「#こっそりひとりでしていること」「#だれかコレ発明してくれ!」などのワードがテーブルの上に置かれている。「#趣味移動」に至っては、私のこと?かとドキッとさせられた。40名ほどの参加者が、それぞれ気になるワードのまわりに集まって誰からともなく語りはじめている。
イベント「喫茶シランケド」は、2023年5月27日(土)に、心斎橋パルコ内にあるコワーキング兼レンタルスペースSkiiMa SHINSAIBASHIで開催された。主催は株式会社ロフトワーク。さまざまな企業や教育機関、行政や地域の課題と向き合いながら、関わる人々の創造性を生かすプロジェクトを行っている会社だ。
“堅苦しいことはおいといて、面白そうやし繋がりましょうやと、人と人が出会う場所”というコンセプトのイベントは、みんな元々知り合いだったの?というような、始終和やかなムードのなか進められた。
実践者が語る「場づくりの面白さ」って?
2回目の開催となる今回は、ゲストにアサダワタルさん氏を迎えた。テーブル「#“場”ってなんでしょう?」で、アイスブレイク的にはじまったのは、マスター4人のシランケドトークだ。
マスター全員が場づくりの実践者。過去の体験を基にした対話が繰り広げられる。アサダワタルさんは場づくりの先駆けで、「住み開き」という言葉を生み出した張本人でもある。
「スタートは新世界(現在は釜ヶ崎)のココルームです。アートなどに共感できる人を集めたいという想いからはじまったのですが、いざやってみると、日雇い労働者や近所のおっちゃんらも集まるようになりました。ほんとたまたまの出会い。喋ってみるとめちゃ面白くて(笑)。公園デートしたり、ポエトリーリーディングの作品をつくったりと一緒に活動するようになりました」とアサダさんは振り返る。
「いろんな人が集まる空間にしたい、と考えていたとしても、“いろんな人”ですら、自分のなかでしか想定できていないことかもしれません。呼んでもない人が来て、どうやってきたん?というような状況が面白い。固定概念が崩れて、偶発性が生まれる空間づくりに魅力を感じます」と続けた。
「わかります」と応じたのは、ロフトワークディレクターの服部木綿子(もめ)さん。数年前まで岡山県の田舎で温泉ゲストハウスの女将をしていた方で、生活をオープンにブログに綴り、宿そのものを暮らしと一体化して宿泊者を受け入れてきた。
「場を設けて、そしてそれを開いて、自分の知らない世界と他者の世界をつなぐことが場をつくる面白さだと思います。対話の積み重ねを繰り返して、結果的に何か生まれていると良いな〜くらいの感覚で接するのがちょうど良いかもしれないですよね」ともめさんは微笑んだ。
モチベーションさえあれば、場所なんていらない!
場づくりをはじめるときに、真っ先にぶつかりそうな問題について話が展開した。「場所をつくったりレンタルするお金がないからできない、というのではなく、できることからはじめることが大切かもしれません。あるものをまず使うこと。さあ、自分の家で何ができる?という視点でしょうか」とイベントオーガナイザーとして活動してきた小堀玲奈さんが話す。
参加者のなかには頷いている人もちらほら。普段の活動を振り返ってみて、納得しているのだろうか。「場づくりをはじめたはいいけれど、知らず知らずのうちに目的が壮大になりすぎているケースも見かけません?」と、小島和人さんからひとつの問いが投げかけられる。
「とにかく自分事であり続けることって、大事かもしれないですよね」とアサダさん。そして、「最近コミュニケーターのような役割の方も増えています。たとえそれが仕事だったとしても、自分のプライベートに絡めてもいいと思えるような、自分事になれる余白を残しておくことも必要かも」ともめさんが続ける。
トークを聞きながら、しげしげと頷くメンバーにいつしか私も混ざっていた。確かに、これまで接してきた魅力的な場には、生き生きとしたエネルギーが宿っていた気がする。“こんな場所が欲しいんだ”と、自分事で関わっている人が多かったからなのかもしれない。
マスター4人のトークが終わると、参加者が思い思いに集まり、話し合うフリーセッションへ。贅沢に2時間程用意されており、さまざまな議論や雑談が繰り広げられていた。私もいろんな会話をしたし、聞いた。場づくりをはじめようとしている人、すでにはじめている人など、目的も年齢も多種多様。参加者に通ずる唯一の共通点とすれば、“人に興味津々!”というところだろうか。
最後になったが、このイベントの大事なワードに「シランケド」がある。関西人ならではの“瞬間的なお節介”を表した唯一無二の言葉だ。人と人とのつなぎ役になることを、ある意味無責任にやってみること。スパイスを混ぜる感覚で、場の編集を楽しんでみるのがよさそうだ。きっかけづくりそのものに意味があるんだろうな、しらんけど。
会期:2023年5月27日(土)14:00-17:00(14:00受付開始)
ゲスト:アサダワタル
参加費:無料
共催:SkiiMa SHINSAIBASHI、株式会社ロフトワーク、FabCafe Kyoto