
アトリエ三月では、笹野ゆたか個展を開催いたします。
本展は「FLAG2025」にてFLAG賞を受賞したことを記念して開催されるものです。
笹野との最初の出会いは、2021年に福岡でアトリエ三月が企画したグループ展でした。当時学生だった笹野がポートフォリオを携えて会場を訪れてくれたことを、今でも覚えています。若々しく、荒さや迷いも抱えながら、それでも画面から強いエネルギーが溢れ出すような作品群でした。
今回の個展では、学生時代から特徴的だった弾けるような色彩は抑えられ、絵の具の凹凸も減少しています。また、画面に頻繁に登場していた笹野自身の“アバター”も、姿を現したり消えたりと、その存在は揺らぎを帯びています。
その変化のなかで注目すべきは、主題であるスマホ写真をキャンバスプリントに転写し、曖昧な記憶をなぞるように油彩やアクリルを重ねる手法です。大学の卒業制作として描かれた北九州・旦過市場の風景は、その後ほどなくして二度目の火災に遭いました。火災という出来事のショックは大きいものですが、そもそも私たちは、つい最近まで建っていた建物の姿さえ、記憶の中では驚くほど曖昧です。
笹野は、自らが見た風景を再びたどることで、その曖昧さそのものにペインティングとして触れようとしています。さらに近作のキティ人形を描いた四点では、自分ではなく他者の記憶に触れるような制作へと展開し、作品世界に新たな広がりをもたらしています。
ますます進化する笹野ゆたかの現在地を是非ご覧ください。
アトリエ三月
原康浩–
2000年福岡県生まれ
2024年九州産業大学芸術学部卒業自我、キャラクター、風景、記憶について考えながら描いています。
自分が出かけた先や、日常の中で印象に残ったシーンを撮影した写真をキャンバスにプリントし、その上から油彩でペイント。「鮮明な記録が曖昧な記憶」に変化していく様子を表現しています。
また、この作業は日常とは災害や事故、戦争などでたちまち様変わりする、昨日と同じ今日が来ることはなく、永遠に変わらないものはこの世に存在しないのだ、ということを認識する作業であるとも感じています。
世界は理不尽や残酷なこともあるけれど本来、世界というものは美しいことを忘れないでいたいです。展示
個展
2022年 A.S.C.Connecting Artists/博多阪急8階(福岡)
2025年 「笹野ゆたか展2025」/esコンテンポラリー(大阪)、「面影を象る」/IAF SHOP*(福岡)グループ展
2023年 「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ」/Artas Galley(福岡)笹野ゆたか・林美紅二人展
2024年 「Newcomers」/SUNABA GALLERY(大阪)グループ展
2025年 「散らかしガーデンプレイス」/アトリエ・サロン-コウシンキョク(東京)受賞歴
2024年 アトリエ三月ART competition「FLAG 2024」大賞受賞
会期: 2025年12月5日(金)〜 16日(火)
会場:アトリエ三月
時間:15:00〜20:00、最終日は19:00まで
休廊:水・木曜
大阪市北区中崎西4-2-9







