この度、Yoshimi Artsは、弊廊にて6回目となる館勝生の展覧会「館勝生 2008」を開催する運びとなりました。
コンセプチュアル、ミニマル、ニューペインティングが混在している中で、館は、身体の感覚に一番近いところで出来る絵画を選びました。晩年にあたる2008年まで描き続け、その短い画業の中でも作品は変化していきました。1990年代初めからは、虫と分かるような有機的な存在を用いて描いていますが、それまでの、絵具の色彩と物質感で描いていた抽象絵画とは、それらは一線を画す作品のように思います。
館の実家は養蜂場を営み、館も幼少の頃、花を求めて全国を回るのに同行して、自然の中で四季や朝夕の時間の移り変わりを肌で感じていました。その体験からインスパイアされ、虫を抽象的に描くようになったと聞きます。その後、1990年代中頃の作品になると、虫のようなモチーフが解体されて、絵画の構造が画面全体に立ちあがり、突然出現した球体が宇宙的な空間を作り出します。2000年に入ると、激しい生命観を持ったような抽象化された有機体になり、それと共に大きな余白が出現します。その余白が時間を作り出し、時間の中において、浮遊する有機体が激しくも限りある物に見えてきます。また、2006年までの余白部分は淡いパール色で薄く塗られ、少し絵具の物質感がありますが、2007年になると有機体が少し大きくなるのと同時に、余白に絵具を全く塗らなくなっており、時間が流れているようにも、止まっているようにも感じられる空間へと展開しているように思います。
館は、2007年3月に癌が見つかり、夏頃には半年の余命宣告を受けます。治療するために入院をするのではなく、主治医と相談しながら絵を制作することを選択しました。そして、2008年の12月30日まで自身でアトリエに行き制作を続け、2009年1月に逝去しました。
本展では制作としては最後の年になった2008年に描かれた作品を、所蔵家からもお借りして約5点の展示を予定しています。
■略歴
館勝生 / TACHI Katsuo
1964年 三重県生まれ、1987年に大阪芸術大学芸術学部美術学科卒業、1994年に現代美術の展望 VOCA展’94 奨励賞受賞、2009年 逝去。
「空間のピカミングー6 瞬間的絵画の生成 館勝生」(galleryαM/東京, 1993)、「ハラドキュメンツ5 館勝生―絵画の芽」(原美術館/東京, 1998)、「館勝生展」(三重県立美術館, 2001)、その他日本各地のギャラリーにて個展、国内外の美術館にてグループ展参加多数。没後のグループ展として、「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」(国立国際美術館/大阪, 2018)、「コレクション2:つなぐいのち」 (国立国際美術館/大阪, 2022)、他。(プレスリリースより)
会期:2024年1月24日(水)〜2月18日(日)
会場:Yoshimi Arts
時間:12:00~19:00 ※日曜は~17:00
休廊:月・火曜
January Party
1月27 日(土)に若狭ビルの3ギャラリー(Yoshimi Arts, The Third Gallery Aya, Calo Bookshop & Cafe)が展覧会を同時期開催(パーティーは行いません)
大阪市西区江戸堀1-8-24
若狭ビル3F