
2026年3月7日(土)・8日(日)、日本のコレクティブ山中suplexとBlank Canvasが共催し、ペナンにて「シェアミーティング3」が開催された。この2日間にわたるイベントは、東アジア・東南アジア・南アジアから16のインディペンデント・スペース、アーティスト・ラン・イニシアティブ、アーティスト・コレクティブが一堂に会したインフォーマルな集まりだった。2024年に山中suplexによってはじめられたシェアミーティングは、第1・第2回が滋賀県にある彼らのスタジオで開催された。今回の第3回は、プログラムが日本国外へと活動の場を広げた初の開催となり、参加者間での知識共有と運営上の課題を議論するのみならず、新たなネットワークの構築や共同プロジェクトの創出も目的としている。
私はライターとして招待を受けこのシェアミーティング3に参加した。本稿は、その場での観察と個人的な考察をまとめたものである。背景として、このイベントは「Penang Long Art Weekend」の開催中に実施されたもので、地元のアートスペースが連携してジョージタウン各地で展覧会を開催。招待参加者のほかに、マレーシアのアートコミュニティのメンバー、ICA京都の学生、海外からのキュレーターや業界関係者も参加した。会場はU.A.B.ビルディング、一般入場は無料だった。

プログラムは主に二部構成となっており、1日目は各団体による活動内容と背景についての発表に充てられ、2日目は参加者が4つのグループに分かれ、各グループにテーマを割り当てて議論を行った。テーマは、「レジデンスから最善の成果を生み出す方法」「集団的な学びを促す方法」「構造的な制約の克服」、そして「アーカイブの目的」の4つ。その後、全体の振り返りと、オブザーバーであったArtist-in-Residence Vietnam Networkによるフィードバックが行われた。また、食事をしながらの交流や地域の視察機会も設けられていた。

堤拓也はシェアミーティング3のサブタイトル「地震、雷、火事、親父、病原菌から生まれ出る美術」について説明し、これらの状況から生まれる表現や美学への好奇心を強調した。この視点が参加者の選定にも反映されており、多様な関心と文脈に向き合うさまざまな活動スタイルの実践者が集まった。以下では、私の印象に残った問いをいくつか挙げながら、そのニュアンスをとらえようと試みる。

「スペースへの補助金は麻薬のようなものだ」
資金調達は常に語られるテーマである。キュレーターのメアリー・パンサンガは、タイでは公的資金が政権政党によって左右される不安定な状況を指摘した。台南を拠点とするZit-Dim Art Spaceは、補助金や助成金に過度に頼ることを「依存症」になぞらえ、そこから脱却することの難しさを発表のなかで語った。これはスペースの長期的な持続可能性と自律性に直接影響する問題だ。
収入源を多様化する事例は参加者のなかにも複数見受けられた。栃木・鹿沼のCenterや山梨・河口湖の6okkenは訪問者向けに宿泊施設を提供し、地方都市の観光振興にも携わっている。サバ州を拠点とするPangrok Sulapは、グッズ販売や地元の祭り・マーケットへの参加から収益を得ている。アメフラシ共同創設者の村上滋郎はクラフトビール醸造を通じて、長井の食文化を自身のアーティストとしての実践に組み込んでいる。これらの商業的活動は、彼らが地域社会とどのように関わり、自らの考え方を広めていくかという点と密接に結びついている。アーティストを職業としてではなく、姿勢としてとらえる——6okkenのその感性に私は感銘を受けた。

プロの企画運営者は仲介者となり得るか?
こうした思考を推し進めていくと、アートの実践者とその対象となる観客や潜在的なステークホルダーをつなぐ仲介者の重要性という論点が見えてくる。行政機関、非政府組織、志を同じくするパートナーとの協働を模索するアプローチから学べることは多い。北海道のシンクスクールは、札幌駅前通まちづくり株式会社のプロジェクトとして発足し、芸術教育とまちづくりの交差する場で活動する。同団体の企画・制作コースは、企業のCEOや若手アーティストといった社会の多様な層がパブリックアートを通じて交わる学びの場を生み出している。シーラシャ・ラジュバンダリは、Kalā Kuloが周縁化されたコミュニティを対象とするプロジェクトにおいてどのように支援者の期待に配慮しながら、当事者の利益と安全を守るかを語った。
鈴木一絵は、国際交流基金(バンコクおよび東京)勤務で培った10年以上の経験を生かし、東南アジアと日本の文化交流を促進するSEASUNを運営し、インディペンデントなアートマネージャーとして活動している。SEASUNは2023年、アートインストール団体のミラクルファクトリーと共同で名古屋にQ SO-KOというスペースを立ち上げた。TRA-TRAVELはアーティストと会場パートナーの間で展開する移動型プロジェクトとして機能し、大阪の18カ所にわたる協働者とのネットワークを基盤としている。
これらの事例が示すスキルセットの幅広さは、担われている役割の複雑さを物語っている。こうした不可欠な労働の多くは、アーティストやキュレーターという肩書きももちながら活動する個人によって担われることも多い。AiRViNeとの会話のなかで、東南アジアのアート・インフラをどのようにつくり変えれば、プロの企画運営者という特定の仲介的役割を育て、支えることができるかについて議論を重ねた。もしアートを社会的な善として信じるのなら、私たちはどうすればそのより良い擁護者となり、その実現を後押しできるのだろうか?

スペースやコレクティブの寿命とは何か?
最後に、インディペンデントな活動を始める動機と、それがどのように終わりを迎えるのかについて、視野を広げて考察してみたい。創設メンバーやその文脈、ミッションがもはや存在しないとき、スペースやコレクティブの遺産はどのような意味をもつのか。組織の理念や体制を「引き継ぐ」人々にはどのような期待が課されるのか。
さまざまなプロジェクトの期間や規模を決定する判断基準を理解できたことは、興味深い気づきとなった。アリス・サルミエントはマニラでSpare Bedroomを1年間の期限付きではじめ、その活動を自己出版のZINE(ジン)に記録している。ソウルのYellow Pen Clubは、クォン・ジョンヒョン、イ・アルム、ユ・ジウォンの創設者3名の友情によって形成されている。KUNCI Study Forum & Collectiveのゆるやかなメンバーシップ構造は、世界各地に拠点をおくメンバーが各々の関心とネットワークをもち寄ることで、20年以上にわたってその存在意義を維持し続けている。
一方で、状況の変化を察知し、円滑な移行への道筋をつくることも重要だ。DRC No. 12は、名前の由来となった北京の元拠点を離れた後、ノマド型のプラットフォームとして再編された。Zit-Dim Art Spaceは最近、新たなビジョンをもつ共同ディレクターを迎え入れた。Pangrok Sulapの元メンバーたちは、コレクティブのDIY手法をそれぞれの出身地に応用しながらスピンオフグループを立ち上げている。私が得た教訓は、新しいコレクティブやスペースは、設立の時点からその「その後の人生(アフターライフ)」を考えておくことが賢明かもしれない、ということだ。

参加者として、この2日間にわたる率直な意見交換の場が設えられた寛大さに感謝している。私たちは、直面する課題の解決策を模索しあいながらも、この場では自身の動機や目的を見つめ直す機会も与えられていた。シェアミーティング3の価値は、育まれた連帯感あふれる雰囲気と、将来的な協働への種がまかれたことにある。このように多岐にわたる実践事例に触れることで、共通の課題がある一方で、各地の固有の事情や背景が存在することへの深い理解ももたらしてくれたのだ。
※本記事は、ART & MARKET “Reflections from Share-Meeting 3 in Penang”に掲載された内容を翻訳したものです
https://www.artandmarket.net/event/2026/04/03/reflections-from-share-meeting-3-in-penang
イアン・ティー / Ian Tee
シンガポール出身のアーティストであり、東南アジア美術とそのグローバルなつながりに焦点を当てたオンラインマガジン「Art & Market(A&M)」の編集者でもある。執筆活動を通して、作品制作のプロセスから、それがどのように体験され、ケアされていくのかに至るまで、アートのライフサイクルについてより深い対話を生み出すことを目指している。これまでにシンガポール、香港、チェンマイ、マニラ、ジャカルタにて作品を発表。2025年には、権威あるUOB Painting of the Year Award(シンガポール)を受賞し、シンガポール美術館のパブリックアート・プログラムのコミッションにも選出された。また、2026年の福岡アジア美術館レジデンス・プログラム参加アーティストにも選ばれている。
http://www.ian-tee.com/
IG: @ianteestudio
シェアミーティング3「地震、雷、火事、親父、病原菌から生まれ出る美術」
日程:2026年3月7日(土)、3月8日(日)
会場:U.A.B. ビルディング 1階(マレーシア・ペナン州ジョージタウン)
参加団体・組織・イニチアティブ:
KUNCI Study Forum & Collective(ジョグジャカルタ、インドネシア)
MAIX / Malaysia Artist Intention Experiment(ペラ、マレーシア)
ReformARTsi(クアラルンプール、マレーシア)
Kapallorek Art Space(ペラ、マレーシア)
Pangrok Sulap(サバ、マレーシア)
STORAGE(バンコク、タイ)
Spare Bedroom(マニラ、フィリピン)
Zit-Dim Art Space(台南、台湾)
Kala Kulo(カトマンズ、ネパール)
TRA-TRAVEL(大阪、日本)
SEASUN(愛知、日本)
6okken(山梨、日本)
Center / Alternative Space & Hostel(栃木、日本)
Yellow Pen Club(ソウル、韓国)
アメフラシ(山形、日本)
DRC No. 12(北京、中国)
Think School(札幌、日本)
オブザーバー:
AirVine / Artist-in-Residence Vietnam Network(ハノイ、ベトナム)
主催:山中suplex/Yamanaka Suplex、Blank Canvas(ジョージタウン、マレーシア)
助成:小笠原敏晶記念財団、国際交流基金クアラルンプール日本文化センター、アーツサポート関西、クラウドファンディング2024にご支援いただいた皆さま
会場協力:Think City
個人・法人協賛:名和晃平|Sandwich、株式会社Tocasi、ヤノベケンジ、Kenta Ogaya|HIRAGINO BOOKS、土井未穂
オフィシャル・ホテル:Aayu Homes
特別協力:金井美樹
当日プログラム:
2026年3月7日 [土]
9:30 – 12:30|Introduction and Open Exchange Session 1
Center / Kapallorek Art Space / STORAGE / 6okken / Think School / Yellow Pen Club / KUNCI / MAIX 13:30 – 16:00|Introduction and Open Exchange Session 2
Pangrok Sulap / SEASUN / Amefurashi / TRA-TRAVEL / Zit Dim Art Space / DRC. No 12 / Kala Kulo / Spare Bedroom
2026年3月8日[日]
10:00 – 12:00|Introduction & Keyword Mapping Session
参加者は4つのディスカッショングループに分かれ、それぞれ異なる創作実践の側面について議論します。経験の共有や意見交換を通じて、キーワードの抽出・マッピングを行います。
13:30 – 17:00|Presentation & Sharing Session
13:30 – 15:30 午前のKeyword Mapping Session の発表/15:30 – 16:00 ReformARTsi sharing/16:00 – 17:00 Closing
※本プログラムは全セッションを英語にて実施いたします。日本語通訳のご用意はございませんので、あらかじめご了承ください。
■ご支援(カンパ)のお願い:
「シェアミーティング3」は、参加費無料というかたちを維持しながら、国境を越えたインディペンデントな実践の共有と対話を実現することを目指しています。本ミーティングは、公的・私的な助成金や協賛に加え、これまで関係を築いてきた個人・団体のみなさまからの自発的なご支援によって支えられています。
東・東南・南アジアという多様な地域から参加者を迎える本企画では、渡航費、滞在費、プロダクション費、記録、会場運営など、目に見えにくい運営コストが数多く発生します。とりわけ、非公的・非制度的な実践を担う人々が無理なく参加できる環境を整えることは、本ミーティングの理念そのものでもあります。
昨年実施したクラウドファンディング「より豊かなアートシーンの構築を目指して:シェアミーティング2の実施」(その後、「シェアミーティング3の実施」を追加) では、総額¥2,562,500のご支援をいただきました。そこから、READYFORの手数料¥358,750および返礼品等の経費¥161,760を差し引いた¥2,041,990を受け取り、他にいただいた助成金も組み合わせ、シェアミーティング2を昨年3月に無事実施することができました。その残額¥340,676については、今回のシェアミーティング3の運営費として活用させていただく予定です。
一方で、物価高騰や円安の影響(予算編成時より、1マレーシアリンギットが34.5円から38.6円へ上昇)により、当初の想定以上に予算が圧迫されているのも事実です。総額に換算すると、約35万円程度の増加となります。もし本企画の趣旨に共感いただけましたら、無理のない範囲でのご支援(カンパ)というかたちで、この取り組みに加わっていただけましたら幸いです。いただいたご支援は、シェアミーティング3の開催や今後の継続的なネットワーク形成のために大切に活用させていただきます。
ご支援方法:
【カンパ金額】
金額は任意です (1,000円〜お気持ちで)
【お振込み先】
金融機関名:京都信用金庫
支店名:滋賀支店(032)
口座種別:普通
口座番号:3021606
口座名義:ヤマナカスープレツクス
※恐れ入りますが、振込手数料はご負担をお願いいたします。
※差し支えなければ、振込名義の後ろに「SM3」とご記入ください。
※ご支援いただいた方のお名前は、記録物・ウェブサイト等にクレジット掲載(匿名可)させていただく予定です。もし可能であれば、ご一報いただけると嬉しいです(お礼やクレジット掲載のため)。
※企業・団体によるご支援をご検討の方は、別途ご相談ください。
■プロジェクト体制:
ディレクション:堤拓也(山中suplex)、池田佳穂(山中suplex)
アドバイザー:Alfred Cheong(Blank Canvas)
プロジェクトマネージャー:Fish Lim Yun Xin
現地サポート:Koe Gaik Cheng(Blank Canvas)
インターン:Nicole Tan May Fen(Blank Canvas)
当日サポート:Leow Chen Xiong、Lim Yi Zhe
グラフィックデザイン:Jwohan Lim(Jwordinary Work)
記録撮影:Thum Chia Chieh、Sherwynd Kessler Studio
キッズケア:Sammi Chong
ケータリング:Angel Community
ウェルカムディナー:Gilda
プロジェクト・サポート:石黒健一(山中suplex)、小宮太郎(山中suplex)、本田大起(山中suplex)



