大阪のアートハブ・TRA-TRAVELは、アーティスト・イン・レジデンス企画「AIRΔ」のvol.14として、プラット・ピマーンメーンを大阪に招聘し、此花のJUU arts & stayにてフードワークショップを開催する。
AIRΔ vol.14では、名古屋を拠点にアジアとのアート交流プロジェクトを実施する「SEASUN」に滞在中のタイ・ナラーティワート出身のアーティスト、プラット・ピマーンメーン(Prach Pimarnman)さんを大阪に招聘します。
ピマーンメーンは、仏教国として知られるタイの中でもムスリムが多く住む地域の出身です。自身もムスリムであり、そのルーツをテーマにした作品制作を行っています。2023年に大阪を旅行した際、日本人が経営するハラル料理店で食事をした体験が契機となり、「ハラルフード」をテーマにしたプロジェクトをスタートしました。そして11月8日から1ヶ月間、名古屋市中川区のQ SO-KOに拠点を置く「SEASUN」に滞在し、同プロジェクトを実施しています。
大阪で開催される本イベント『ハラルタイカレーをつくりながら』では、①ハラル食材を買いに行き、②一緒に調理し、③食事をともにする中で、アーティスト自身や作品、彼の文化や社会について話を聞く機会を提供します。参加者はどのタイミングで参加・退出しても構いません。(もちろん、完成したカレーだけを食べに来ていただくのも大歓迎です)
実際にハラル食材を使ったタイカレーの作り方を学び、共につくり食べることで、タイ・ナラーティワート県について深く知る機会になればと思います。ご興味のある方は、ぜひお越しください。SEASUNとの協働について
TRA-TRAVELはこれまで国外のアートオーガナイゼーションと共に、大阪でアーティスト・イン・レジデンス(AIR)を実施してきました。今年から、「レジデンス事業を通して国内のアートオーガナイゼーションをつなぐ」というキーワードのもと、日本国内の他都市や地域にあるレジデンス施設と協力し、新しい形のアーティスト・イン・レジデンスを実験的に開始しています。このレジデンスプログラムでは、関西でのリサーチや滞在を希望するアーティストを大阪に招聘し、滞在やリサーチ、発表などのサポートを行います。こうした活動を通じて、「国際的な視点から読み解かれる大阪・関西」を取り上げながら、「国内レジデンスのネットワーク」の創出を目指しています。
タイ・ナラーティワートを拠点に、作家活動及びカフェ併設のアートスペース Deʻlapae Art Space(2015 年設⽴)の運営を⾏う。2022 年にシラパコーン⼤学にて視覚芸術の博⼠号を取得し、現在はソンクラーナカリン⼤学パッターニー校で教鞭を取る。 マレー⺠族の歴史的経路に焦点を当て、現在に繋がる移⺠の歴史や、過去から現在までの⼈々の経験や記憶を集め、彫刻、映像、コミュニティ・プロジェクトなどを通して歴史的な物語の提⽰を試みる。 主な展覧会に「From Nomad to Nowhere」Warin Lab Contemporary|バンコク 2024年、「the FROZEN」SAC ギャラリー|バンコク 2024年、「タイランド・ビエンナーレ PLUVIOPHILE パビリオン」チェンライ 2023年、 「バンコク・アート・ビエンナーレ(Satu ≠ Padu Collaborative として)」バンコク 2022年
TRA-TRAVELのQenji Yoshidaによる、アーティストへのインタビュー
Qenji Yoshida(以下QY):こんにちは、プラットさん。まずは簡単に自己紹介をお願いしてもよろしいですか?
Prach Pimarnman (以下PP):私は歴史の痕跡からその断片を探るコンセプチュアルアートに関心があります。
タイの歴史におけるバンコクとナラーティワートの関係や、そこにまつわる自分の「家族の物語」、「貿易ルート」、「航海」、「土地の占領」など、過去の史実や物語などを通して、過去から現在までの人々の移住や様々な民族の関係を示す歴史へ関心があるためです。
具体的には、既製の素材とリサーチ中に出会う見捨てられた素材等を使用して、展示空間で観客がその一部となることができるようなインスタレーション作品やビデオドキュメンタリー作品などを制作しています。QY:どのようなきっかけでアーティストの道を選ばれたのでしょうか?
PP:父が絵を描くことが好きで、子どものころによく教えてくれたのがきっかけで、自然とアートに興味を持つようになりました。自分の得意なことや楽しんで取り組めることを仕事にしようと考え、自分を表現する手段としてアートを選びました。興味のある物語から作品を生み出すために、素材やさまざまなメディウムを工夫して選んでいます。
QY:作品や制作について、いくつか質問したいこともあるのですが、名古屋でも大阪のイベントでもハラルが今回キーワードになっていることについて聞かせてください。
PP:昨年(2023年)旅行で訪れていた大阪で色々なハラル料理店に行く機会があったのですが、その中で特に惹かれたのはムスリムではない日本人が経営しているハラル料理店でした。ハラル料理が様々な立場・関心を持つ人の視点で語られうることに興味が沸いたのです。そんな経験があったため、SEASUNの鈴木さんがナラーティワート県で私が運営するDe’lapae Art Spaceに来た時に、名古屋でプロジェクトをやるとしたらハラル料理店のことをリサーチしてみたいというアイディアについて話し合いました。ハラル料理店やモスクを訪れ、なぜその場所でハラル料理店を経営しているのか、その土地の人とどのような関係を築いているのかなど聞いてみたいと思ったことが契機となりました。
QY:今回、来日されてまだ間もないと思いますが、日本でのレジデンス滞在はいかがでしょうか?
PP:旅先で新しい友情に出会うことができ、元々関心がある日本という場所の初めての街に滞在することができ、作品制作に新しい視点を与えてくれてるように思います。リサーチ中にムスリムとして、また、アーティストとして友達になった人たちとの出会いや、SEASUNの鈴木さんや全ての友人たちとの出会いに感銘を受けています。
QY:今後の展望や目標などありますか?
PP:展望としては世界の色々な場所で自分の作品を展示することです。自分の関心がある物語を伝えることができ、観客にそれを観たり知ってもらったりできるからです。自分の作品群は、自分が何者であるか、世界の何に関心があるのか、自分たちの歴史はどのようなものか、そしてそれらを伝える声を表現するものだと思っています。そして作品を通して問いを投げかけることが目標です。それと同時に、作品や展示を作る過程で関わった人と友情を築くことは、自分が幸せを感じることができるもう一つの目標です。
AIRΔ vol.14 プラット・ピマーンメーン|Prach Pimarnman
フードワークショップ「ハラルタイカレーをつくりながら」日時:2024年11月29日(金)
食材の買い出し 17:00
調理開始 18:30
食事開始 19:30
※入出場可能会場:JUU arts & stay
参加費:1,000円(食事つき)/学生・こども500円
+ドリンク持参もしくは購入可
※事前予約必須 (InstagramまたはFacebookで連絡)言語:簡易な英語(簡易な日本語サポートあり)
主催:TRA-TRAVEL
共催:seasun
助成:大阪市、芳泉文化財団
協力:FIGYA
JUU arts&stay
大阪市此花区梅香1-17-20