![REPORT|Yukawa-Nakayasu「薫りのささやきと」](https://erkd9564xmk.exactdn.com/views/uploads/2024/04/26ba33077f97b1d05611b4b723bbb6a7-1536x1024.jpg?strip=all&lossy=1&quality=90&webp=85&avif=50&ssl=1)
大阪を拠点に国内外で活動しているYukawa-Nakayasuの個展「薫りのささやきと」が、2024年1月19日(金)から2月17日(土)まで、西成区山王のイチノジュウニのヨンおよび、同店の向かいに位置するSUCHSIZEにて開催された。
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イチノジュウニのヨンは、動物園前駅から徒歩5分、西成区山王にある酒屋とその倉庫を改装したスペースで、金・土曜日に営業。まずは酒屋で受付をして会場へ。展示を目的に訪れた来場者はもちろん、酒屋の利用者が展示に興味を持って回遊する流れもある。
Yukawa-Nakayasuは、コロナ禍が本格化した2022年から、毎年大阪市内で展示を行ってきた。4回目となる本展では、過去3回の展示で視覚化した、「コロナパンデミックが浮き上がらせた人々の根源的な営み」を引き継ぎながらも、新たにポストコロナ時代における脱人間中心的な視座を社会に提案し、鑑賞者とともに未来への洞察を深めるきっかけをつくろうと試みた。
これまではインスタレーションなど空間表現が主だったが、今回は額装した抽象度のある小作品が多い。そうした作品づくりには、鑑賞者自身が購入して日常へ持ち帰り、身のまわりのさまざまな場面に展示することで、作品と向き合い続けることのできるプロセスが意識されている。「お守り(シンボル)のような、日々対話ができる作品を人の手に渡したい」という、コロナ以降の心境の変化が表れた展示とも言える。
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2020年から制作している有機物の結晶化現象を応用した「結晶ペインティング」は、完成後も大気に反応し、結晶の形を変化させる特徴をもつ、周囲の環境と共存関係にあるシリーズ作品だ。「言葉にならない」「目には見えない」現象をビジュアル化するYukawa-Nakayasuならではの展示となっていた。
会場はSUCHSIZEへと続く。
「SUCHSIZE」は、〈SUCHNESS(自然・ありのままである)〉と〈SIZE(人のサイズに合わせる)〉を組み合わせた造語であり、「アートと共にありのままに生きる視点」を見つけるオープンアートラボとして、Yukawa-Nakayasuが2024年より新たにひらいた場だ。こちらでは、「結晶ペインティング」シリーズと、そこから展開されている作品群が並ぶ。アーティストが新しい媒体や技術を探る際、実験的に制作をしている様子が感じられた。
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![REPORT|Yukawa-Nakayasu「薫りのささやきと」](https://erkd9564xmk.exactdn.com/views/uploads/2024/04/ed6232a34192b8740b38da26537411c3-1536x1024.jpg?strip=all&lossy=1&quality=90&webp=85&avif=50&ssl=1)
この場所は、ギャラリーやイベントスペースとしての機能を有するだけでなく、アーティストの公開作業場となる。つまり鑑賞者は展示作品にとどまらず制作風景に立ち会えるのだ。
オルタナティブスペース、という言葉をしばしば耳にするが、ここはオープンアートラボ。メンバーシップなどは特になく、いわゆるアート関係者以外にも足を運んでほしいとのこと。「ラフなコミュニケーションから、有機的に、意味の手前にあるような事象をさまざまな分野の人と楽しみたい」とYukawa-Nakayasuは話す。たとえば、季節ごとにテーマ設定をして、それらに関する制作や展示を行う。さらに、テーマを掘り下げるためゲストを招いてトークをするなど。その時々に興味のある・気になることを「問いかけ合える場」にしたいそう。まさにラボラトリー(実験室/研究室)だ。
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「薫りのささやきと」展の最終日には、「アートと共に生きるとは?」をテーマにしたトークイベントもひらかれた。スピーカーはYukawa-Nakayasuと、SUCHSIZEの概念を地域で展開するべく、本展の関連企画として「天体のリズム 生体のリズム」を同地区の喫茶コーズリーで開催した松田壯統、モデレーターは筆者。今回の制作や展示を振り返りながら、先に述べた「アートと共にありのままに生きる視点」について来場者とともに言葉を交え、「SUCHSIZE」という考え方/場のありようを掘り下げる時間となった。
アーティストとしてだけでなく、2019年からアートハブ「TRA-TRAVEL」を立ち上げ、プロジェクトのプロデュースなども手がけてきたYukawa-Nakayasu。TRA-TRAVELでもSUCHSIZEでも、他者とのコミュニケーションが多く、それらが言語化のプラクティスになることや作品をどうつくるかに結びつくこともある。それぞれの活動がそれぞれの活動にいいかたちで交わっているようだ。交流を作品に派生させ、またその作品を人に受け渡していく今後の活動に注目していきたい。
Yukawa-Nakayasu / ユカワ・ナカヤス
「歴史や習俗や習慣に内在する人々の営み」を現代へと再解釈 / 再文脈化する事をとおして、 現在起きている言語化できない現象や問題を視覚化する作品を制作。特に、近年では「自然の循環」まで視野を広げ、人々の営みと自然の循環との相互関係に着目している。また2019年からアートハブTRA-TRAVELを立ち上げ、2020年「ポストLCC時代の 」(京都芸術センター)などの展覧会をプロデュースする
会期:2024年1月19日(金)〜2月17日(土)のうちの金・土曜(計10日間)
会場:イチノジュウニのヨン、SUCHSIZE
時間:15:00〜19:00
料金:入場無料(1ドリンク制) ※予約不要
主催:C-index
助成:アーツサポート関西、大阪市
関連イベント
日時:2024年2月16日(金)18:00〜20:00
会場:イチノジュウニのヨン
スピーカー:Yukawa-Nakayasu、松田壯統
モデレーター:米子凪里
料金:入場無料(1ドリンク制) ※予約不要
主催:SUCHSIZE
助成:C-index、SOUP株式会社