「明日はレンバイに行くよ!」
「レンバイで仕入れたお野菜がメニューに登場します」
SNSを眺めていると、飲食に携わる活動をしている方や、食に関心のある人たちの投稿に「レンバイ」という言葉を見かけることが増えてきた。調べてみると、レンバイとは「オーガニック連売所 」の略称のようだ。大阪近郊における食の地域自治とオーガニック食材の流通拠点をつくるため、FOOD ORCHESTRA(旧五ふしの草あべの店)に、独立系の八百屋が集い開催している直売所だという。
レンバイは、奈良や大阪周辺の有機農家と連携し、地域循環を目指して活動している「五ふしの草」代表の榊原一憲氏を中心に、「大阪とその周辺都市で、独立系の八百屋が集まることで、オーガニックの新しい流通の仕組みをつくれないか?」という想いのもと、2022年に「オーガニック連売所準備会」を発足し、2023年より本格始動した。現在レンバイは、五ふしの草、めぐる八百屋オガクロ、honey bee、MiKAN屋の4件の小さな農家とのつながりを大切にした野菜を扱う八百屋と、FOOD ORCHESTRA、マエムキスーツ、みくり食堂の3軒の店を中心に毎週火曜日10時から13時まで開催されている。
それぞれのInstagramではレンバイ当日に並ぶ食材の告知や、個々の活動、食材にまつわるエピソードが綴られている。投稿されている写真の、直売所の楽しそうな雰囲気と美味しそうな食材に惹かれ、筆者は2023年2月某日にはじめて噂のレンバイへと足を運んだ。
会場となるFOOD ORCHESTRAは阪堺電車・東天下茶屋駅から徒歩3分ほどの場所にある。「五ふしの草」が、あべの店として営業していた場所を2023年7月にFOOD ORCHESTRAが譲り受けた(オープンについてのニュース記事はこちら)。軒先に「オーガニック連売所」と書かれたかわいらしい看板が立っており、店の内外に並んだブースにレンバイメンバーが立ち、野菜やグローサリーの販売を行っている。
並ぶ野菜は農薬、化学肥料、除草剤を使用せずに育ったもの。のびのびと育った野菜は瑞々しく、そのままでも美味しそうだ。品目はその時に採れる旬の野菜に限られているが、量販店やスーパーマーケットでは見かけることの少ない品種の野菜と出会えるのも嬉しい。午前中に着いて、レンバイメンバーからおすすめを教えてもらい、その野菜にまつわるエピソードやおいしい食べ方を聞いているうちに、あっという間に時間は過ぎていく。みくり食堂のおにぎりやにゅうめんを昼ご飯に食べ、野菜やグローサリーでいっぱいになったエコバックを抱えて、筆者は大満足の気持ちで帰路に着いた。
その後も何度かレンバイへ足を運んだ。はじめて訪れたときは、イベントに参加するような感覚だったが、毎週開催されていることで、徐々にレンバイで買い物をするという選択肢が日常のものになってきた。毎週その時間にいけば、信頼のおける農家さん・八百屋さんのおいしい食材を買うことができるのは嬉しい。
レンバイに心を惹かれる理由は食材そのものの魅力だけではない。オーガニック食材をただ手に入れるだけならば、最寄りのスーパーマーケットでも事足りるかもしれないが、レンバイに訪問することで、食に関する学びがあることが一番のポイントだと筆者は感じている。
たとえば、店先に並ぶさまざまな品種のレタス。一つひとつ違いを聞いてみると、火を通すとより甘くなるものや、キャベツの代わりに使うとジューシーな餃子になるというおすすめの食べ方など、八百屋さんならではの知識や知恵を話してくれる。目の前に並ぶ食材を手に取って話を聞き、その魅力を引き出すアイデアを教えてもらうことができるのは、直接顔を合わせて購入するレンバイならではの風景だ。
最近訪問したときに、「今日ニンジンある?」という声が耳に入ってきた。この日は8月下旬で、その季節にはニンジンの収穫が難しいということを筆者はこのときはじめて知った。スーパーマーケットでは、年中手に入るニンジンだが、オーガニックの流通ではそういうわけにはいかないようだ。では一体いつが旬なのか、関西の風土と合わないのだろうか、スーパーの流通はどうなっているのだろうかと、いくつか頭に疑問が浮かぶ。こういった疑問の種を辿っていくことで、知らなかった世界が広がっていく。
もうひとつ、筆者が魅力に感じているのは、レンバイで出会う人たちだ。レンバイメンバーの人柄や彼らの会話からは、食や人に対する深い思いやりが感じられる。
「このトウモロコシ、粒が揃っていてすごいんです。丁寧に育てられているんですよ」
「台風後に収穫量が減ったけれど、こんなにもたくさん届けてくれたんですよ」
言葉からは、野菜に込められた農家の努力や思いが伝わってくる。目の前の食材に、普段知ることのないストーリーが重なっていくことで、「ぜひ食べてみたい」「大切に使いたい」という意識が高まり、そして何より「応援したい」という気持ちが芽生え、レンバイへまた訪れたいと思わせてくれるのだ。筆者が何度か訪れた間にも、レンバイに惹かれた飲食店や消費者が増え、コミュニティがじわじわと広がっていくことを感じられた。
「オーガニック」という言葉に、敷居を高く感じる人や関心がない人も少なくないと思う。しかし、レンバイの和気あいあいとした雰囲気やメンバーの人柄が、訪れる人たちとフラットな関係を築いており、この場所が誰に対しても開かれたマーケットであることを感じさせられた。さまざまな価値観を共有する多様性の時代と言われている昨今。「食」を取り巻く意識も同様に、オーガニックの多様な知識や思想、食材のあり方についてもおおらかに受け入れ、日々の暮らしのなかで当たり前の選択肢のひとつになっていってほしいと思う。
実際に集い、直接話を交わすことの大切さをじんわりと感じることのできるマーケット。これからも応援しながら、筆者自身も食に対しての意識を深めていきたい。
五ふしの草(奈良)
農を土台といた地域循環を求めるファームスタンドと小規模有機農業の組合です。めぐる八百屋オガクロ(兵庫・宝塚)
小規模農家さんたちが農薬や化学肥料に頼らず、自然に向き合いながら育てた野菜や加工品を扱う八百屋です。honey bee(南大阪)
店舗は持たず大阪近郊の農家さんのお野菜を移動販売で地域の方々にお届けしています。MiKAN屋(東大阪)
「人」にフォーカスしながら、農薬や化学肥料に極力頼らないナチュラルなウマイヤサイを扱う八百屋。日々のごはん みくり食堂。(兵庫・池田)
ほっと自分を取り戻せるごはんがあれば、世界を変えなくて良い。ささやかで豊かな暮らしをと、ごはんを作っています。maemuki suit!(大阪)
オリジナルタオル生地から作る、斬新で最高な肌触りのウェアや、赤ちゃんのおくるみ、リユースできる野菜の保存袋、廃棄野菜から染料を作り生地を染め、環境に配慮し、持続可能なものづくりを目指しています。FOOD ORCHESTRA(大阪)
“毎日のおいしいを奏でる” フードオーケストラはシンプルで安心なものを食卓へお届けするグロサリーストアです。
会場:FOOD ORCHESTRA
日程:毎週火曜
時間:10:00〜13:00