心斎橋の写真専門ギャラリー・ソラリスにて、染谷學の写真展「六の舟」が開催。
染谷は1964年生まれの写真家。50歳になったのを機に、25年続けてきたフリーカメラマンをやめ、年に数回の旅とともに自分の時間のための写真を撮り始めた。
「人の目や、場所のいわく等を考えないで、自分が心惹かれた小さな感覚を信じて、旅先の自分のこころの風景と割り切って、ただそれだけを集めてみようと思う。」と話す染谷が今回発表するのは、35mmカメラを持って日本各地を旅し、劇的な被写体ではなく目の前を通り過ぎてゆく小さな事柄を捉えた作品群。北海道小樽市の忍路から長崎県雲仙市の小浜まで、心にしみる海辺の町の風景を撮影した写真を展示する。
三十歳になったばかりのころ仕事で訪れた八代海に臨む小さな町は、学生時代を東京で一緒に過ごして、その後は僕のせいで会うこともなくなってしまった友人の生まれた町だった。これといった特徴もないような町だったけれど、湾曲した道の先に海が見えた。それは誰も気にとめることもないような海だった。最初からそこにあるから仕方なくそのままにしてあるのですというような海だった。しかし、友人はその海を見て育った。小さなころからいつもその海を見て育ったのだ。僕といた時、友人の内にはそんな寂しい風景があったことを僕は知らなかった。そう思ったらとても哀しい気持ちになった。
それがきっかけになったのかはもう忘れてしまったけれど、二十年以上経った今でも海沿いの町への小さな旅は続いている。
僕にとっての旅は、旅先のその町に明日もまた同じような日常が訪れるのだということを、しみじみと切なく感じることだ。帰りのバスが動き出し、少し高くなった座席から見える町がゆっくりと流れる。昨日歩いた路地、商店、人の姿、きらりと光る海。明日もまた、この町の人たちはこの海を見て暮らすのだろうと僕は思う。
少しでも遠くへ、少しでも小さな町へ旅をしたい。
僕の内には無い風景を見てみたい。染谷學
会期:2022年1月11日(火)~23日(日)
会場:ギャラリー・ソラリス
時間:11:00~19:00
休廊:1月17日(月)
問合:06-6251-8108
関連プログラム
染谷學トークイベント
日時:1月15日(土)19:30~21:00
会場:ギャラリー・ソラリス(事前予約制)&オンライン
料金:参加・視聴無料
*会場での参加申込、オンライン視聴はギャラリー・ソラリス Webサイトにて。
大阪市中央区南船場3-2-6
大阪農林会館B1F