日本では“ミニシアター”の呼称で親しまれるアートハウス。作品上映を通じて多様な映画体験・文化を育み続けるその「場」について考える連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」が、1月30日(土)より全国18映画館で開催される。
本講座は映画配給会社の東風が企画・運営。アートハウスの歴史を彩ってきた傑作を「ネオクラシック(新しい古典)」と称し、全館7夜連続日替わりで同時刻に上映する。作品ラインナップにはビクトル・エリセの『ミツバチのささやき』、ヴィターリー・カネフスキーの『動くな! 死ね! 甦れ!』、アントニオ・レイス、マルガリーダ・コルデイロによる『トラス・オス・モンテス』、エリック・ロメールの『緑の光線』、フレディ・M・ムーラーによる『山の焚火』、佐藤真が手がけた『阿賀に生きる』、フレデリック・ワイズマンの『チチカット・フォーリーズ』が並ぶ。
また上映後は、2000年以降にデビューした濱口竜介や三宅唱、山下敦弘、小田香、深田晃司、横浜聡子、小森はるか、想田和弘といった気鋭の映画作家が毎夜入れ替わりで講師となり、ライブ中継のトーク・レクチャーに登壇。作品の魅力や自身が受けた影響などを語り、全国の観客の質問を受け付けながら、アートハウスについて知見を交わす。大阪の上映館はシネ・ヌーヴォ、第七藝術劇場。
参加映画作家のコメント
映画館でのみ感知することができるような、映画の「ささやき」があります。
それを殊更聞こえやすくすることはできませんが、一緒に耳を傾けようと誘うように話したいなと思ってます。
濱口竜介(映画監督)学生時代、これと決めた特集上映に日参してはその晩、映画日記をつけたり、友人と朝まで長話をした。
そうやって何度も反芻したあの場面やあのカットに今でもふと救われたり、悩まされている。
三宅唱(映画監督)『動くな、死ね、甦れ!』をどう言葉で表したらいいのか現時点ではさっぱり分からないのですが、とにかく一人でも多くの人に観てもらい映画の持つ力を体感して欲しいです。
山下敦弘(映画監督)二十歳を過ぎてはじめてシネコン以外で映画を観た。
大丈夫、世界にはまだ余白があった。
このだるさからいつか抜け出し、もう少し遠くまで歩けるかもしれないと、スクリーンを見つめながら思った。
小田香(映画作家)中学3年生のときにテレビで見た一本のヨーロッパ映画に衝撃を受けて自分の人生は激変しましたが、大人になりそれをミニシアターのスクリーンで見直したとき、その作品の真価をようやく知ることができました。
画集に印刷された絵画と実物のそれが違うように、映画もまた映画館で見てこそ味わい尽くせるものだと思っています。
深田晃司(映画監督)いい映画をみた時、衝撃や刺激を受けるというより、息をするのが、生きるのがほんの少し楽になるという表し方が自分にとってはふさわしい。
それは既にある理解や感覚を超えた世界をみせられたことに不安になるからではなく安堵するからに他ならない。
横浜聡子(映画監督)何をどう撮ればいいのかわからなくなったとき、20年前につくられた一本の映画と出会い、背中を押されました。
何年経っても現在を映し出す作品たちが、きっとこれから出会う人たちの未来を切り開いてくれるのだろうと思います。
小森はるか(映像作家)映画館の暗闇を一歩出たときに、世界の見え方が一変してしまう。
アートハウスで、そういう体験を何度もしてきた。
僕が映画作りで目指すのも、観客にそういう体験をしてもらうことである。
想田和弘(映画作家)(公式Webサイトより引用)
連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」
期間:2021年1月30日(土)〜2月5日(金)
料金:30歳以下1,200円、31歳以上1,800円
*上映館およびタイムテーブルなどの詳細は公式Webサイトを参照
*名古屋シネマテークでは2/6(土)より開催