
北加賀屋の千鳥文化にて、関西を拠点とする作家・藤生恭平の作品展「穴の空いた容器 #2」が開催される。
キュレーションは、バクトゥル・ガムゼ(早稲田大学大学院 表現工学専攻博士課程に在籍中)が担当。
本展では、イスタンブールの路上を舞台に制作された作品を展示。
路上で働く人々・通行人とのコミュニケーションや、地域の廃棄物へのまなざし、そしてその再構成を通じ、藤生の土地や風景との関わり方や、イスタンブールで起きている日々の出来事が体感できるような空間が出現する。
藤生が自ら制作した、展示に関連する書籍もお披露目予定。
藤生恭平の実践は、地図における沈黙から始まる。都市空間を覆う均質な可視性を攪乱し、そこに潜む非公式の秩序と循環を露呈させる試みである。地図が指し示すのは、あくまで制度化された都市の表層に過ぎない。藤生が注視するのは、その陰で機能する別の層──崩壊しつつある建築の断片、仮設の宣伝バナーに覆われた建設現場、そして廃棄と再利用を反復するインフォーマルな経済の動線である。
また本プロジェクトにおいて藤生は、トルコにおける固有のナヴィゲーション文化と接続する。そこでは、方向は地図やデータではなく、身振りや語り、寄り道を含む身体的な伝達によって成立する。このローカルな知のネットワークは、近代都市計画の可視的秩序に対するオルタナティブとして現れる。
こうした現象に対する藤生の介入は、廃棄物回収者「チェッキチェッキ」への参加によって具体化される。彼らと同様に収集された廃材や段ボールは、仮設の構造体として組み上げられ、再び解体され、循環に戻される。
《Container with Hole #2》では、こうしたリサーチと実践の痕跡が、書籍と展示という二重のアーカイブへと展開される。会場には、ゴミ箱から生え出た段ボールの建物、風景に隠れたレイヤーを行き来する写真作品、かつて覆い隠されていた宣伝バナーに包まれた煉瓦が立ち現れる。いずれもイスタンブールの路上から持ち帰られた素材であり、都市の循環の痕跡をそのまま抱えている。藤生はこれらを通じ 、穴を開け、当たり前を裏返し、期待をずらしながら、都市の隠れた物語を軽やかな遊びに変換する。
(テキスト:バクトゥル ガムゼ)
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作家プロフィール
藤生恭平
1989年三重県生まれ。2024年東京藝術大学大学院美術研究科GAP課程修了。2022年トルコへ留学。
収集物や拾得物の前後の物語へと介入し、土地や風景について作品制作をする。
主な展覧会として、「砂場になった公園 」(山武市百年後芸術祭2024・蓮沼公園・2024)、「三川合流シュート」(ALTANATIVE KYOTO in 八幡・松花堂庭園美術館・2021)、「記録する遊戯#2 なんで花はじっくり見れんのにカビはじっくりみへんのかはわからん」(わいわいぱ~く・京都・2020)
会期:2025年9月18日(木)〜23日(火・祝)
会場:千鳥文化
時間:千鳥文化ホール(&食堂)11:30〜18:00
料金:入場無料
キュレーション:バクトゥル ガムゼ
写真:オズデミール エムレ
グラフィック・デザイン:ポール マイカ助成:アーツサポート関西
大阪市住之江区北加賀屋5-2-28