【STATEMENT】
いつの時代も、Fictionは、夢や可能性を見せてくれた。現代において、バーチャルな世界とリアルな世界の結びつきが一層強くなっていく中では、FictionとRealの境目が融解し、なくなりつつある。ひいては、それによって情報の真偽を判断する能力を社会に求められるといった、言説が盛り上がる状況が生まれている。情報の真偽を判断するという殺伐としたものだけではなく、情報の海に飛び込んでその中を愉快に楽しく泳ぐというのも一興なのではないだろうか。
本展では、記憶や時間、愛着というキーワードの浮かぶ作家たちによって構成されている。現代における物質的なものや物質を超えたものの意味、時間との向き合い方、そして、自分のアイデンティティは一体なんなのか、そんなことを考えながら構成されています。
空想の物語の豊かさに接することで、情報との「愉快な戯れ」を楽しんでいただくことができれば幸いである。
〈THE FICTIONーOne’s Room〉
ある日の夜中、枕元にあるスタンドライトから漏れる光に照らされながら、ラジオから流れてきた1960年代のサイケの代表13th Floor ElevatorsのJugが効いた「You’re Gonna Miss Me」で目が覚めた。おばあちゃん家にお泊まりをして、親戚みんなで「雪の宿」を食べながらVHSに録画された「20時だよ全員集合」を見て大爆笑、それから、笑い疲れて、おばあちゃん家にあった薔薇の毛布の上でよく寝落ちてた。そんな当時の思い出の夢を見ていた
ふだんは、円形の窓の目の前を走る路面電車の音を目覚ましがわりに起きて支度をする。目が覚めたら、2分くらい天井に吊ってある先端が日焼けしたブリキの飛行機を眺めて目と脳のピントを合わせる。それから、自分がくるまっている薔薇の毛布を勢いよく両手両足でエイッと足先へ飛ばす。
その次は、お気に入りのレコードを流しながら、家族たちの点呼をとる。家族といってもその家族ではなく、私にとって心の家族みたいな‘彼ら’である。昔から帰り道に、リサイクルショップでオモチャやガラクタといっても差し支えないようなものを見つけては我が家に迎え入れることが日課になっている。迎え入れられた彼らは、私のおじいちゃんが作ってくれたビビットな色と渋皮色のバイカラーの木製の棚の中、天井や壁の至る所に飾られている。そのオモチャたちが、まるで映画のTOYSTORYのように私に不満を抱いて、知らぬ間に歩いてどこかに出ていってないか気になるから、みんなにおはよー!と言いながら数を数えて「家族」たちの点呼をとる。
そうこうするうちに、時間を見ると会議の時間まであと15分.ハンガーにかけてあるおばあちゃんが昔編んでくれた年季の入ったニットとスーツ、Yシャツを着て準備完了。
お気に入りの椅子に座ってデスクトップを立ち上げて、今から始まる「日本文化創造発信企画“20年先の未来を考える”」という議題の会議へ備えるために資料に目を通した.すると、資料にある私の名前が間違っていることに気がついた。部下へ慌てて修正の電話を入れた。「お疲れ様、急ぎで私の名前を修正しといてくれるかな、JohnnyじゃなくてJamesだよ、ありがとう」(主催者Facebookより)
The FICTION-ONE’S ROOM”
会期:2022年4月29日(金・祝)〜5月15日(日)会場:Marco Gallery
時間:14:00~18:00、19:00〜21:00
休廊:月・火曜日
大阪市中央区南船場4-12-25
竹本ビル1F-3F-4F