中之島のアートエリアB1が2010年より毎年開催している企画展「鉄道芸術祭」、vol.10はメインアーティストにアーティストユニット・contact Gonzoと建築家ユニット・dot architectsを迎え、2020〜2021年の2カ年にわたるプロジェクトとして、「経済」をテーマに展開してきた。1年目は「GDP(Gonzo dot party)」というタイトルのもと、 経済とパーティーにまつわる9つの出来事を積み重ねたが、本番を迎える今年は、「GDP THE MOVIE〜ギャラクティック運輸の初仕事〜」 と題し、展覧会と映画制作の構造を活用して独自の視点から経済のあり方を探究、現状を創造的に乗り越えるための指標を導き出すことを目指す。
ギャラクティック運輸とは、本展作品『GDP THE MOVIE〜ギャラクティック運輸の初仕事〜』に登場する、contact Gonzoとdot architectsから構成される架空の運輸会社。展示会場に設えられた舞台セットとなる宇宙船「エグゾースション号」を舞台に、妄想によるイメージの世界を映像によって表現する。
オープニングプログラムでは、映像秘話やこれから作り出されるワンシーンの公開制作などを披露。会期中盤に行われる本編上映会には、監督作『ドライブ・マイ・カー』が第74回カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞した映画監督・濱口竜介をゲストに迎えて、メインアーティストやディレクターチームと本作の主題について語る。
経済をテーマにしたプロジェクトの集大成として制作される、現実と妄想、事実と虚構が入り混じる映画で、どのような物語が紡がれるのか、注目される。
『GDP THE MOVIE 〜ギャラクティック運輸の初仕事〜』の脚本の冒頭
大雨が降り続けて、日本各地で土砂災害がいっせいに起き始めた。地球の人間は少しずつ、 おかしな事が起こっていると気付いてはいたが、多くの人間は特に何もしなかった。気候変動という言葉は知っていても、自分がエコバックを使うことで何が変わるのか、誰も実感できなかったのかもしれない。暴風雨の中でさえ。
しかし、すべてが連動していたのだと今となっては言えるかもしれない。様々な分野の大企業の意向を誰も止めることができず、政治家も次から次へと買収され続け、建てるものといえばカジノなどであった。そのうえ地球の表面はもとより、その内部の資源をも消費するばかりで、この惑星は弱り果てていた。
経済というこの惑星のある種の宗教は、常に成長することを期待され、もはや架空の価値を増幅させることが精一杯だった。人々に伝えられる数字でさえ、虚偽の場合がほとんどだ。 しかしそれを終わらせようと、仕組みを変えようという会話を誰も話し始める事が出来なかった。 広告代理店などが、軽妙なリズムでたくみに世論をコントロールしていたためだ。
その間にも地球上には様々なウイルスが現れては変異し、地球上の人間は対応に追われ続ける日々であった。バタバタと人が倒れ、生き残ったものはお互いを監視した。気候変動の影響か、 変異のサイクルは加速するばかりであった。人類はいったい何本のワクチンを打ったことか。
そんなある日、かつての dot architects と contact Gonzo の元メンバー達に一通の手紙が 届いた。彼らはかつて活躍したアーティストの集団で、現在は様々な理由で活動を休止していた。ある者は、スーパーのレジ係、他のものは畑仕事、他の奴に至っては一日 20 時間もオンライン ゲームをしていた。そもそもアートをやろうなんて奇特な人間は、もはやほとんどいなかった。 少なくとも目に見える範囲には。暗い話に聞こえるがこれが真実だ。
しかしこの時、このふざけた手紙が、この銀河にもたらす影響を誰も、書いた本人でさえも、予想はしていなかった。それはとてもとてもギャラクティックな出来事であった。
メインアーティスト プロフィール
contact Gonzo(コンタクトゴンゾ/アーティストユニット)
2006 年結成。ゆるやかにメンバーを入れ替えながら、現在は塚原悠也、三ヶ尻敬悟、松見拓也、NAZE の4名で活動している。 グループ名は自分たちが実践する方法論の名称でもある。人と人との接触、肉体の衝突に着目し独自の牧歌的崇高論を構築、 格闘技やスポーツを想起させる即興的パフォーマンスをはじめ、インスタレーション、写真や映像作品の制作、冊子編集な どを行い、国内外のダンスフェスティバルや美術館での展覧会で活躍している。
主な個展に「コンタクト・ゴンゾ展 Physicatopia」(ワタリウム美術館、東京、2017)。主な展覧会に contact Gonzo+ YCAM バイオ・リサーチ「wow, see you in the next life. / 過去と未来、不確かな情報についての考察」(山口情報芸術センター、 2019)、「Reborn-Art Festival 2017」(宮城、2017)、「風穴:もうひとつのコンセプチュアリズム、アジアから」(国立国際美術館、 大阪、2011)他多数。dot architects(ドットアーキテクツ/建築家ユニット)
2004 年設立。大阪・北加賀屋にて「もうひとつの社会を実践するための協働スタジオ」コーポ北加賀屋を拠点に活動し、現 メンバーは、家成俊勝、赤代武志、土井亘、寺田英史、池田藍、宮地敬子、石田知弘の 7 名。既存の経済原理とは異なる設 計学を重視し、設計、施工のプロセスにおいて専門家・非専門家にかかわらず様々な人との恊働を実践している。また設計 に留まらず現場施工も手がけ、舞台美術や展示空間構成、リサーチプロジェクトやアートプロジェクトなどにも携わっている。 主な設計に、Umaki Camp(小豆島、2013)、千鳥文化(大阪、2017)、会場構成・施工に「Dotted AlleyScape」(瀬戸内国 際芸術祭 2019 北浜エリア)、ICOM 京都大会開催記念「京の歴史をつなぐ」(京都文化博物館 、2019)他多数。「3.11 以後の建築」(金沢 21 世紀美術館、2014)、第 15 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展日本館「en [ 縁 ]: アート・オブ・ネクサス」(イタリア、 2016)等の展覧会に参加。
鉄道芸術祭 vol.10「GDP THE MOVIE〜ギャラクティック運輸の初仕事〜」
メインアーティスト(共同企画者):contact Gonzo(アーティストユニット)、dot architects(建築家ユニット)会期:2021年11月20日(土)〜2022年2月27日(日)
会場: アートエリア B1
時間:12:00〜19:00(11月20日(土)、12月25日(土)、2月19日(土)は16:00まで)
*映画上映:13:00/15:00/17:00(上映時間 約90分)休館 : 月曜日(祝日の場合は翌日)、2021年12月27日〜2022年1月10日(冬季休館)
料金:無料(一部有料プログラム有り)
主催:アートエリア B1【大阪大学+NPO法人ダンスボックス+京阪ホールディングス(株)】
問合:06-6226-4006
オープニング・プログラム「ギャラクティック運輸の初仕事」
日時:11月20日(土) 17:00〜19:00
会場:アートエリア B1
ゲスト:contact Gonzo、dot architects
進行:木ノ下智恵子(アートエリアB1運営委員)
定員:30 名程度(要申込 /先着順)
参加費:1,000 円スペシャル・プログラム
本編上映会『GDP THE MOVIE 〜ギャラクティック運輸の初仕事〜』の初披露
日時:12月25日(土)17:00〜19:00
会場:アートエリア B1
ゲスト:濱口竜介(映画監督)
進行:contact Gonzo、dot architects、木ノ下智恵子、久保田テツ(アートエリアB1運営委員)
定員:30 名程度(要申込 /先着順)
参加費:1,000 円スペシャル・プログラム「Gonzo dot party」
日時:2月19日(土)17:00〜19:00
会場:アートエリア B1
定員:30 名程度(要申込 https://www.artarea-b1.jp/tetsugei220219 /先着順)
参加費:1,000 円*アートエリアB1のInstagramにて設営風景を随時公開。
大阪市北区中之島1-1-1
京阪電車なにわ橋駅B1F