気鋭のアーティストが制作する泊まれる空間型アート作品31部屋や、計30メートルの縦型ギャラリースペース、ミュージアムショップなどを有する京都のBnA Alter Museumにて、青木きらら(谷澤紗和子+藤野可織)、香川裕樹、正垣雅子、東畠孝子、八幡亜樹の5組のアーティストが参加する展覧会「多声性のトーチ」が開催される。筒井一隆による企画。
多声性とは、複数の独立した声部が同時に響き合うことを意味する音楽用語であると同時に、自律した声とそれらが織りなす一に還元不可能な対話の容態を言います。
またここでは、コトバであり声としての「多声性のトーチ」(たせいせいのとーち)を発音・発話することによって意味を得る・変容していく多義的な広がり、無数のズレ、決定不可能性とを意味しています。
故に「多声性のトーチ」とは多声性が指し示す、照らし出す場、多声性による統治(民主主義を含む統治形態)、そして他へと生成されるトーチそのもの、あるいは喪へと移ろいゆく容態をも指し示しているのです。
また、この容態が持つディアスポラ的特性へのトーチそして統治、これは今日におけるトーチなき絶望的な情勢、不可能とも思える統治に対する実践と制作(発話と対話)でもあるのです。さて、あらためまして本展『多声性のトーチ』では、国内外の文化的ネットワーク上で宗教美術・文化財伝世としての模写・手技が持つ感覚を追体験する正垣雅子、大量生産品によるモニュメンタルな対称的全体の中に隠匿された非対称的部分を体系的に可視化する香川裕樹、切り紙や言葉によって現在という歴史の中で抑圧する/される主体たちの匿名的な現れと対話をする青木きらら、視線とその先にある媒介物としてのモノを通して今ココの時間と記憶に転換を促す東畠孝子、地理的・社会的・心身的な辺境を通じて外部化された生存権を自己へと回帰させ拡張を試みる八幡亜樹、以上5組のアーティストによるインスタレーション作品が展開されます。
加えて、本展ではそれぞれのアーティストが自作について語る音声ガイドも付属します。この音声ガイドには、本展オリジナルサウンドトラックとして音楽プロデューサーで映像作家のseaketaによる、エコーや残響を特徴とするダブアンビエントを再解釈し制作された楽曲を収録。外の喧騒と作家の語り、この楽曲たちが響き合い展覧会を多声的に演出します。
登りながら鑑賞するという特殊な空間体験を伴う階段型ギャラリーにて、垂直に伸びる対話の積層とそれらが照らし出す場をご高覧いただきましたら幸いです。(プレスリリースより)
参加作家プロフィール
青木きらら Kirara AOKI
美術作家の谷澤紗和子と小説家の藤野可織によるユニット。ユニット名である「青木きらら」は、藤野可織の2022年の著作「青木きららのちょっとした冒険」に由来する。2人によるコラボレーション作品としては、これまでに3つの作品を制作を発表しているが、「青木きらら」とユニット名を定めての発表は今回が初となる。
1作目の《無名》は、2015年に制作。「名前をつけてはいけない。名前をつけたとたんにお前は死ぬ。」といった宣告ではじまる小説と、貝殻の焼け跡が残る陶人形が、呼応するように展示。2作目の《信仰》は、2019年に制作。「神」を名乗る一人称で構成された小説と、切り紙作品で構成。二人の女性作家による社会への問いが交差する、意欲作となった。3作目の《木霊》は、2020年に制作。高山植物園内の2つの樹木にお面をかぶせ、それらが呼応するように語りかける作品として発表。「怖い」をキーワードに、SNSなどで物議を醸した。本展「多声性のトーチ」では、4作目となる新作の発表を予定している。
香川裕樹 Hiroki KAGAWA
1988年香川県生まれ。京都造形芸術大学 空間演出デザイン学科卒業。
既製品や日用品を用いて、正面性や左右対称などの要素を含んだオブジェやインスタレーション制作を行う。
主な個展に「置いたものを見る方法」(Nest、大阪、2023)、「配置と放置」(MATSUO MEGUMI+VOICE GALLERY pfs/w、京都、2014)
主なグループ展に「未来の途中プロジェクト 未来の途中の、途中の部分」( 京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、京都、2017)、「Installing of the Exhibition “BNF” & Artist」(ARTZONE、京都、2015)
正垣雅子 Masako SHOGAKI
京都市立芸術大学/大学院 日本画専攻 准教授
専門は、日本画模写。日本および東洋の古典絵画について現地調査に基づく表現研究。近年は、中央アジアやチベット文化圏の仏教美術に関心を寄せ、模写制作を行う。また、写真家・井上隆雄の仏教壁画撮影フィルムのデジタルライブラリ『井上隆雄「ラダック・ビルマ仏教壁画」写真コレクション』を構築、日本画表現の資料と画材のアーカイブに取り組む。講演「京都市立芸術大学における古典絵画の模写に対する理念と実践」(2023年敦煌石窟芸術国際学術研討会)、作品《讃嘆する王と妃 キジル石窟80窟壁画模写》(龍谷ミュージアム)、《維摩詰 敦煌石窟第220窟壁画模写》(国立民族学博物館)等。
東畠孝子 Takako HIGASHIHATA
1984年生まれ、大阪府出身。2008年京都市立芸術大学彫刻専攻卒業、2011年 Gerrit Rietveld Academie(オランダ、アムステルダム)陶芸専攻卒業。
近年は時間や記憶の転換と共有をモチーフに、様々な素材や日用品、写真等を組み合わせ、立体やインスタレーション作品として発表する。
主な展覧会に個展「moon, river」(Galerie De Witte Voet、アムステルダム)、2015年「Art Court Frontier 2015 #13」(ART COURT Gallery、大阪)、2017年「VOCA展 2017」(上野の森美術館、東京)、2021年個展「Loophole」(2kw gallery、滋賀)「Re: Perspective」(graf porch、大阪)など。
八幡亜樹 Aki YAHATA
東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。同専攻博士後期課程中退後、滋賀医科大学医学部医学科卒業。
フィールド調査や取材に基づく、領域横断的な美術作品の制作を行なう。主なメディアは映像+インスタレーション。
「(地理的/社会的/心身的な)辺境」の概念を追求し、その一環として近年は「手食」や「ロードムービー」に焦点を当てる。ロードムービーをVJの手法で即興する試みなど、映像の多岐にわたる展開も探求する。2022年より世界の手食文化をオンラインアーカイブするウェブサイト「手食」webを立ち上げ、主宰・編集。
芸術により、人間の生命力を伸張する方法を思索・探究している。
音声ガイド音楽制作 作家プロフィール
seaketa
プロデューサー、映像作家。Kumo Communication主宰。多数の楽曲、映像をインターネット上に発表。国内外問わず様々なレーベルからリリースを重ねる。
2023年8月21日に自身主宰のレーベルKumo Communicationからアルバム 「きっと途中」 をリリース。
seライブハウスやクラブ以外にデパートの屋上でライブをしたりと、様々な場所で活動中。
多声性のトーチ Polyphonic Torches
参加作家:青木きらら(谷澤紗和子+藤野可織)、香川裕樹、正垣雅子、東畠孝子、八幡亜樹会期:2024年10月26日(土)〜2025年5月11日(日)※会期中無休
会場:BnA Alter Museum 階段型ギャラリーSCG
時間:11:00〜20:00
入場料:一般1,000円/大学生・大学院生700円/高校生以下無料(音声ガイド付き)
企画:筒井一隆
主催:BnA Alter Museum
協力:一般社団法人HAPS関連企画
オープニングパーティー
日程:2024年11月1日(金) 18:00〜22:00
※本イベントは同時期に京都市内にて開催されているArt Collaboration Kyoto 2024 関連プログラム NIGHT OUTに参画
※イベント詳細はBnA Alter Museumの各種SNSにて後日発表
京都市下京区天満町267-1