
ステートメント
私たちは日々、他者が認識する「私」と、自分自身が内に抱く「本当の私」の間に、微妙なズレを感じながら生きている。そのズレは時に意図的に生まれ、時に無意識のうちに広がり、時間の経過とともに変貌していく。そして、かつての自分と今の自分、周囲の解釈と自身の実感との間にも、同じような違和感が生じることがある。
あなた(私)にもヒューゴがいるかもしれない。
普段は見えない場所、閉ざされた空間の中に、もう一人の自分がひっそりと息を潜めている。忘れられた存在、あるいは意図的に隠された存在。それは願望や恐れ、過去に囚われた影かもしれないし、あるいは今もなお成長を続ける未完の姿かもしれない。
本展は、その「ズレ」そのものを見つめる試みである。作品を通じて、私たちが無意識に押し込めてきたもの、気づかぬうちに乖離してしまったものに光を当て、再び対話する場をつくる。
「ヒューゴ」とは、アメリカのアニメ『ザ・シンプソンズ』の特別回に登場する架空のキャラクターである。彼は双子の兄弟バートと生まれた際に分離され、「邪悪の子」として屋根裏部屋に閉じ込められた。しかし、実際にはバートこそが邪悪の子であり、当放送回ではその事実が発覚したことで、誰が「正しく」誰が「間違っている」のか、対となる二つの存在の役割が曖昧になった。
私たちの誰にも心の部屋があり、その天井の向こう側にはそれぞれの「ヒューゴ」が潜んでいるのかもしれない。本展では、まさにその「天井裏」を再現する。誰かの気配が漂う場所。その空間には、忘れ去られたものや、押し込められた思考が静かに息づいている。そこで繰り広げられる作品群は、私たちの内に潜む「もう一人の自分」
との対話を促し、認知と自認のズレに改めて向き合うための装置となる。
あなたがこの空間に足を踏み入れたとき、そこにいるのはヒューゴか、それとも——。
Group Exhibition「天井裏のヒューゴ」
出展作家:澤田光希、田口路弦、野田ジャスミン会期:2025年8⽉9⽇(⼟)〜 8⽉17⽇(⽇)
会場:Marco Gallery 4F
時間:13:00〜18:00(最終日は〜17:00)
定休:⽉・⽕曜、祝日 ※⽔曜はアポイント制
大阪市中央区南船場1-12-25
竹本ビル