わたしはヨルチャを大きな水槽にしたかった。
田口ナツミがつくる宙を漂う生き物が見たかった。
この作家がクラゲというモチーフを選んだのは、
かの生き物の抽象性に惹かれたからだと感じた。
実際海の生き物は陸の生き物に比べると、
まったく何を考えているかわからないものだ。
その水中の静かなディスコミュニケーションを、
人はときに狂おしいほど求めたりする。
ゆっくりと潜っては浮上してみてほしい。
得体の知れない海の深さは人の深さなのだ。gallery yolcha イルボン
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こゝろ自由なる人間は、とはに賞づらむ大海を。
(「人と海」ボードレール 著・上田 敏 訳)海は鮮やかで時に激しく、時に穏やかに寄せ来る表層もあれば、
昏く冷ややかながらも豊かな深層も併せ持つ。
ボードレールはそんな海を人の心に喩えて詩う。自分が海の生物をモチーフに作品を作る時、
くらげに絡みつく人々の好悪の感情や鯨骨に感じる自由さについて考えながら作りました。
それぞれ、人のこころの内側を映す鏡の様な関係です。糸の自由な筆致を心に寄せて、是非奥へ、奥へと足を運んでみてください。
鮮やかな表層から、昏く静かな深層へ、皆様をお連れいたします。田口ナツミ
会期:2023年5月20日(土)〜6月11日(日)
会場:gallery yolcha
時間:13:00〜19:00(日曜のみ 12:00〜19:00)
休廊: 火〜木曜
料金:yolcha 運賃制(300円で乗車券を購入/同金額分ドリンク利用可)
大阪市北区豊崎1-1-14
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