粉浜のartgallery opaltimesにて、異なる表現手段を持った美術作家4名を迎えての企画グループ展「つれていって・押さえないで」が開催される。
展覧会コンセプト
ギャラリーで店番をしていると作品鑑賞後の感想で「連れて行かれた」「持って行かれた」という言葉を耳にする事がある。
私も美術作品の前や、音楽のライブやパフォーマンスの会場で、ここがどこで何時代なのか分からなくなるような感覚を味わったことが度々あるので共感できる言葉なのだが、改めて考えてみると私や彼/彼女らはどこへ(何を)連れて行かれているのだろう。
そんな疑問を解消したくて、今回は私が「連れて行く」能力が高いと思う作品を制作する4名の美術作家たちに展示をお願いした。事前に作家さんたちにお聞きしたアンケートでは
「作品鑑賞をしてる間も夜ご飯のことだったりこれからの予定のことをふと考えたりしてしまうことがあるのですが、持っていかれる時はすごく作品に集中して、その他のことが気にならなくなるので、その作品の持つ空間に支配される感覚が持っていかれる感覚なんだと思います」(菊池さん)
「作品の力に引っ張られる感覚ならなんとなくわかる気がします。例えばいい絵を前にした時にいつまでもその絵の前に立ち、見つめ続けてしまう事を連れて行かれた、持って行かれたというのでしょうか。」(松野さん)
「いつもは知っている(経験)と知らない(未知や非言語的な感覚)の間に自分が居て、作品に干渉し五感を通して現実に連れて行かれたような感覚になる事があります。」(toniiさん)
「作品の空間やフォルムに興奮している時がその感覚なのかもしれません。世界がはっきりと抽象的になります。私の制作でも構造を別のやり方で新たに重ね合わせながら、意味やフォルムが揺さぶられ交錯する運動感とスリリングな体験に期待しています。」 (丸山さん)
など興味深い見解を得ることが出来た。展示タイトルを相談して「つれていって」まで決まった後に、この言葉って昔の歌謡曲みたいでノスタルジックですね。という話になった。
この「ノスタルジーを感じる」も作品や音楽などの観賞後の感想としてしばしば耳にする言葉だ。
私たちそれぞれが経験し蓄積した風景や匂いや愛着を持っていた物などは脳の中に今も残っていて、作品の前で感情が揺さぶられた時にそれが現れることは至極当たり前の事だと思う。
でもその後松野さんが言った「ノスタルジーを押し付けたり押し付けられないようにしたい」という言葉がもう一つのキーワードになって、今回の展示タイトルが決定した。
染色した布を空間に合わせて独自の形に変化させたり、シーチングと呼ばれる薄綿布にパステルを擦り付けるようにして絵を描いたり、木彫/パテ造形/塑像などの立体造形、衣服のいらない部分を削ぎ落として、それを使って違和感なく新しい1着にしたり…
多岐にわたる表現手段を用いた作品たちはきっと皆さんをどこかへ「連れて行き」、しかも「(ノスタルジーに印象を)押さえつけないで」と話すでしょう。
是非ご高覧下さい。
(文章:opaltimes 内田)
企画グループ展「つれていって・押さえないで」
会期:2024年5月18日(土)〜6月2日(日)
時間:月・木・金曜 13:00〜17:00 土・日・祝 13:00〜19:00
休廊:火・水曜
出展作家:菊池虎十、松野有莉、丸山太郎、tonii
大阪市住之江区粉浜1-12-1