「肌理のかたち」
素材には役割がある。鉄は硬度、靱性、延性を活かし、主に強度のある構造物として加工、変形され、それらは塗装、鍍金され鉄の肌は隠されている。鉄という素材は役割の為に、錆びることを抑えつけられているといえないだろうか。
錆は、どこか優しく儚げな雰囲気を漂わせながら、役割から逃れるように鉄の肌理を露出させる。まとわりつく役割の中で錆びてしまうことは役割としての居場所を失う。こうした意味で肌理とは、役割を覆い隠すようなリミナルな輪郭をまとわせている。素材の硬さが(作れない)部分と、作れた(作れる)部分をはっきりさせるように、フィジカルな表現は素材と自身を折衷し、留めておけない環境に適応して前に進んでいく。
鉄が掘り起こされ、製錬、加工され、使われて、地にもどり、またいつか掘り起こされるように循環を持つ流れ続ける素材であるとすれば、リミナル(境界的)な肌理は、流れ続けるその、一時的な役割、用途、アフォーダンスを発話している。それはいつも人の価値観に寄り添ったかたちで。2022/11/28
高松威
1997年大阪府出身。大阪芸術大学大学院 芸術研究科芸術制作専攻 博士課程前期(工芸)修了。
鉄の有機的な現象を手かがりに表現を行っている。
髙松威個展「肌理のかたち」
会期:2022年11月28日(月)〜12月10日(土)
会場:gekilin.
時間:11:00〜19:00(土・日〜17:00)
休廊:水曜
大阪市北区西天満4-3-3
星光ビル4F
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