「デザインする状況をデザインする」ことを目的に、2009年に大阪で始動したプロジェクト・DESIGNEAST。関西・大阪を拠点に活動する5名の実行委員[家成俊勝(建築家)、原田祐馬(デザイナー)、多田智美(編集者)、水野大二郎(デザイン研究者)、 柳原照弘(デザイナー)]が中心となり、2016年まで毎年、ジャンルや世代を超えた対話・交流の場をつくり出してきた。
その後イベントは休止していたが、2025年9月、9年ぶりのDESIGNEASTが、北加賀屋のクリエイティブセンター大阪(名村造船所跡地)にて開催される。
今回のDESIGNEASTのテーマは、相反するものがともに息づき、往来する豊かな状態を表す「IKIKIIKIIKI(いきき・いきいき)」。「予測可能で短期的・片利的なデザインの代替として、長期的で関係的なデザインは、既存の価値構造を撹乱しうるか?」「今・ここの“圏内”と、周縁化された“圏外”の世界観をつなぎとめ、往来する豊かな回路をデザインすることは可能か?」といった問いを立て、それに対する多様で豊かな応答が交差する場をつくり出す。
会場内に設置した3箇所の会場で、さまざまな人が自身の活動について自由に論じる「SPEAKERS CORNER」には、2日間で40名以上が出演。活動領域もキャリアも多彩な顔ぶれが、建築やデザインについてはもちろん、生きること・居ることそのものについてどのような対話を繰り広げるのか、興味深い。
会場4階の、かつて船の製図室だった広大な空間では、日本を代表するファッションブランド・Mame Kurogouchi (マメ クロゴウチ)によるエキシビション「Mame Kurogouchi: Notes on Fabric」を開催。2014年春夏コレクションから2025年秋冬コレクションまでに開発したアーカイブのオリジナルファブリックが並ぶ大規模な展示となる。本展示のために特別に制作された全長25メートルにも及ぶ2種類のファブリックにも注目だ。
その他に、日本とオランダを拠点に活動するデザイナー/アーティスト、Sander Wassinkがデザインし、リサイクル資材を使用するオリジナル家具を制作するワークショップ、「種と旅と」コーディネートによる日本各地の食材やフードのマーケットなども同時に展開。五感や思考をさまざまに刺激するコンテンツがあふれる3日間となる。
なお、若い世代の参加を促すため、初の試みとして高校生以下の入場を無料とするほか、実行委員メンバーによる10代のためのツアーも開催予定。
DESGINEAST IKIKIIKIIKI コンセプト
どこでも、なんでも、“デザイン”と呼ばれる今日。
その広がりのなか、私たちは新たな希望の萌芽を感じています。それは、ささやかな存在で目立たずとも、戦術的で、
また、長期的・包括的・再生的・利他的・自律的な営みであり、
これまでとは異なる生存・居住のあり方(Habitability)への希望です。この希望が示す“Habitability”は、
あらかじめ計画された近代的な生活の空間ではありません。むしろ、
「テリトリーに住まう」という感覚ーーつまり、土地や環境に根差し、
自らを含むさまざまな人や生き物、制度、時間との関係のなかで、
暮らしの場をともに育んでいく、「関係的なデザイン」です。ロビン・ウォール・キマラーの著書『植物と叡智の守り人』のなかに、
「プポウィー」という言葉があります。これは、あるアメリカ先住民が、
キノコが一夜にして地面から顔を出す力を表す言葉です。「関係的なデザイン」は、この「プポウィー」のような、
言語化される以前の表現力に近いものだと私たちは考えています。
しかし、近代的で分析的な、分別智的な見方に慣れ親しむにつれ、
私たちは、こうした力を失いつつあるのではないでしょうか。それらは、アーティストや人類学者、生態学者により、
言語化以前にある「宙吊り状態の価値」として表現されてきました。
また、さまざまなデザイナーや建築家が、そうした表現を感知し、
制度・法律・産業といった枠組みに橋渡ししてきた歴史があります。しかし今、都市的な職能としての建築家やデザイナーに、
「プポウィー」のような力を取り戻すことはできるでしょうか。
「関係的なデザイン」を実践することは、この問いに対する
応答のひとつになりうるのではないかと考えています。それは、近代と土着、都市と地域、利己と利他、西洋と東洋といった、
二項を対立させることなく、矛盾をまるごと呑み込みながら存在させる
「一即夛(いっしょくた)」の状況をデザインすることでもあります。今年のDESIGNEASTのテーマ「IKIKIIKIIKI(いきき・いきいき)」は、
相反するものがともに息づき、往来する豊かな状態を表しています。・予測可能で短期的・片利的なデザインの代替として、
長期的で関係的なデザインは、既存の価値構造を撹乱しうるか?
・今・ここの「圏内」と、周縁化された「圏外」の世界観をつなぎとめ、
往来する豊かな回路をデザインすることは可能か?9年ぶりに開催するDESIGNEASTでは、こうした問いに対する
多様で豊かな応答が交差する場をつくりたいと考えています。
今日における/これからの建築やデザインについてはもちろん、
生きること・居ることそのものをめぐる対話の場となるはずです。DESIGNEAST実行委員会(柳原照弘/家成俊勝/原田祐馬/多田智美/水野大二郎)
会期:2025年9月19日(金)~21日(日)
会場:クリエイティブセンター大阪
時間:
9月19日(金)前夜祭 18:00~21:00(17:30受付開始/展示観覧は19:00まで)
9月20日(土)、21日(日) 11:00~21:00入場料:
19日前夜祭 一般・学生 2,000円(コース料理は別途申込が必要)
当日チケット 一般 3,000円、学生 2,000円(1DAY)※前売パスはPeatixにて販売中
PIY(Price it Yourself)チケット 10,000円~プログラム:
前夜祭 内覧ツアー+食事会 or BAR
日時:9月19日(金)18:00 ~21:00(17:30受付開始)
実行委員メンバーによる内覧ツアーと、「種を旅と」がコーディネートを担当する選べる晩餐会(事前予約制の食事会もしくはキャッシュオンのBAR)を用意。食事会の詳細、予約はこちらSPEAKERS CORNER@3F
日時:9月20日(土)〜21日(日)12:00〜21:00 ※詳細はタイムテーブル参照
会場内に設置した3箇所の会場で、さまざまな人が自身の活動について自由に論じる状況をつくる。
20日(土)出演:
塚本由晴(アトリエ・ワン、東京科学大学大学院教授)、エマヌエーレ・コッチャ(哲学者、パリ社会科学高等研究院[EHESS]准教授)、小林茂(情報科学芸術大学院大学[IAMAS]図書館長・教授)、サンダー・ワッシンク(アーティスト/デザイナー)、渡邉朋也(山口情報芸術センター(YCAM)アーキビスト/ドキュメントコーディネーター)、吉行良平(プロダクトデザイナー、吉行良平と仕事)、加藤正基(空間デザイナー)、和泉侃(Olfactive Studio Neディレクター)、小林一毅(グラフィックデザイナー)、加藤駿介(NOTA&design)、山副佳祐(Hinote™ディレクター)、工藤桃子(建築家・MMA Inc.主宰)、熊谷彰博(デザイナー)、田原奈央子(プレス・企画)、奥津爾(オーガニック直売所タネト店主)、織咲誠(インターデザイン・アーティスト、ダンボール社会学者)、服部滋樹(デザイナー、graf代表)、古舘健(アーティスト、ミュージシャン、エンジニア)、井口和泉(料理研究家/養生研究家)、EDANE(ギャラリー)、川崎和也(スペキュラティヴ・ファッションデザイナー、Synflux株式会社 代表取締役)、小桧山聡子(山フーズ主宰)21日(日)出演:
テオ・ムザール(Collectif Etc、建築家)、マリーヌ・ロワイエ(ナント大学「PROJEKT」デザイナー兼研究員・局長補佐、サービスデザイナー)、黒河内真衣子(Mame Kurogouchi デザイナー)、多木陽介(批評家・移動教室 主宰)、工藤眞平(Books and Places 主宰)、早水香織(ATELIER)、木原倫太郎・佐々木昂聖(FOME / hibi)、川勝真一・藏薗悠介(けんちくセンターCoAK)、中井詩乃・小村純太(HOME SHOP)、吉田勝信(採集者・デザイナー・プリンター)、加藤直徳(NEUTRAL COLORS{NC}編集長)、中村寛(デザイン人類学者、多摩美術大学リベラルアーツセンター大学院教授)、西村周治(西村組・合同会社廃屋)、石川由佳子(for cities)、『万博を解体する』編集部(寺内玲、松岡大雅、鯉沼晴悠)、水内智英(デザイン研究者・プロジェクトディレクター、京都工芸繊維大学 未来デザイン・工学機構 准教授)、紫牟田伸子(編集家)、南部隆一(デザインディレクター、ACTANT 代表/ACTANT FOREST共同主催)、岩見遙果(京都工芸繊維大学KYOTO Design Lab特任研究員)、松川昌平(慶應義塾大学SFC環境情報学部准教授、000studio主宰)、堀川淳一郎(建築系プログラマー/アルゴリズミックデザイナー)EXHIBITION
Mame Kurogouchi: Notes on Fabric
日時:9月20日(土)〜 21日(日)/19日(金)18:00~19:00開催の内覧ツアーでも観覧可
会場:4F ドラフティングルーム
日本を代表するファッションブランド・Mame Kurogouchi (マメ クロゴウチ)によるエキシビション。2021年に開催したエキシビション「10 Mame Kurogouchi」以来約4年ぶりとなる大規模な今回の展示では、DESIGNEASTのテーマに呼応する形でブランドのクリエイションにおける往還性を提示する。MARKET
種と旅とDESIGNEAST
日程:9月20日(土)〜21日(日)
会場:Studio PARTITTA赤鉄骨下
「種と旅と」コーディネートのエリアが登場。ナチュラルワインにあわせて各地の料理人が腕をふるう立ち呑みエリア、そして在来種野菜や天然酵母の味噌、天日干しの昆布、クラフトアイスやタコス、お弁当が楽しめるマーケットエリア。また、特別なインスタレーション「いのちのやさい」も実施。
※詳細は「種と旅と」公式Instagram参照WORKSHOP STUDIO
Sander Wassink Temporary Studio
日程:9月20日(土)〜21日(日)
会場:2F White Chamber
日本とオランダを拠点に活動するデザイナー/アーティスト、Sander Wassink(サンダー・ワッシンク)による2日間のスタジオが登場。今回のスタジオでは、参加者とともに家屋解体時に生まれた資材を活用し、オリジナルデザインの家具「V.5.0」を制作する。
時間:両日ともに12:00~15:00、15:00~18:00 全4回
定員:各回15名 ※定員に満たない場合は当日も受付
所要時間:約3時間
参加費:18,000円(税込)
申込:https://designeast.base.shop/items/116535784
※事前予約優先・参加費別途EXHIBITION
TAJIMI CUSTOM TILES
日程:9月20日(土)〜21日(日)
会場:1F&3F
多治見のタイル製造の技術の高さや多様性、タイルの可能性を伝えるために、世界で活躍するデザイナーとコラボレーションし、インスタレーション作品を製作し発表してきたTAJIMI CUSTOM TILES。今回は、マックス・ラム、イ・カンホ、ロナン・ブルレックと取り組んだ作品を一同に集結し展示。ART INSTALLATION
織咲誠:Hug Box♡ーー分断のない世界のつくりかた
日程:9月20日(土)〜21日(日)
会場:3F、その他会場内
インターデザイン・アーティスト/ダンボール社会学者・織咲誠が、新作《hug-box♡》によるアート・インスタレーションを開催。FILM
『移動する「家族」|”Families” on the move』上映&ワークショップ
日時:9月20日(土)〜21日(日)両日ともに13:00~14:30、17:30~19:00 全4回 ※事前予約不要
会場:1F Black Chamber
映像エスノグラファー・大橋香奈による移住と家族をめぐる民族誌的ドキュメンタリー映画『移動する「家族」| “Families” on the move』(2019)を上映。鑑賞後、大橋監督によるワークショップも開催予定。SHOP / FOOD
日程:9月20日(土)- 21日(日)
会場:2F
テーマにあわせたお店のPOP UPが登場。DESIGNEASTでおなじみの明治時代から続く大阪の建築専門書・柳々堂、DESIGNEAST SHOP(今回は田原奈央子が店長を担当)、森林食堂によるカレーの提供も。DESIGNEAST SHOP presents 小林一毅 Live Drawing
日時:9月20日(土)11:15~19:30(事前予約制、最終受付19:00)
会場:2F
所要時間: 30分/1組
参加費: 33,000円(税込)
申込: https://designeast.base.shop/items/116845097
グラフィックデザイナーの小林一毅 によるライブドローイングを開催。お客さまの大切な思い出の「もの」を、その場で絵にします。BAR / LOUNGE
日程:9月20日(土)〜21日(日)
会場:3F
3FのSPEAKERS CORNER会場中心に設置されるBARカウンター(設計:加藤正基)では、来場者やゲストがドリンクを片手に語らうことができる。会場内に点在する「吉行良平と仕事」によるベンチは、後日購入可能。BAR/LOUNGEの一角では、アーティスト・植田志保が2015年より続けている対話描画「In a Flowerscape|色とことばがひらく対話描画」を開催。主催: DESIGNEAST実行委員会(家成俊勝 / 多田智美 / 原田祐馬 / 水野大二郎 / 柳原照弘)
特別協力: 一般財団法人おおさか創造千島財団
協力: 京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab、NEW LIGHT POTTERY
大阪市住之江区北加賀屋4-1-55