南堀江のTEZUKAYAMA GALLERYにて、上原浩子の個展「境界より」が開催。
上原は1985年群馬県生まれ。2012年に京都市立芸術大学大学院美術研究科を修了、現在も京都を拠点に制作活動を続けている。
大学院修了後はそれまで制作していた絵画作品と並行しながら、立体作品の発表も精力的に行うようになった。絵画制作で培った描写力と以前から興味があったと話す日本古来より伝わる自然の中に精霊や神が宿ると言われるアニミズムの思想に感化され、一貫して植物と人間の融合をテーマに制作している。モチーフとされる生き物の表情は穏やかで、繊細で柔和に表現された肌からは、神々しく優しくも強い生命力を感じさせる。
今展は「トドワラ」という、北海道・野付半島にある少し異質な場所から着想を得た新作の絵画作品、立体作品で構成する。
[アーティストステートメント]
北海道の東の端に野付半島という少し変わった場所がある。オホーツク海に向かって湾曲しながら突出する約26kmの細長い砂嘴で、半島を通る一本道の両側には海が迫り遠くに国後島を臨む。その地に行ったのは4年前のことで、目的は半島の先端部にあるトドワラという場所が見たかったからだ。 湿原の上に立ち枯れたトドマツの残骸が残り、特異な風景を作っているトドワラは「この世の果て」とも形容される。現在も風化が続き、もうすでに数本の枯れたトドマツが立ち並ぶだけのトドワラは、昔写真で見た光景とは変わっていたが、それでも強く心に残った。
広大な空と海と、ほんの少しの陸地の境界にいた夏の午後を私はきっと忘れないだろう。
昨年はコロナ禍で好きな旅行もほとんどできなかったせいか、昔行った旅先のことを考える時間も多く、トドワラやその周辺の光景のことなど、なんとなくその想いを形にできればと思い続けていた。久しぶりに絵を描こうと思った。この文章を書いている時点で未完成だが。今回展示する作品のすべてがそれに纏わるものではないが、あの日感じた光や風や見た光景を自分なりに形にできればと思っている。
上原浩子
会期:2021年5月21日(金)〜6月19日(土)
会場:TEZUKAYAMA GALLERY Main Gallery
時間:12:00〜19:00
休廊:日・月曜日、祝日
問合:info@tezukayama-g.com 06-6534-3993
大阪市西区南堀江1-19-27 山崎ビル2F