稲垣元則は90年代初頭より、つねに変わらぬ姿勢で自己と対峙し、写真や映像、ドローイング等のメディアを用いて作品を制作。他と比較し得ない独特な作風で高い評価を獲得しています。
主に木立や海の波間といった自然の風景や身体を主な題材とした写真や映像作品では、一見すると画中に写っていないものに焦点を当て、その揺らぎや間合いの狭間から、見る人の意識の中にゆっくりと浸透し、深く強い視覚体験を提示します。稲垣は昨年8月から約2ヶ月間、多様なプロフェッショナルを集め、高齢化社会での個人と社会・文化に焦点をあて未来について探求するプログラム「PLUS-A Project for an Ageing World」に参加するため、デュッセルドルフ(ドイツ)で滞在しました。限られた時間の中で参加メンバーとのディスカッションや現地取材を行い、当地でのプログラムの最終日にはその時点での成果発表展も行われました。
今回の展覧会「100 Jahre / 100年」では、その経験を元にさらに考察を深め、新たなかたちにして写真と映像作品を制作。また、ノマルでは初となるウォール・ドローイングにも挑戦します。–
100 Jahre(100年)
昨年の夏、私はドイツのデュッセルドルフで、PLUS-A Project for an Ageing World(高齢化社会のためのプロジェクト)に参加しました。
「高齢化」「老いること」のテーマの中で、私は社会的・科学的な一方向の時間とは異なる個人の時間について考えました。過去や現在や未来の中で、実在しているのは現在だけであるかもしれませんが、一方で過去や未来は捉えやすく認識もしやすい場合があります。
瞬間ごとに移動していく「現在」は、実は一番認識しづらく、それが一体何なのかを確かめることがとても難しいのかもしれません。 多くの場合、現在という瞬間を過ごしながらも、意思や確認、気持ちや感覚は過去や未来にあることも多いのではないかと考えることがあります。
思い出に浸り、後悔したり、または予定に支配され、そして将来を期待したり憂いたりすること。現在をどう捉えるかに戸惑いながら、私たちは「長い一日」や「あっという間の人生」というような、歪な時間を過ごします。私のドローイングや写真・映像はそんな歪な時間、揺らぐ時間に深く関わっています。
100年は、引っ張られ、縮められ、飛び越える。時にはひっくり返り、捏造される。多くは忘れられる。
稲垣元則 Motonori Inagaki
(Webサイトより)
会期:2022年4月9日(土)〜5月14日(土)
会場:ギャラリーノマル
時間:13:00~19:00
休廊:日曜、祝日
クロージングイベント
Music Live “100 years”
日時:5月14日(土)19:30〜
出演:内田静男 (bass) from Tokyo、sara (.es / piano)
料金:前売2,500円、当日3,000円 *予約制問合・申込:06-6964-2323
大阪市城東区永田3-5-22