
ポルトガル出身で世界的に評価された映画監督、マノエル・ド・オリヴェイラの作品特集が、九条のシネ・ヌーヴォにて2025年5月31日(土)から上映される。
オリヴェイラは1908年、ポルトガル北部の都市ポルト生まれ。1931年、サイレントの短編ドキュメンタリー映画『ドウロ河』を監督。1942年には初の長編映画『アニキ・ボボ』を手がけた。アントニオ・サラザール政権による独裁体制下では企画が成り立たなかったり、発言が問題視され投獄されるなど表現活動が制限されていたが、1974年に独裁政権が終わると旺盛に作品を発表。1985年にヴェネチア国際映画祭で特別金獅子生涯功労賞を受賞するなど、高く評価された。2015年に106歳で死去。
没後10年にあたり今回上映されるのは、家族と自らの人生を辿るドキュメンタリー作品『訪問、あるいは記憶、そして告白』や、言葉、映像、音楽それぞれが自律しながら精妙かつ鮮烈に調和する『アブラハム渓谷』など5作品。初日には映画研究者・堀潤之を招いてのトークイベントも予定されている。
上映作品
『訪問、あるいは記憶、そして告白』(1982年)
1942年に建てられて以来、およそ40年間オリヴェイラが暮らしたポルトの家を舞台に、家族、そして自らの人生を辿るドキュメンタリー作品。『アブラハム渓谷』の原作者でもあるポルトガル文学の巨匠アグスティーナ・ベッサ=ルイスがテキストを手がけている。自身の死後に発表するように言付けられ、2015年にポルト、リスボン、カンヌ国際映画祭、山形国際ドキュメンタリー映画祭で上映された。『カニバイシュ』(1988年)
マルガリーダとアヴェレダ子爵の婚礼の夜。子爵は自らが人間でないことを告白する。それを聞いたマルガリーダは錯乱。厳粛な雰囲気に満ちた貴族たちの晩餐会は、驚愕の事態へと展開する。人間、動物、機械などあらゆる境界を超越し、奇想天外なユーモアが炸裂するオペラ・ブッファ(喜劇的なオペラ)映画の怪作。『絶望の日』(1992年)
19世紀ポルトガル文学を代表する小説家カミーロ・カステロ・ブランコ。葛藤と苦悩の末、拳銃自殺を遂げるに至ったその最期の日々を、手紙や新聞記事、調書などに取材し、その生家を舞台に描く。音楽にワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」と「パルジファル」を使用。オリヴェイラ作品の中で最も厳格とも評される作品。『アブラハム渓谷[完全版]』(1993年)
フローベール「ボヴァリー夫人」をアグスティーナ・ベッサ=ルイスが翻案し、原作を執筆。言葉、映像、そして音楽それぞれが自律しながら精妙かつ鮮烈に調和する「文芸映画」の最高峰。男性的な世界/権力に詩的な想像力で抵抗する、主人公エマの苦悩。ディレクターズ・カット版とも言える、本来の姿でスクリーンに蘇るオリヴェイラ映画の記念碑的作品。『夜顔』(2006年)
ルイス・ブニュエル監督作『昼顔』(1967)の登場人物たちの38年後を描く。パリで偶然再会したアンリとセヴリーヌ。アンリは真実を打ち明けるという口実でセヴリーヌを食事に誘う…。過去をめぐり立ち上がる、欲望に満ちた謎。ミシェル・ピコリが再び「アンリ」役で登場。カトリーヌ・ドヌーヴが演じた「セヴリーヌ」にはビュル・オジエが扮する。
オリヴェイラ2025
没後10年 マノエル・ド・オリヴェイラ特集期間:2025年5月31日(土)〜6月19日(木)
会場:シネ・ヌーヴォ
料金:
・『アブラハム渓谷』以外の作品
一般1,900円、シニア1,300円、学生・会員1,200円、ハンディキャップ・高以下1,000円
・『アブラハム渓谷』
一般2,200円、シニア1,800円、学生・会員1,500円、ハンディキャップ・高以下1,300円
※鑑賞7日前から窓口およびオンラインにてチケットの購入が可能※上映スケジュールの詳細はシネ・ヌーヴォWebサイトを参照
トークイベント
5月31日(土)17:10『訪問、あるいは記憶、そして告白』上映後
ゲスト:堀潤之(映画研究者/関西大学文学部教授)
大阪市西区九条1-20-24