や和紙、温度や湿度、空気、描画の工程によって色味や見え方が変わる。顔料は生きた自然素材であり、絵画は環境的な存在なのだ。
本展のタイトル「Silence」で思い浮かぶのは、『4分33秒』など、音楽に自然音や環境音という概念を導入したジョン・ケージである。ケージは環境や空間にある音を通じて、Silenceの豊かさ、音の現前性や偶然性、聴覚の認識を広げた。
一方、石橋の絵画はジョン・ケージの「サイレンス」やブライアン・イーノが提唱したアンビエント・ミュージックにも通じるような環境や自然を含んだ絵画経験をもたらす。絵画の色や光は場所の天候や時間、視点によって変容する。鑑賞者は空間に響く微細な音に耳を傾けるように、空間に響く絵画の色や光の現象を見るだろう。それは絵画や顔料の探究というだけではない。画像や映像が溢れた現代において、生きている絵画と出会うその場限りの出来事でもあるのだ。
1981 大阪府豊中市出身
2005 京都市立芸術大学美術学部日本画専攻卒業
2007 同大学大学院修士課程美術研究科絵画専攻修了個展
2023「Floating」 カホ・ギャラリー(京都)
2022「Atmosphere」 ギャラリーあしやシューレ(兵庫)
2021「灰色と光」 +1art(大阪)
2019「絵画と輝度」 ギャラリーあしやシューレ(兵庫)
2019「灰色と光」 カホ・ギャラリー(京都)
2018「空間、光」 ギャラリー恵風(京都)受賞歴
2022「Kyoto Art for Tomorrow 新鋭選抜展」朝日新聞社賞
2021 令和3年度京都市芸術新人賞
2021「京都日本画新展 2021」大賞
2014「第1回 続・京都 日本画新展」優秀賞
2013 トーキョーワンダーウォール賞
Silence | 石橋志郎
会期:2023年10月18日(水)〜29日(日)
会場:+1art
時間:13:00〜19:00(最終日 〜17:00)
休廊:10月23日(月)、24日(火)
問合:06-7712-6685
大阪市中央区谷町6-4-40