相川勝(あいかわ まさる b.1978)はペルー共和国出身、2004年に多摩美術大学メディア芸術学科を卒業。在学中に観たアンディ・ウォーホルの映像作品『Empire』(1964年)に衝撃を受け、そこから複製芸術に興味を持ちます。2007年より制作を続ける、本来大量生産された商品であるCDを自己の身体を用いて細部まで複製し、世界で唯一無二の存在にする「CDs」シリーズはその発端といえるでしょう。
その後、2011年頃からはインターネットやSNSの発展と共に写真メディアが内包する社会性を一貫したテーマとし、今日まで発表を続けています。
複製芸術の視点から写真技法を制作に取り入れてはいますが、作家自身がカメラを用いて撮影をすることはせず、インターネットでのフリー画像や3DCG、AI、衛星写真など誰もが利用可能な素材を用いて作品を制作しています。相川は写真技術や映像の進歩はそれを利用する者の行動に多大な影響を与えていると考えており、新旧の様々な写真技法を用いた作品を通して、それを検証し続けているともいえます。
2021-22年に制作された映像作品『マッターホルンを登る』は、全世界を覆ったコロナ禍で物理的な移動が極端に制限された期間に、地図上に存在する場所を3次元CGによって構築し、仮想空間で自身の分身がマッターホルン登頂を行うという体験を収めた記録映像および写真として発表されました。鑑賞者は仮想空間での作家の体験をなぞると同時に、実際の衛星写真と標高データによってつくられたCGという現実と虚構の狭間に並行する多層化された世界へと意識を向けることになります。
本展では、ビデオゲームや衛星写真によってつくられた仮想空間や、AIによって生成された写真など、現実と仮想という異なる領域を行き来するこれまでの相川の作品を振り返りながら、写真技法の原点ともいうべき、限りなく影のみによって成立する、紫外線硬化樹脂を用いた新作『specimen』を発表します。
インターネットおよびSNSの誕生や個人が所有できるスマートフォンという装置の存在によって、誰もが容易に複製加工が可能となり、複製行為そのものの特異性がほぼ失われた現代において写真芸術がもつ可能性を探ります。
(プレスリリースより)
会期:2024年1月13日(土) ~2月2日(金)※初日は終日作家在廊
会場:N project
時間:月~金曜 10:00~17:00、土曜 11:00~18:00
休廊:日曜
問合:06-6362-1038
大阪市北区西天満5-8-8 2F