大阪発ロックデュオ・あふりらんぽのボーカル/ギター、ONI。アコースティックギターの弾き語りソロでも活動する彼女が、最新作『IKIMONO』のレコ発ライブをやるということで、2024年3月29日(金)に堺FANDANGOへ行ってきた。
ソロ名義では3作目、5年ぶりとなるアルバム『IKIMONO』のことは、フォローしているONIのInstagramアカウントで前々からメンションがあって気になっていた。というのも、このアルバム。昨年中にクラウドファンディングで制作費を募り、見事に目標金額を達成させたというドラマチックなスタートを切っていて、アルバム制作前からの盛り上がりに加え、完成後は日本各地でレコ発ライブツアーを敢行するという大プロジェクト。さらに今回のライブの直前に収録曲「OH!茶!(feat.鎮座DOPENESS)」(監督:Bemnmn)のMVが公開されたのだが、これが“め茶め茶”いい。
大阪のレコ発ライブでは、ONIと鎮座DOPENESSが生共演。「チャチャチャチャ」とスキャット風に歌いながら、ポップなメロディーが病みつきになるこの曲の初披露ということで、この日を“め茶め茶”楽しみにしていた。
会場に入ると、DJブースでモジャモジャ頭のDJのこぎり火星が異国感漂うアッパーな選曲をしている。一緒に連れていった2歳の息子も楽しそうに踊りはじめ、リズムに乗りながら続々とお客さんが入ってくる。上半身裸の少年、犬、子ども、仕事帰りのサラリーマン、赤と青のアフロを被った女性たち……かなり濃い客層だ。
出店ブースの方をぐるりと見渡すと、ONIの長女と小学生くらいの女の子が手づくりのチュロスやスコーンを破格の300円で売っている。滋賀からやってきたというカレー屋「シバスパイス」がスパイス臭をプンプンさせている横では、堺にある居酒屋「犬吉」の店主が寿司を握り、それらにカメラを向けるONIの伴侶でありカメラマンの佐伯慎亮。そこにONIが「来てくれてありがとうなー!」と来場者に次々とハグしながらウロウロと歩き回っている。360度見回す限りカオスなスタンバイ態勢が整いはじめたところで、ONIと新米マネージャーことCAP38がステージに立った。
開会の挨拶をサラッと終えると、そのままビリー・アイリッシュのオリジナルの替え歌を熱唱しだす新米マネージャー。もちろん、この曲はアルバムには入っていない。マネージャーによる前座という前代未聞の展開にもかかわらず、拳を上げてイエーイ!と盛り上げるあたりは、さすが大阪のお客さんである。
盛り上がってきたところで、ゲストの鎮座DOPENESSが登場。なんと大分から車で8時間かけてやってきた今日このライブの日が、自分の誕生日であると告げ、この日リリースされたばかりの新曲「20023」を初披露。缶ビールを飲みながらラップするチルスタイルと、都会的なビートが心地いい。
そして、いよいよメインのONIバンド。「ゆっくり座って聴いてな~」「寿司食った?」と、ONIが一人ひとりに話しかけるようなトーンでMCを挟みながら、アルバム『IKIMONO』からしっとりした弾き語りの曲が続く。バックには、子を前抱っこしながら鍵盤ハーモニカを弾く淡路翔子と、ギターを弾く宮本章太郎。そしてその足元には犬が心地よさそうに寝ている。
ピンクヘアのパンクな外見に、透き通る美しい歌声。「ありのままでいいんだよ」と歌う歌詞にも説得力が増す。イガキアキコ、稲田誠、山内弘太、ワタンベとアルバム参加ミュージシャンが次々と登場し、ステージは華やかに、音にも重奏感が増し、女性たちの多くが感動の涙を流していた。
そこに、ONIとユニット・THE 子を組むKoo*neeがシバスパイスのスパイスナッツを食べながら登場。空気感がガラリと変わる。サウンドチェックが2時間押したとONIをなじり、やしきたかじんの「なめとんか」を熱唱。コント風の2人のゆるゆるライブに、泣いていたはずの女性たちも大爆笑。
泣いたり笑ったりしながら、あっという間にライブも終盤。ONIが第2の拠点とする淡路島を歌った曲「ヒーマカリーバ」ではゲストのトンチがスチールパンで共演。
トンチの美しいコーラスも加わり、楽園にいるようなあたたかさが会場を包み込む。どういう意味かはわからなくとも「ヒーマカリーバ!」と誰もが歌いたくなるキャッチーな楽曲。ONIもミュージシャンも観客も出店者も、みんなで「ヒーマカリーバ!」と大合唱して、音楽フェスのラストシーンのような盛大なクライマックスを迎えた。
そして、アンコールは「OH!茶!」。鎮座DOPENESSの誕生日をお祝いするサプライズもあり、会場はピースフルな一体感に包まれる。つくり込まれたライブではなく、ONIの即興的な感覚に委ねている部分が大きいのだろう。その日はじめてあった隣の人とも気軽に笑い合えるライブの空間が出来上がり、誰もが自然体で楽しんでいたように思う。
ライブが終わったあとも、興奮冷めやらぬ会場でひとり弾き語りを続けていたONI。全身全霊で音楽に打ち込む彼女の爆発的なエネルギーはどこから来るのだろうといつも思う。歌声を目の前で聴いていると、そのエネルギーが伝播してなのか、スッと魂が生き返っていくようだった。ONIという生き物の「証」は、こうして私たちの前で歌い続けることにあるのかもしれない。
ONI『IKIMONO』レコ発TOUR!!
日時:2024年3月29日(金)18:30開場、19:00開演
会場:堺FANDANGO
料金:前売3,000円、当日3,500円(ともにドリンク代別途)出演:ONI band(ONI g.&vo./稲田誠 bass/ワタンベ drs./イガキアキコ vin.)
ゲスト:鎮座DOPENESS、トンチ、山内弘太、宮本章太郎、makiko&TAKKUN(ダンサー)、Koo*nee
FOOD:犬吉、シバスパイス
新マネージャー挨拶:CAP48
DJ:のこぎり火星