昨年の夏頃から、小さくてもいいから自分の生活の中での実感を軸にして、自身の制作をやり直さなければならないという思いが強くなっていた。
もちろんどんなに小さくてもリアリティを発見するということは容易なことではない。
実際なかなか見つからず写真に向かってなんのあてもない実験を繰り返していた。
それでも時々思ってもみなかった効果が現れたり、そのせいでカッコいいと思える作品ができたりもする。
その手触りと実感に支えられて手を動かしていた。
同時に全てがまるで幻のように感じられていた。私は普段実家の写真館でカメラマンとして働いている。
その業務のうちの一つに古くなったり、破損した写真の修復という作業がある。
スタジオで複写、あるいはスキャンしたデータをフォトショップで修復してプリントする作業だ。
この作業中にPCのディスプレイモニターに付着した「本物」の埃や汚れを、スキャン(複写)した写真の画像の中の汚れと勘違いして消そうとしてしまうことがある。
通常は気にもとめない瑣末な出来事であるが、何度も間違えて消そうとしてしまう度に、このディスプレイの表面で起こっている事に興味を持った。
埃を消そうとしても消えない時に起こるリアルとヴァーチャル(実像と虚像)が混じる感覚。それは脳が一瞬、仮想と実在の境界を見失いリアルの在処がスライドしていくかのようである。今展ではこの目の前にあっても蜃気楼のように触れることのできない、スライドしていくリアリティの在り方に着目しインスタレーションと平面作品上にて視覚化し提示することに挑戦する。
卑近なところで明滅するリアリティを辿ることは自分の座標を確認することでもあり、同時に自分の外側(世界)へと向かっていく行為でもあるはずだ。
「ディスプレイの表面に付着した埃」という小さな点からの問いかけと、その先に広がるであろう世界をご高覧ください。–
1986年1月大阪生まれ。
生家は高槻で1924年より写真館を営んでいる。
舞台俳優活動、自主映画製作などを経て2012年、ワークショップ夜の写真学校を卒業
その後は大阪を拠点に制作を続けている。
写真を主な媒体として使用し、アナログ、デジタルを問わず作品シリーズごとに異なる実験的な手法を用いた作品が特徴。(Webサイトより)
Koichiro Kojima個展「放たれたノイズは蜃気楼に侵入するか?」
会期:2024年8月24日(土)〜9月8日(日)
会場:JITSUZAISEI
時間:14:00~22:00/BAR 19:00〜
休廊:火・水曜
個展開催記念パーティ「夏の果ての蜃気楼」
どなたでもお気軽にお越しください。
日時:8月31日(土)18:00〜
料金:入場無料、ただし1ドリンク制
大阪市東成区大今里4-14-18