
東梅田の現代アートギャラリー・ICHION CONTEMPORARYにて、 2026年6月30日(火)から8月1日(土)まで、横溝美由紀の個展「Landscape 水の記憶 交差する視線」が開催される。
横溝は1990年代より、プラスチックなどの身近な人工物を用い、時間、空間、光を重要な要素とするミニマルなインスタレーションを国内外で発表してきた。近年は、インスタレーションとカンヴァスによる平面作品を組み合わせ、展示空間との関係のなかで、自身の心象風景を立ち上げる試みを展開している。
横溝が「彫刻としての絵画」と位置づける平面作品では、絵筆を用いず、油絵具を施した糸をカンヴァス上で弾くことで、画面に線の軌跡を刻む。絵具の飛沫や盛り上がり、かすれ、ずれといった偶然性を含むその線は、絵画を平面上のイメージとしてだけでなく、現実空間に存在する物質として、また身体的な行為の痕跡として浮かび上がる。
横溝が同ギャラリーを訪れた際、大阪の都心にありながら、ビルの間に挟まれた細長い建築に、かつての長屋の面影と、水都としての大阪の記憶を重ね合わせたという。
本展で横溝は、「見えるもの」と「見えないもの」の領域を行き来しながら、空間、光、線、記憶の交差する一瞬の光景を生み出す。
なお、6月27日(土)にプレビューイベントとして、作家による公開制作とレセプションが予定されている。
ランドスケープとは単なる景色や風景だけでなく、空間を構成する状況や環境、その場が持つ物語までを含んだ、さまざまな視点のことです。具体的な風景や特定の場を描き出すのではなく、世界の断片を集めて、それらをどのように解釈し、どのように設計するかを問う思考そのものです。ちょうどそれは夜空に散らばる星々に線を繋ぎ、星座として編み直してみる、そんな細やかな試みでもあります。
大阪の都心、ビルの間に挟まれた極めて細長い空間。そこにかつての長屋の面影がふと重なりました。縦へと伸びる建築の中で、各階に差し込む自然光は、澱み、滞留しながら刻々と表情を変え、静謐な光景を見せます。光へと連なる階段は、高層ビルが立ち並ぶ現代の風景と共に空へ向かい、同時に、かつて水都と呼ばれた街の深い水の記憶へと降りていくようです。
不確かで壊れやすく、微かでありながら、確かに存在するもの。
捉えがたく、掴みきれない、見失いそうなほど、気づきにくいもの。
私は、そうしたものに強く惹きつけられます。
「見えるもの」と「見えないもの」その領域を行き来しながら、それぞれの作品は自律し、と同時に互いに緩やかに繋がり、観る人と新たな関係を築いていく。それは、まだ見ぬ地平のその先を読み解こうとする視線のようなものかもしれません。
視覚はとても不確かであいまいなものです。
しかし「視る」ことの不確実性こそが、表現の可能性そのものだと思うのです。
そこでしか立ち現れることができない、一瞬の光景のために。
横溝美由紀
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横溝美由紀 プロフィール
東京都生まれ。多摩美術大学彫刻科卒業。文化庁派遣芸術家在外研修員。
1990年代からプラスチックなど身近にある人工物を使い、時間と空間、光を重視したミニマルなインスタレーションを国内外で発表する。近年はインスタレーションを平面に置き換えたキャンバス作品とインスタレーションを組み合わせた新たな風景の創出を試みている。
主な展示に、「criterium 37」水戸芸術館(1998年)、「プラスティックの時代」埼玉県立近代美術館(2000年)、「傾く小屋」東京都現代美術館(2002年)、「盗まれた自然」川村記念美術館(2003年)、「未来への回路―日本の新世代アーティスト」国際交流基金(2004−19年)、「Landscape – やわらかな地平のその先に」ポーラミュージアムアネックス(2021年)、「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」アーティゾン美術館(2023年)などがある。
会期:2026年6月30日(火)~8月1日(土)
会場:ICHION CONTEMPORARY
時間:11:00~18:00 ※最終入場17:30
休館:日・月曜、祝日
料金:入場無料
プレビューイベント(公開制作とレセプション)
日時:6月27日(土)14:00〜
大阪市北区野崎町9-7





