大阪を拠点に活動するデザイナー・キュレーター・エディターである後藤哲也が、2025年3月29日(土)まで、初の個展を旭荘「ASAHISONOMA」で開催中だ。「一枚のポスターを中心にした展覧会」で、後藤が美術家・フォトグラファーの植松琢麿、映像作家の林勇気、兵庫県立美術館学芸員の小林公とのアーティストコレクティブ「 i WANT YOU あなたがほしい」として、2014年にenoco(大阪府立文化芸術創造センター)で行った展覧会のフライヤーポスターが元になっている。
築70年を超える木造2階建てアパートを改修した建物・旭荘のなかに位置するASAHISONOMAは、グラフィックデザインの展覧会を実験する場として、建築家ユニットのNO ARCHITECTSとプロダクトデザイナーの柳橋肇、後藤哲也が共同運営している。大きな特徴は、外の通りから中を覗くユニークな鑑賞体験。主にグラフィックデザインは平面上で展開されるが、ここでは建築の窓をインターフェースに、建物の内部空間に立ち上げられる展示を通して、グラフィックデザイン展の可能性を追求する。
本展を開催するにあたってゲストキュレーターに迎えられたのは、芦屋市立美術博物館学芸員の大槻晃実だ。展示を構想する上での背景やテーマについて、大槻はステイトメントとしてこうつづっている。
依頼されたときに私が考えたことは、通常一方的な情報発信のメディアであるポスターを双方向にしてみることだ。つまり、ポスターの裏側にある物事を表出させるということ。後藤が起点にしたいと考えたenoco展のポスターの裏側である展覧会ーー実際にはそちらが『表』だがーーを『ASAHINOMA』内に再構築することで、建物の表側にポスターを浮かび上がらせることを試みた。植松と林による作品は、境界面/線をテーマにつくられた作品を選んでいる。内と外をつなぐ窓には、両方向から私と小林との窓をテーマにした対話文を掲示している。(中略)これにより『わたし』と『あなた』との境界を曖昧にする『i WANT YOU あなたがほしい』というコレクティブのテーマを表現したいと考えた。
約3ヵ月というロングスパンの会期中には、アーティストの在廊やイベントも行われる予定だ。グラフィックデザインという仕事、また展覧会の魅力や制作意図などがうかがえるだろう。これらの催しは、公式Instagramで随時告知されていくという。あわせてチェックしたい。
ASAHISONOMA Vol.2
TETSUYA GOTO「i WANT YOU あなたがほしい」日程:2024年12月23日(月)〜2025年3月29日(土)
時間:10:00〜21:00
会場:旭荘「ASAHISONOMA」
旭荘「ASAHINOMA」
大阪市此花区梅香1-15-8