肥後橋のThe Third Gallery Ayaにて、渡邊耕一の個展「毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー」が開催。
渡邊は1967年大阪府生まれ。大阪市立大学文学部で心理学を学んだ後、2000年にIMI研究所写真コースを修了した。植物をテーマにした作品を多く手がけている。
前作のシリーズ〈Moving Plants〉では、欧米諸国で日本原産の植物イタドリが外来侵略植物として恐れられていることを知ったことから、ヨーロッパやアメリカへの撮影を敢行。身近な植物の背後に広がる人間と植物との歴史、近代の複雑な流通やそのネットワークに行き着いた。
今作は、昆答刺越兒發(コンタラエルハ)という謎の薬草の痕跡を追う中で撮影された写真群。「薬」としての植物の側面に着目し、世界中で取引される商品として資源化される植物の姿を浮き彫りにする。
なお、この展覧会に合わせて、人間と自然の関わりから現在を生きる術を思考する文化人類学者、アナ・ツィン(カリフォルニア大学)の寄稿も含む写真集を青幻舎より出版。本展にて先行販売される。
アーティストステイトメント
江戸末期の蘭方医学書にその記載を残す謎の薬草・昆答刺越兒發(コンタラエルハ)。その名前は、スペイン語の「コントライェルバ」に由来する。コントラは「(毒を)無効にする」、イェルバは「草」。つまり「コンタラエルハ」は「毒消草」だったのだ。江戸時代の蘭学書の、あるいは大航海時代の植物誌や医学書の中でコンタラエルハの痕跡を辿ると、同じ名前を持つ幾つもの植物が現れては消えていく。私が迷い込んだのは、15世紀から現代に至る500年におよぶ時間とヨーロッパ-アメリカ-アジアを結ぶ広大な空間にひろがる迷宮だった。
今は使われないこの薬草の痕跡を追う旅の中で、何百年にも渡って作られてきた毒消草を探し求める人々のネットワークの存在、香辛料や薬として世界中で取引される商品としての植物の資源化が浮き彫りになる。その過程で、人間の次元を超えて生きる生命体としての植物の姿は見失われてしまう。
旅の終わりに辿り着いた、コントライェルバが自生する森の、折り重なる形態の中で、コントライェルバの範疇を巡る絡れは文字通り解毒され、地質学的な時間が畳み込まれた、名状しがたい出来事として目の前に投げ出される。そこには感覚を研ぎ澄まさなければ聴きとることができない、言葉が無効になったのちに残る響、声ならぬ声が満ちている。
会期:2022年9月17日(土)〜10月
15日(土)22日(土)まで延長会場:The Third Gallery Aya
時間:12:00~19:00、土曜~17:00 ※火曜はアポイントメント制
定休:日・月曜
問合:06-6445-3557
アーティストトークイベント
日時:9月24日(土)18:00〜19:30
会場:The Third Gallery Aya(10名のみ)/オンライン参加(YouTube生配信)*申込後に詳細を案内
参加費:1,000円*写真集をギャラリーのWebサイトまたは会場でご購入の方は無料
申込先:こちら または 06-6445-3557写真集『毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー』
発行:青幻舎
ページ数:160ページ
価格:6,600円(税込)
寄稿:アナ・ツィン(カリフォルニア大学サンタクルーズ校文化人類学科教授)
申込先:info@thethirdgalleryaya.com / 06-6445-3557
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大阪市西区江戸堀1-8-24
若狭ビル2F