キュレーターテキスト
船越はこれまで、家から大阪の展示会場まで歩き、歩いた時に履いていた靴を展示する《穴があいている》(2019)や、工具のモンキーレンチを調理器具に見立てケーキをつくる《A multi purpose tool》(2022)、朝のランニングコースに展示場所を入れてもらう《Tireless, perpetually rotating object, November 2022.》(2022)など、コントールができない状況下で不完全な結果を生み出し、展示会場に別の役割を見出すような作品を制作してきました。それらの作品は、展示会場や作品が日常の延長線上に存在していることを強調しつつ、その日常は他者やほか生物との関わりの中で成り立っていることや、そこでは分かり合えない状態や不完全な状況、予想外の結果があることを意味しています。船越は、そうした日常生活の中でこぼれる不測の事態を作品として提案することで、アーティスト自身が社会の規則や慣例から逸脱していくことを目論んできました。
本展「トラヴェルス・アドヴェンチュア」では、山中suplexの別棟「MINE」の由来である「峯」という漢字が、「山の頂(いただき)」という意味を持つことから着想し、MINEの外側(日常生活の全て)を登山(作品制作/展示企画)であると見立てます。日常生活や搬入を実施する中での議論や、かつての住居空間での共同作業を通して、船越作品の本質が現れる試みとなるはずです。
また、本展におけるアクター/参加者は、アーティスト自身、キュレーター、旧峯ビル、かつての峯ビルの住人、山中suplexとそのメンバー、船越の過去展示に関わる全ての生物及び構造物とみなしています。これら参加者/アクターを展示・作品の一部として捉えることで、キュレーターとは、個展とは、作品制作とは、関係とは、協働とは、言語とは、コミュニケーションとは、といった線引きについても再考します。「登山」におけるパーティ(複数人)での入山が推奨されるように、展覧会においても複数人での企画を行うことで、互いの能力を補完し合う新たな展覧会のかたちを生み出します。イラン・ホウン(本展キュレーター)
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船越晴稀 Funakoshi Harue
1999年静岡県生まれ。京都芸術大学大学院グローバル・ゼミ在籍中。 猫、哲学者、ランニングマン、モンキーレンチなど、日常生活での他者や他種との関わりで生まれる不備のある関係を視覚化させることで制作を行なっている。 これまでに参加した展覧会に、「再来さんや小さな芸術祭2022」(東京、2022年)、「A Question to Your Answer・応答への疑問」(京都, 2022)、「第5回かがわ・山なみ芸術祭2022」(香川、2022)などがある。イラン・ホウン Ellan Huang
1994年中国・深圳市生まれ、ニュージーランド育ち、京都在住。京都芸術大学大学院グローバル・ゼミ在籍中。伝統的な山水画や現代の風景画を取り上げながら、東アジアの関係を研究している。現代アートやキュレーションの知識共有プロセスとアイデンティティーの政治性に関心を持つ。2022年12月に周逸喬とタリア・ファルコン・ニザラネによる二人展「The Road Not Taken·岐路」(山中suplexの別棟「MINE」、2022年)を郭禹鋯と共同企画。(Webサイトより)
キュレータープログラムvol.2
船越晴稀 個展:トラヴェルス・アドヴェンチュア会期:2023年6月30日(金)〜7月9日(日)
会場:山中suplexの別棟「MINE」 2〜5F
時間:12:00〜18:00 ※金・土・日曜は〜19:00
料金:入場無料
関連イベント
(1)オープニング「登山パーティー」(DJ & 軽食)
日時:6月30日(金) 17:00〜21:00
会場:山中suplexの別棟「MINE」
入場無料(2)ワークショップ 「Let’s make ケーキ with monkey wrench!」
日時:7月5日(水) 12:00〜21:00
会場:山中suplexの別棟「MINE」
出演:船越晴稀、イラン・ホウン、黄宇曦
※予約不要(当日参加可能・入退場自由)
配信:あり(山中suplexのInstagramアカウントより)(3)トークイベント「展覧会が立ち上がるまでのトラヴェルスな試みについて」
日時:7月9日(日) 17:00〜19:00
会場:山中suplexの別棟「MINE」
出演:船越晴稀、イラン・ホウン、黄宇曦
言語:日本語、中国語、英語
配信:なし
大阪市西区新町2-9-4
NANEI 新町 bld. GALLERY 02 街区