日野は、バンド「goat」「bonanzas」、ソロプロジェクト「YPY」名義などにより、ダンスミュージックから前衛的コラージュ/ノイズまで多岐にわたる音楽活動を展開、国内外で高く評価されている。
本作品は、鼓童のメンバーから日野に届いた1通のメールをきっかけに創作された。日野は佐渡島で1ヶ月におよぶ滞在制作を行い、鼓童のメンバーたちと共に音の響き、リズム、演奏法などを探求。その体験をもとに制作した89分の楽曲群を、豊田が全編佐渡島で撮影、映像化した。
緻密な楽曲群と鼓童によるストイックなパフォーマンス、それにオーバーラップする冬の佐渡島の表情により紡がれる映像は、強烈な音楽体験を提示するものだ。
2021年2〜3月に映像配信のみで発表された本作品は、その後ドイツで上映された。その凱旋となる今回、シネマート心斎橋では、爆音映画祭などを手がけるboid主宰・樋口泰人が作品と劇場の個性を念頭に音響を調整したboidsoundで上映される。映画館ならではのスペシャルな環境で、迫力の太鼓や映像がもたらす衝撃を体感したい。
なお、日野のクリエイションについては、paperCが2021年3月に収録したインタビュー記事で詳しく紹介している。
今回の制作を通して鼓童を知るほどに、伝統が今でも伝統として存在している理由や力強さを感じていった。
スピーカーでは鳴りえない空気の振動、木の鳴り、そして太鼓を打つ姿の美しさ。その圧倒的説得力に純粋に感動し、伝統と向き合う事の意味を深く体感した。
その上で正しいとされるものを疑い、音楽として形を成すことを捨てたところからこれは始まる。
単なる音の響きを探し、その音にリズムを与え、いくつかのリズムが絡みあうことで大きな律動が生まれ、それは音楽となっていく。僕たちは「作曲家」、「鼓童」として切り分けた関係ではなく、同じ仲間として楽器の持つ音や演奏法、グルーヴを再発見し、その興奮や喜びを共にしていった。
ゆえにこれは単に「鼓童の為に作曲した作品」ではない。今自分たちはデビュー当時の鼓童の興奮や発見を追体験しているのではないか、そう思える時間を共にした記録となった。日野浩志郎
日程:2022年2月11日(金・祝)~16日(水)
会場:シネマート心斎橋
問合:06-6282-0815
豊田利晃監督による舞台挨拶
日時:2月11日(金・祝) 15:25の回上映後、17:30の回上映前監督・脚本:豊田利晃
音楽・演奏:日野浩志郎
演奏:太鼓芸能集団 鼓童(阿部好江/中込健太/小松崎正吾/住吉佑太/鶴見龍馬/小平一誠/前田順康/吉田航大/三枝晴太/渡辺ちひろ/小野田太陽/詫間俊/中谷憧)
出演:渋川清彦
鼓童 舞台・制作:風間正文 新井武志 柳澤美希 池山空見
撮影:槇憲治
照明:野村直樹
音楽録音:葛西敏彦
美術:松本千広
衣装:服部昌孝 江戸一番隊
ヘアメイク:白銀一太
特機:後藤泰親 奥田悟 上野隆治
音響演出:北田雅也
録音:高橋勝
編集:沖鷹信
デザイン:大橋修
スチール:大森克己
制作プロデューサー:沖鷹信
プロデューサー:安澤太郎/黒瀬万里子
配給・宣伝:豊田組
企画・製作:越島
2021年/日本/89分/カラー/ビスタサイズ/5.1ch/DCP『戦慄せしめよ』オフィシャルサイト https://etto.world/
大阪市中央区西心斎橋1-6-14
ビッグステップビル4階