2021年11月6日（土）、ヘアサロン「laji」が、北浜・大川沿いに、衣食住を提案する新店舗「tuuli（トゥーリ）」をオープンした。フィンランド語で「風」を意味するtuuliは、1階の美容室、地下1階のアトリエスペース「tuuli FARM」と2フロア構成。tuuli FARMには、料理がつくれるカウンターキッチン、庭には食用のハーブが育つ小さな畑がある。laji同様、設計にはさまざまなクリエイターが携わり、アートディレクション・グラフィックデザインはUMA / design farm、内装デザインをdot architectsが手がけている。

大阪市内という立地ではあまり類を見ない、キッチンと庭を併設した開放的な美容室tuuli。誕生のきっかけは、「都会に田舎をつくりたい」というlaji代表・EIKO氏の言葉だったという。

「lajiをはじめて約7年。美容師として、女性として、働き方や生き方について深く考えるようになりました。スタッフたちと、ともに仕事に没頭できる環境も大切だけど、心も身体も元気でいてほしいーーそんな想いから、働く環境や暮らしのなかでもリトリートできる場をつくりたいと考えるようになりました」とEIKO氏。

代表のEIKO氏とオーナーの海野康志氏が、ヘアサロンlajiをオープンしたのは2014年。大川を臨む心地よい空間には、BOOKS＋コトバノイエの加藤博久氏が選書した本が並び、髪を切らなくてもふらりと立ち寄れるような風通しのよい美容室だ。

「lajiでは、スタッフとともに“家族のように働くこと”を大事にしてきました。だから、オープン当初から自分たちのお昼ごはんは、当番制で賄いをつくるようにしていて。”食べること”は、自分たちの身体をつくる行為。身体にやさしい食材、調味料で、毎日おいしい賄いで元気を出しています」とEIKO氏。

彼女が「生きること」にフォーカスした働く環境の重要性に気づいたのは、美容の世界を離れ、2年間海外で過ごした20代の頃。健やかに日々を楽しむことで、大好きな仕事の時間がより豊かになっていくことを実感したという。多くの女性が身体やライフステージの変化から不安や息苦しさを抱える30代になった今も、その考えは変わらない。不安や息苦しささえも笑って吹き飛ばし、前向きな気持ちにさせる「生きること」「働くこと」をつなぐ彼女の試みは、自分たちの賄いをつくることからはじまり、tuuliのオープンへとつながっていく。

美容師という職業柄、リモートワークも困難。だけど、休みのたびに、都心を離れて自然豊かな環境に身を置くことも難しい。ならば、いっそのこと、都会に田舎をつくってしまおう！　鳥取県の自然豊かな環境で生まれ育ち、心も身体もリフレッシュされたという原体験をもつ彼女らしいアイデアである。

「都会のなかでも、深呼吸できるような場所をつくりたいと考えました。川沿いにあって、空も抜けていて。仕事の合間に、ちょっとプランターのハーブや土に触れることも気持ちの切り替えにつながります。また、より日常に沿った楽しみや豊かさを提案したいという想いから、tuuliでは、私たちが大切にしたい衣食住にまつわる企画も進めています」とEIKO氏。

ここでtuuliが掲げるステイトメントを見てみよう。

これらの言葉からも、新しい発見や楽しみを分かち合いたいという優しい気持ちが伝わってくる。lajiに通って約3年になる私自身も、訪れるたびに、スタッフ同士はもちろん、顧客、家族、仲間をとても大切にしていることを感じている。

去る12月18日（土）、顧客向けに開催された食事会を訪れた。当日は、オーナーの海野氏とも親交の深いcasual KAPPOU iida店主・飯田恭央氏が料理を担当。さらにワインショップ・il Soffioneセレクトのワインが並ぶ。おなかも心も満たされる、愛のあるもてなしを堪能し、tuuliが大切にしたい価値観を全身で感じられる時間だった。子連れで参加した私を、同席した誰もが初対面にもかかわらず、あたたかく迎えてくれたことにも感動。EIKO氏や店長の海野氏をはじめ、スタッフの一人ひとりが丁寧にコミュニケーションを育んできたからこそ、生み出せる場なのだと実感した。

日々の暮らしは、もちろん楽しいことばかりではない。私自身も30代になり身体の変化も感じる。また友人たちと、仕事だけでなく、結婚、出産、子育てにまつわる話をすることも増えてきた。みんな少なからず、小さな不安を抱えている。けれど、蹲っていても状況は変わらない。一人ひとりを尊重し、日常に寄り添いながら、新しい働き方を模索するtuuliの挑戦は、そんな私たちに日常を楽しみながら乗り越えていく勇気を与えてくれる。