
2025年9月12日(金)より、茨木市福祉文化会館(オークシアター)にて、展覧会「ライフライン」が開催される。
茨木市福祉文化会館は1981年に開館。文化芸術、福祉、水道など異なる機能が混在する複合施設として市民の生活を支えてきたが、老朽化により解体が決まり、2024年5月に一般への貸館業務が終了。完全に閉館するまでの期間に、会館を労おうという意図で企画されたのが本展だ。
残置物が撤去された空っぽになった地上5階、地下2階の全7フロアを使用し、8組9名のアーティストが作品を展示する。
キュレーションは国立国際美術館主任研究員の福元崇志が担当。当初は井澤茉梨絵、稲垣元則など6名の作家が出展予定だったが、2025年6〜7月に同会場で開催された茨木市の文化事業「ICAW:Ibaraki Contemporary Art Weeks」に参加していた中屋敷智生や松井智惠も展示に加わることとなった。
一部の作家は会期の1ヶ月以上前から会場入りし、展示構成を熟考しているという。各作家が建物に残る痕跡や気配をどのようにとらえ展示をつくり上げるのかが、見どころの一つになるだろう。
茨木市福祉文化会館の命脈が、いま、尽きようとしている。シアターあり、ギャラリーあり、会議室あり、さらには市の水道部や社会福祉協議会まで併設されたそれは、日本にいくつもある総合的な文化施設の一つだ。ご多分にもれず、ここ福祉文化会館もまた、さまざまな機能を備えているから「多目的」、しかしだからこそ何をするにも中途半端で「無目的」、などと揶揄されていたのかもしれない。
では、こうした総合への志向はとっとと捨てて、専門分化をひたすらに推し進めるべきか。答えは否、であってほしいし、あるべきだろう。劇場やコンサートホールや美術館など、ある目的に奉仕する施設が重要なのは間違いないが、それはまた特定のジャンル、特定の媒体に閉じることにもなりえる。
重要なのは、ただ繋げたり分けたりと、白黒はっきりつけることではなく、むしろ繋ぎつつ分け、分けつつ繋ぐという、どっちつかずな状態に居心地悪くとどまり続けることではないか。そもそもひとは、言葉を発した瞬間、あるいは一本の線を引くことによって、つねにすでに何かと何かを分けている。だが、取り返しのつかない「線引き」なんて、きっとないにちがいない。
本展覧会では、主に関西を拠点に活動する美術家たちの、仕切っては仕切りなおすいくつかの実践に光を当ててみよう。提示される作品は絵画、彫刻、素描、映像、インスタレーションと様々だが、曖昧な中間領域にアプローチしようとする姿勢は共有されているはずだ。
あちらとこちらを分かつ一本の線は、同時にまた、別の何かと何かを繋ぐ線でもありえる。複雑に絡み合い、もつれあうネットワークの全体が、私たちの生活を下支えする、ライフラインとなるように。何らかの枠を仮構しつつ、それを壊して別様に仕立て直すというその表裏一体は、「総合」のるつぼのなかでこそ顕在化するだろう。福元崇志(国立国際美術館)
会期:2025年9月12日(金)〜10月5日(日)
会場:茨木市福祉文化会館(オークシアター)
時間:12:00〜19:00
休館:9月16日(火)、17日(水)、24日(水)、29日(月)、30日(火)、10月1日(水)
料金:入場無料
参加作家:井澤茉梨絵、稲垣元則、今井祝雄、勝木有香、国谷隆志、田中真吾、中屋敷智生、松井智惠+O JUN
企画:福元崇志(国立国際美術館)ギャラリートーク
企画者・福元崇志による展示解説
日時:(1) 9月13日(土)15:00~16:30/(2) 9月20日(土)15:00~16:30
集合場所:福祉文化会館1階
料金:参加無料 ※予約不要
※詳細は公式Instagramで告知主催:公益財団法人茨木市文化振興財団
後援:茨木商工会議所、茨木市観光協会
茨木市福祉文化会館(オークシアター)
茨木市駅前4-7-55