
美術作家のしまだそうと西嶋みゆきが制作スタジオ兼オルタナティブスペースとして運営している大阪・今津の建物「cumonos(クモノス)」にて、全館を使用する企画展「あったこと・間・遠くをみる」が、2026年3月7日(土)より開催される。
本展は、2024年にcumonosで個展を開催した美術作家・山本駿平が企画。
山本は2001年兵庫県出身、大阪府在住。2025年近畿大学文芸学部造形芸術学科油彩画ゼミナール卒業。
ドローイングや油彩、漫画などを制作・発表するほか、自主制作本をつくりコミティアに出展している。
「絵」というものがいったい何であるのか。時にカテゴライズされ、描く側も見る側も何らかの分類やジャンルの枠組みを通してその「絵」を表現/理解しようとする。そんな場面に戸惑いを覚えながら、「いい絵をみたいからいろんな絵をみて、いい絵が描きたいから絵を描いている。結局のところ、確信を持って言えることはそういうことだけなのに、(一部抜粋)」と話す美術作家の山本駿平さんが企画する展覧会。
この展覧会ではZINEや個人誌などの自主制作本を商業出版の規格やカテゴリに縛られず「絵」をありのままに表現できる最適な媒体として位置づけます。そのような本のようなものも含め、作家ごとに異なる背景や解釈で作られた多様な作品を一堂に集めることで、既存の言葉や分類とは異なる視点から「絵」の輪郭を探求しようと試みます。
展覧会名は、地球規模の連携によってブラックホールの撮影に成功したプロジェクト「イベントホライズンテレスコープ」に由来しています。望遠鏡同士をつなぐことで、可視と不可視の境界(事象の地平線)を観測しようとしたその姿勢を、「絵」という得体の知れない存在への探求に重ね合わせ、出来事や人、視線の「間(あいだ)」にある関係性を通じて、遠く不可視なものを見ようとする人間の意志と、「絵」と「絵を描きながら生きる人々」の確かな在り方を浮き彫りにすることを目指しています。
出展作家10名の作品、自主制作本に加え本町で本屋/galleryを営むCalo Bookshop and Cafeさんのセレクトによる様々な本も合わせて展示・販売します。
ぜひ会場でご高覧いただけたら幸いです。(cumonos)
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『あったこと・間・遠くをみる』
この企画では、さまざまな「絵」とよばれるものを一つの空間に集めることで、言葉やカテゴリでは捉えきれない「絵」と、「絵を描いていくこと」それぞれの在り方の一つを示す場をつくることを試みます。
「絵画を描かれているんですね」と聞かれて、「そうです」以外の答えを持ち合わせていない時、私はいつもどこかしっくりこないのです。絵画・漫画・イラストレーションなど、絵の種類やカテゴリを表す言葉はたくさんありますが、いつもこういった言葉には違和感を抱いてきました。人間が、余りにも多くのかたちを受け入れる(受け入れてくれる)絵を知るために、分析、分類、整理して造られたこれらの言葉は、今ではなんだか、余計なものがいろいろこびりついているように感じます。
いい絵をみたいからいろんな絵をみて、いい絵が描きたいから絵を描いている。結局のところ、確信を持って言えることはそういうことだけなのに、言葉の世界で生きざるを得ない中で、いつもそのことを忘れてしまいそうになります。
さまざまな絵が壁に並び(あるいは棚や床にも)、言葉やカテゴリによって同化も分別もされず、得体の知れない「絵」としてそれぞれの座標を獲得していく。作家それぞれの全く異なる絵が、ただそのまま共存し集まることで、「絵」というものの輪郭が浮かび上がり、捉えどころのない「絵」というものに近づけるのではないかと考えています。
また今展では「絵」のひとつの形として「自主制作本」にも注目し、「絵」とは何かを探っていきます。
自主制作本とは、ZINEや個人誌、リトルプレス、私家本など、いろいろな呼び方があります。また、それぞれ違いや定義が昨今盛んに議論されており、この媒体は一つに定義づけることが難しい存在だと言えます。商業出版が編集方針や規格サイズに従うのに対して、(反発ではなく、本来は憧れから生まれたものとしての)自主制作本は、既存の型やサイズに縛られることなく、言葉やカテゴリで枠に収められない(あるいは収まることを望まない)ものでも、一つのかたちにすることができる点が特徴だと思っています。そう考えると、「絵」という得体のしれないものを扱う際に、自主制作本は、作家の絵をできる限り、誇張もせず取りこぼしもしない媒体として、最適なものの一つであるように思います。
今回参加いただく作家が、本のようなものを制作した(もしくは、結果的に本のようなものをつくった)経緯や理由は問いません。作家によって、自主制作本というものに対する扱いや考えが全く異なっているからこそ、自主制作本も絵と同様に、言葉の分析、分類、整理の形式にとらわれない媒体としてその魅力を発揮できるはずです。
さまざまな出自を持つ自主制作本が並び、そして、それらを自由にみる/読むことができる場をつくることで、「絵」というものの輪郭を、別の視点からも探ってみたいと思います。
展覧会名の『あったこと・間・遠くをみる』は、「Event Horizon Telescope(イベントホライズンテレスコープ)」に由来します。
「Event Horizon Telescope」とは、世界中の電波望遠鏡を連携させて、地球サイズの仮想望遠鏡をつくり、光ですら脱出できなくなるブラックホールの境界面(event horizon)を観測する国際的プロジェクトの名称です。そこを越えると、もはや外部からは何も観測できない“境”を見ることを目指しています。
はるか遠くにある、みえるものとみえないものの間に迫ろうとするこのプロジェクトの姿勢と、「絵」という得体の知れないものを知ろうとするこの企画は、どこか通じるまなざしを持っているように思います。
このような考えの下、展示された作品により、「絵」というものを意識できる状況をつくり、いまこの世界の、「絵」と絵を描きながら暮らしている人たちの在り方を強く感じられるような展示にしたいと思います。(企画 山本駿平)

あったこと・間・遠くをみる
参加作家:入夏七海、 大森有花、 佐藤静紅、 清水彩瑛、 武田麻季、 でっかい火、 遠山奈実子、 辺見静華、 六根由里香、 山本駿平、 Calo Bookshop and Cafe(出店参加)会期:2026年3月7日(土)〜23日(月)
会場:cumonos(クモノス)1・2・3F
時間:13:00〜19:00
休廊:火〜木曜
料金:入場無料
大阪市鶴見区今津南3-1-14


