アーティスト集団「オル太」とアーティスト・原田裕規の新作展が東京・デカメロンにて開催される。
2009年に結成されたオル太。井上徹、川村和秀、斉藤隆文、長谷川義朗、メグ忍者、Jang-Chiの6名からなり、都市やそこに根づく空気感のリサーチを軸とした演劇やゲームなど、自身らの身体を投じたパフォーマンス作品を展開している。それらは創造行為や人間の根源的な欲求、感覚への問いかけとして続けられてきた。今回は、本展に向けて行われた都市のリサーチをもとに、“演劇とインスタレーションを踏襲する新たな形の作品”が発表される。
一方の原田裕規は、心霊写真やオープンワールドゲームといった視覚文化をモチーフに、さまざまなメディアを横断する表現活動を行っている。出品されるのは2019年から続く「One Million Seeings」。コミュニティや歴史からも見捨てられた市井の人々の写真群を再結晶化させる映像シリーズの新作が公開される。“「イメージの倫理」を模索する”原田の作品は、自身の身体や認知の限界に挑みながらつくられていく。
双方の邂逅というだけでも興味をそそられるこの企画、キュレーションは大阪を拠点に活動する檜山真有が手がけた。展覧会に冠した「オカルティック・ヨ・ソイ」も檜山による造語で、こちら側に手を差し伸べてくるホラーで軽妙な響きは、これから赴く空間の懐深さを予感させる。
オカルトはラテン語: occulere の過去分詞 occulta(隠されたもの)を語源とし、目で見たり、触れて感じたりすることのできないことを意味します。ヨ・ソイ(Yo Soy)はスペイン語で「私は(I am)」という意味です。自分の輪郭というのはヨソ(余所)からの見えと、ソイ(素意)により出来上がる。そこに偶然性や超自然的現象などの目で見たり、触れて感じることのできない現実と想像のはざまを往来して立ち現われるものから自分の輪郭を見出す、という意味が込められています。(「オカルティック・ヨ・ソイ」展プレスリリースより)
会場は昨夏、新宿歌舞伎町にオープンしたアートギャラリー「デカメロン」。ボカッチオの小説『デカメロン』になぞらえたバーを併設し、会期中には本展にあわせたオリジナルモクテルも。
ともあれ、まずは本展Webサイトにアクセスしてみることをおすすめしたい。
オル太
2009年に結成した6名(井上徹、川村和秀、斉藤隆文、長谷川義朗、メグ忍者、Jang-Chi)によるアーティスト集団。創造行為、ひいては人間の根源的な欲求や感覚について、自らの身体をパフォーマンスという形で投じ、問いかけている。近年参加した主なパフォーマンスや展覧会に、『超衆芸術スタンドプレー』(ロームシアター×京都京都芸術センターU35創造支援プログラム”KIPPU”、2020)、「青森EARTH2019:いのち耕す場所–農業がひらくアートの未来」(青森県立美術館、2019)。
https://olta.jp/原田裕規
1989年山口県生まれ。アーティスト。社会のなかで広く認知されている視覚文化をモチーフに、人間の身体・認知・感情的な限界に挑みながら、現代における「風景」が立ち上がるビューポイントを模索している。バブル期に一世を風靡したラッセン、日本でオカルトブームを牽引した心霊写真、オープンワールドゲームなどに用いられるCGIに着目しながら、実写映像、パフォーマンス、CGI、キュレーション、書籍など、多岐にわたる表現活動を行っている。主な個展に「アペルト14 原田裕規 Waiting for」(金沢21世紀美術館、2021年)、「One Million Seeings」(KEN NAKAHASHI、2019年)、編著書に『ラッセンとは何だったのか?』(フィルムアート社、2013年)など。東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了。http://www.haradayuki.com檜山真有
1994年大阪府生まれ。同志社大学文学部美学芸術学科卒業、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科アートプロデュース専攻キュレーション領域修了。修士論文テーマは「セス・ジーゲローブのキュレーションの技法に関する研究」。展覧会企画に、2018年「Pray for nothing」(「ゼンカイ」ハウス、兵庫)、2019年「超暴力」(山下ビル、愛知)など。
会期:2021年10月29日(金)〜12月12日(日)
会場:デカメロン
時間:火~金曜16:00~26:00、土曜13:00~26:00、日曜13:00~20:00
料金:500円
休廊:月曜 ※臨時休業あり。詳細はデカメロンWebサイト・SNSにて
助成 公益財団法人朝日新聞文化財団、公益財団法人小笠原敏晶記念文化財団
デカメロン
東京都新宿区歌舞伎町1-12-4 2F