放出の3階建の民家を改修し、美術作家の西嶋みゆきとしまだそうが作品制作の拠点として使用している建物「cumonos(クモノス)」にて、2025年3月15日(土)から3つの展覧会が同時開催される。
林 嘉一 個展「カソードルミネッセンス」
これまで林 嘉一さんは一貫してステイニング技法を用いた絵画の制作を実践し続けています。林さんは色彩そのものをモチーフとして、絵具の偶発的な流れとそれをコントロールしようとする意思が交差する地点としての絵画を作り出してきました。今展でもステイニングによりキャンバスへ染み込み混ざり合った色彩が発光するかのように眼前へと広がります。新作による展覧会をぜひご高覧賜りますようお願い申し上げます。 /cumonos
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電子銃の陰極から解き放たれた電子は、磁界によって導かれて遮られたり蛍光体に吸収されたりしながら、画面上に像を発光させていたらしい。ブラウン管テレビの話だ。
僕により溶き放たれた色の粒子は、重力によって導かれたり水によって洗い流されたりしながら、布の上に像を結ぶ。ただ、そこに何が映るのか僕は知らない。
電子線が何度も走査し像を現すように、繰り返し操作を試みながら光を探る。
画布の扉が開くその時まで。 /林 嘉一

松谷 博子 個展「森のような」
下絵を描かぬまま漂い流れるように抽象的なイメージを版木の上に刻み付けることで、作家が予想だにしない表情を生み出そうと模索し続けてきた松谷博子さん。シャープな彫り跡のつらなりは均一な黒との対比によって描き出されます。微妙なインクの摺り具合を手作業でじっくりと行うことで、背景の漆黒と鋭い彫り跡が像となって現われていきます。そうして出来上がったイメージは闇の中の緊張感とともに木漏れ日やヴェールのゆらめきのような浮遊感をも喚起させ、観るものをどことも言えない森のような世界へ迷い込ませてくれます。
是非、松谷博子さんが版画で描き出す世界をご高覧頂けたら幸いです。 /cumonos
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版木を彫ることで生まれるものを大切に、木版画を制作しています。
深く静かな、何もかもを受けとめる森のような、もしかしたら森ではないのかもしれない、曖昧な、でも確かな。
版木と向き合っていると、そんな場所にひとり入り込んでゆくようです。その中を彷徨い、見つめ、耳を澄ますことは、自分と向き合うことでもあります。
そしてその痕跡を紙に刷りとることで、自分からは離れていきイメージはより浮かび上がる、その感覚がとても好きです。
今回、普段のギャラリーとは一味違ったクモノスさんの空間で、今までと違う何かを少しでもつかまえられたらいいなと思っています。 /松谷 博子
企画展「spring」
出展作家:宮原 寛、大和 将太郎、オカモトミナミ、山本 駿平このたびcumonosでは、【spring】と題して、宮原 寛、大和 将太郎、オカモトミナミ、山本 駿平の四名の若手作家を招いて展覧会を開催いたします。
宮原 寛さんは大学院へ在学しながらcumonosでも個展を開催し、「絵画」という造形行為によって自身がものごとを見るときに意味や状況以前に捉えられた感覚を表現してきました。編集されたモノクロの画像を描くきっかけとしながら、キャンバスや紙に数色の絵具を置いては拭き取る行為を繰り返して画面は作られていきます。描かれた光景は色彩がある輪郭をなぞるようであったり、痕跡を残すようであったりと、なんらかの存在を感じられながらも抽象的な態度で現われます。
大和 将太郎さんは記憶を元にして繰り返すドローイングによって次第に変容するさま、朧気となっていく記憶の変遷、描く過程で溶け滲んでいくことで物理的にも変化していく有り様を重ねながら、淡く柔らかな色彩で描き出していきます。cumonosで初めての展示となる今回は、これまでとは異なる手法によって表現を進めます。
オカモトミナミさんは、自身の思い出や記憶、その中にある感情、日々の身の回りの人々やモノとのかかわりから感じていた温かさやワクワクなど、捉えきれなくなった感覚を可視化することを試みながら制作を続けています。描かれるイメージは、植物や建築物や日常の見慣れた事物の残像を辿るようにペンや筆が走り徐々に記号的なものや抽象的な形となりながら心象風景として描き出されていきます。オカモトさんはcumonosでは初めての展示となります。
山本 駿平さんは今年度で大学の卒業を控えながら精力的に展覧会活動を行いcumonosでも個展を開催しています。映画、アニメ、小説、漫画など自身が接してきた様々な物語が記憶の中で薄れたり組み合わさったりして、自身の記憶や体験から変異した曖昧なイメージを起点にどこか非現実的な世界を描いてきました。そうして生まれた絵画は、巡り巡ってあらゆる時代や場所や世界である余地を感じさせるものとなり、新たな物語を想起させることを目指しています。
それぞれに3月で大学・大学院を修了するものや現在大学院で研究中であり、この春から先の新たなステージに向けての活躍を期待される作家たちです。湧き出るイメージをキャンバスで芽吹かせるように制作された作品がきっと不意の出会いをもたらしてくれるでしょう。ぜひご高覧頂けましたら幸いです。 /cumonos
spring (スプリング):春 思春期 跳躍 ばね 泉 源泉 跳ねる 突然現れる など
林 嘉一 個展「カソードルミネッセンス」
会場:クモノス(cumonos)1階cumonstudio gallery松谷博子個展「森のような」
会場:クモノス(cumonos)2階cumonoma企画展「spring」
出展作家:宮原 寛、大和 将太郎、オカモトミナミ、山本 駿平(順不同)
会場:クモノス(cumonos)3階uwanosora3展示共通
会期:2025年3月15日(土)〜30日(日)
時間:13:00〜19:00
休廊:火〜木曜
料金:入場無料
詳細:https://cumonos.jimdofree.com/exhibition-1/
大阪市鶴見区今津南3-1-14