噴水とビルを眺めながら芝生で寝転がっているそばを、子どもたちが走り抜ける……。目の前で繰り広げられているのは、落語とコンテンポラリーダンス、そしてアンビエントミュージック。大阪・梅田のど真ん中で、こんなフリーイベントが楽しめるとは。
2024年9月にスタートした「YOSETE UMEKITA」は、グラングリーン大阪・うめきた公園の芝生広場を舞台に、音楽・ダンス・演劇・落語というジャンルを横断する屋外パフォーマンス企画だ。1公演につきDJと4つのパフォーマンスが行われ、2024年は4回開催(9月23日[月・休]、10月5日[土]、10月19日[土]、11月4日[月・休])。2025年3月にも引き続き実施される。
ちなみにグラングリーン大阪は、2024年9月に梅田駅北側エリア、通称「うめきた」の再開発により誕生した場所だ。そのなかに位置する「うめきた公園」は、駅近の憩いの場所として市民にひらけている。まさかここが人で溢れかえる大阪梅田駅と直結しているとは思えない。それほどゆるやかな時間が流れている。
「YOSETE UMEKITA」のコンセプトは、上方文化を代表する芸能形式「寄席(よせ)」がヒントになっている。企画・プロデュースを行う一般社団法人ベンチの松本花音さんはこう話す。「伝統文化と現代のカルチャーを交わらせアップデートすることが企画のコンセプト。江戸時代に上方落語の寄席は、人が行き交う屋外で行われていたんです。その情景とうめきた公園を重ねて、古典と現代をミックスさせた趣向の異なるアートや音楽が楽しめる場を構想しました。伝統文化として落語を、現代カルチャーとしてコンテンポラリーダンスやDJを。訪れるたびに何か気づきや発見を得てもらえたら嬉しいです」
私は2024年10月19日(土)に行われた「VOL.3 長い夜」の回へ。あいにくの雨天で芝生広場から大屋根の下へ急遽会場が変更になったが、19時からスタートし、ほか3回の昼間公演とは異なった、大人の雰囲気が漂っていた。月亭太遊の軽快な落語からはじまり、はなもとゆか✕マツキモエによるコンテンポラリーダンス、そして中川裕貴+1729によるライブと続いた。シェフのおすすめディナーコースといった感じで、何が出てくるかわからないワクワク感に満足感たっぷり。自分のなかにある感情が次々と引き出されていった。
イベントのアイコンにもなっている「YOSETE UMEKITA」のロゴが配された提灯が、メインステージの横に光っている。これは江戸寛政年間に創業した老舗「小嶋商店」に依頼したオリジナルだという。また、舞台道具は、建築家ユニットのdot architectsが制作。風に揺れる金色のまん幕は、武士が合戦のときに陣に置いているまん幕をオマージュした。ここでイベントをやっていることを知らせる、ノボリのようなはたらきもある。ちなみに、モビリティの高さが重視されており、各パーツごとに取り外せて撤収が早い。舞台美術の細部に見られる、ものづくりへのこだわりにも注目したい。
ツインタワーのライトアップと芝生の緑をバックに、まさに都心型ランドスケープのなかで繰り広げられる新旧のエンターテインメント。大阪ではこれまであまりなかった組み合わせとコンテンツが目白押し。「うっかり最後まで観ちゃった人がいたら嬉しい」と松本さんは話していたが、どうやら私もその口だったようだ。昼の回でも、のびやかに場に身を置き、パフォーマンスに親しむ観客の姿が見られたという。
落語が好きでよく寄席には行くが、屋外で聞くのははじめての体験、しかもその後にアンビエントライブまで聴けるとは。フリーイベントとあってお得感も極まりない。なんか刺激が足りないな〜と感じる休日に、ぜひ訪れてほしい。
日時:2024年9月23日(月・休)、10月5日(土)、10月19日(土)、11月4日(月・休)
会場:グラングリーン大阪 うめきた公園 サウスパーク 芝生広場
料金:無料次回開催予定
日程:2025年3月
※詳細・最新情報は公式Instagramを参照